俺は何度この頬に、唇を寄せただろうか。



好きで、好きで。



どうしようもなく、好きで。


なのに、だからこそ。

俺からはどうしてもその想いを伝えることができないでいる。



このひとはよく俺に言う。



「しょーちゃん、好きだよ」



それは、熱を孕んで聞こえてくるが、俺はそれを真っ向から信じられる度量を持ち合わせていない。



性別を超えて愛されるこの男が、なぜ俺を。


『俺なんか』と卑下する気持ちはない。


俺自身もそれなりに愛される存在であることは自覚している。
そうであろうと努力もしている。

だけど、それイコール、

彼が俺を愛するという理由にはなりえない。



だからこうして。

混ざりあった事後で。

同じベッドで・・・なのに。

散々揺さぶられて、あられもない姿で、はしたなく声を上げて、お互いにドロドロに溶け合った後。


なのに。


寝顔の彼に、まともにキスをすることもできないでいる。





こうして無防備に眠る彼の横で、目が覚めるたびに、そっと頬へ。
いままで一度も気づかれたことがないのが、幸か不幸か。


今日もこうして、眠る彼の頬へ。

そっと、キスをしている。



こうしていても、発散した欲とは別のところで、渇きを感じ続けている。


彼は俺の身体中に唇を這わせ、あらぬ場所へ舌を差し入れ、そして喘ぐ俺を『かわいい』と言っては嬉しそうに笑みを浮かべ、『すきだよ』とささやく。



その度に俺は快感に耐えることを言い訳に唇を噛んでやり過ごす。




思わず


『俺も』と、


返してしまわないように。