まさに、消えた・・・としか言えない。
最後に会った日の別れ際に
『明日から田舎に行くから電波なくなって連絡つかなくなる』
と聞かされていた。
だから、翌日の『まーくん、おはよー』のメッセージに既読がつかなくても、さして気にしてはいなかった。
結局、彼と連絡はつかないまま年が明けて。
正月早々、押しかけるのもはばかられたし、さすがに正月なだけあって、ウチにも親戚が来たり騒がしくするもんだから、なんだかんだとそれに助けられて、寂しさを誤魔化しながら毎日を過ごした。
まーくんがくれた薬指の傷は、思ったよりちゃんと傷になってついていて、傷口が塞がってもうっすらと皮膚に残る痕が俺を喜ばせた。寂しさを紛らわせようとその痕にキスをしたくて、左手の甲を口元に寄せることが癖になった。
そうして迎えた新学期。
彼は学校に来なかった。
誰も彼の居場所を、知らなかった。
そして、彼の居場所を俺に知らせてくれる人も、いなかった。
担任に聞いてみたが、俺が彼の行方を知らないことにたいそう驚いて『二宮が知らないなら、先生からは言えないよ』と。食い下がったけど、個人情報だからと教えてはもらえなかった。
それならばと、ついに彼の家に行ってみたが、驚くことに既に引っ越したあと。いつ間に?あれから、あのクリスマスから、今日までの間に?この年末に?
俺はもうその時点で完全にへたりこんでしまって。
冷たいアスファルトが身体を冷やすが、それでも立ち上がる事が出来なかった。そして、道端で座り込んで泣く制服姿の俺を見て、近所の人が何やら言いながら出てきてくれた。
まーくんがいつもちゃんと挨拶をするから、一緒にいる俺も挨拶をするようになった顔見知りの人達。そんな近所の誰もが、俺を見て気の毒そうに「わからない、ごめんね」と、口を揃えて言うばかりだった。中には一緒に涙ぐんでくれる人までいて、嗚咽しながら泣く高校生男子を囲んで、これまたさめざめと泣くご近所さん達の姿は、傍から見たら何事かと思っただろう。
まだ高校生だった俺は、無知で、無力で。
まーくんが怪我をした去年の夏も、同じ想いをした。
でもあの時は、まーくんが連絡をくれていた。
繋がってた。
会えない時間を過ごしても、心は寄り添っていた。
でもいまは・・・。音信不通。行方不明。
彼を探すことも、家族の行方を調べることもできず。
ただ、泣いて泣いて・・・泣いて、泣いた。