泣いても泣いても、どこまでも涙は枯れなくて。




そうして、俺は恨むことを選んだ。

俺を置き去りにしたアイツを。



恨むことで精神のバランスを保っていた。



そして、なにより・・・後悔。



後悔から、俺は、俺自身をも恨んだ。



なぜなら、気づいていたんだから。




アイツの憂いを。

なにか隠し事があると。





それを知っているのは、気づいていたのは


俺だけだったのだから。





もっと冷静に情報を集めれば、もう少し何かわかったのかも知れないけれど。でもその時は事情がわかったところで、何も言わずに姿を消したアイツにとって、俺はその程度だったのだと。




・・・そう理解して、俺はあの頃、必死で気持ちを殺した。




そして、来る日も来る日も、ひたすら感情を動かさないように、ただルーティンをこなして、親と学校にせめて心配をかけないだけの日々を繰り返した。



相葉雅紀が消えたことについて、バスケ部の友達から聞いたところによると、親同士の噂で知ったとかで「海外のスポーツアカデミーから急に誘いを受けて、即決を求められたからそれに応えたらしい」というものだった。

転校手続きは全て飛ばして、ただ退学扱いになっているから、学校もそれ以上、アイツの事は知らない・・・と。





なんだよ。


なんだよ、それ。



・・・それならよほど喜ばしいことじゃないか。




なぜ、俺に一言もなかった?





恐らくそれは、もしかしたら。



同性の恋人がいる



その事が将来の活躍を妨げる要因になりかねないから。




そう解釈するのに時間はかからなかった。




事実は知らない。



ただ、アイツを恨みつづけるには十分。

相応な裏切りの理由だと思った。





でも、尚更それならそうだと、言って欲しかった。





結局、どれほど強く結びついていると感じても、そんなものだ。






あの時感じた、溢れる想い。


あれは、あんなものは。







愛だの恋だのは幻想だ、脳のバグだと結論付けて


以来、誰のことも信じなくなった。




よく言うじゃないか。






信じてないから、裏切られることはない・・・って。





もうあんな思いをするのはたくさんだ。

若気の至りだと言われようと、ままごとだと言われようと、俺にはすべてを賭けたと思えるほどの恋だった。






二度と、誰も好きにならない。






好きになれない・・・そう思った。