2人で暮らすことは思った以上に穏やかだった。
それとはまた別の、予想外。
大野さん・・・智は、日常の優しさとは裏腹に、ベッドの上ではかなり強気。どこからその体力が湧いてくるのか不思議なくらい、ほとんど毎日求められていた。
ベッドに入れば、当たり前のように後ろから抱きすくめられ、手は胸元を撫ぜ、ささやかな粒を摘み、首筋に舌を這わせられる。
彼の育ち始めた中心がスウェットのズボン越しに俺の尻の間にねじ込まれて、揺すられたら勝手に期待して反応を始めるのは、俺の真ん中も同じで。
「んっ・・・あ・・・ん、ちょ、智!」
思わず甘い声が漏れそうになるが、理性を総動員して押しとどめる。
が、咎めるよう名を呼んだところで智は手を止めることはなく、無遠慮に下着に手を入れてくる。毎晩これで、俺も快楽に飲まれちゃうけど、今日はこれ以上反応する前に。
「ねぇ、んっ、ホント、まって・・・ね、智ってばぁ!」
「なんだ?今日は違う体位試す?」
「ちがう!もぉ!!俺いくら若いって言ったって、そう何日もまともに寝ないで仕事するのキツイんだから」
「だってよぉ」
智の手をよけて、もぞもぞと身体の向きを返して寝たまま向き合う。頬を両手で挟んで、言い聞かせるように。
「だってじゃないです。疲れた顔でお客様に会うの失礼でしょ、ね?」
「・・・うん、そうだな、ダメだ。・・・つかれさす」
「はぁ!?なんでそうなるんですか!」
「おれ以外に可愛い顔みせる必要ない。疲れた顔でいい」
「アナタ無茶苦茶言うじゃん!・・・あのね、会社の先輩には『なかよしでいいねぇ』って、ニヤニヤされてるんだからね」
「・・・なんかヤダぞ、それ」
「でしょ?俺だってやだよ」
口をとがらせて『ヤダ』という智が可愛い。
「・・・はぁ。離したくねぇ。ウチから出したくねぇなぁ」
「何言ってんですか、ちゃんと働かせてください。ここにいる以上は生活費だってそれなりに入れます」
そういってぎゅっと抱き着いて、智の胸元に潜り込めば、当たり前のように引き寄せて背中を撫ぜてくれる。
しばらくそうして抱き合って、ぬくもりを分けあう。
智の匂いに包まれる心地よさに浸る。
そのまま睡魔の誘いに乗って意識を落としていった。
「なぁ、和也。・・・ここで一緒に、仕事しねぇか?」
遠くで智が何か言ってる。
聞こえているけれど、もう返事もできない。
仕事、できたらいいな。
またたくさん一緒にいる時間が増えるな。
もう俺だって、離れたくない。
いつか・・・離れる日が来るとしても。