高2の冬休みにはいってすぐ。
彼の誕生日を2人きりで祝った。


まーくんが親から誕生日プレゼントとクリスマスと、ついでにお年玉も合わせて現金をもらったから、と、高校生にしては分不相応とも思えるホテルをまーくんが予約してくれて、それは俺へのクリスマスプレゼントだって言ってくれた。


年越しは一緒に過ごせないからと、23日から25日まで連泊して、飽きずにひたすら抱き合っていた。

今までどちらかの家か学校、物陰とか、ところ構わずだった俺たちは、初めての大きなベッドに大ハシャギだった。お風呂に2人きりで入るのも嬉しすぎた。湯船でシたらのぼせそうになって、まーくんがお姫様抱っこでベッドまで連れていってくれた。

大切にしてくれていると感じられて、こうして過ごせることが当たり前の日常になればいいのにと思った。
俺もまーくんをたくさん気持ちよくしてあげたくてがんばった。



まーくんの17歳の誕生日を一緒に過ごせて、俺は幸せで。



広く柔らかなベッドでまどろみながら甘い空気と熱に浮かされ『来年は18歳だから結婚できるね』なんて、夢みたいなことを口にしてみたら、まーくんは思いのほか真剣に向き合ってくれた。

「結婚したい。それがずっと、一生、死ぬまで、にのちゃんと一緒にいられる方法なら」


いつもみたいに泣きながら喜んでくれることを予想していたから、思わぬ誠実さでくれたこの返事にはとても驚いた。

その気持ちは雰囲気に飲まれただけの返事ではなく、心からそう思ってくれていることが伝わった。いつもの俺の大好きな笑顔ではなくて、どちらかと言えばたまに見せる、痛みをこらえるような、そんな冷たく憂いを湛えた表情の彼だった。だからこそ、真実味があって俺は、きっと本当に来年は一生の約束ができるのだと期待に焦がれた。



「にのちゃんに指輪あげたかった・・・」

「ふふ、こんな素敵なクリスマスを過ごせて、これ以上してもらったら、俺どんどん欲ばりになっちゃうよ」

「・・・にのちゃんにはオレの全部あげたい・・・なにもかも」

「なにもかも?」

「うん、」

「じゃあ・・・来年、まーくんの一生を、俺にちょうだい?」



そう俺が言えば、やっぱり我慢できなかったね。

ぼろぼろと泣き出したまーくん。



「うん、来年・・・来年だね・・・」

「俺は、まーくんより半年はやく18になるから、追いつくの待ってるね!」

「・・・うん、絶対追いつくから、だから・・・」



そのあとをまーくんは言葉にできなかった。
まさに号泣。
そんな彼をみて、想いが溢れる。
こんな気持ち知らなかった。


でも、不思議と自然に、これが”そう”なのだとわかった。


抱き締めれば泣いているからか、いつもより素肌の熱さを感じる。



「まーくんのカラダ、熱くて気持ちいい」



そう言った俺に答えようにも息が整わない。
少し落ち着いて俺の目を見れば、また涙を溢れさせている。



「にのちゃ・・・も、カラダ・・・あつい、ね」

「ん。生きてるって感じ、だね」

「にのちゃん・・・すき」

「まーくん、あいしてる」

「・・・オレも、あいしてる・・・っく・・・にのちゃぁん」



まーくんはもう堪えることもせず、わんわんと泣きじゃくって。
『あいしてる』と『生きてるって感じだね』と。
そればかり繰り返した。
俺もつられて一緒に泣きながら、朝まで思うままに抱き合った。



翌朝、チェックアウトの前にお互いの顔をみて、ひどいねぇと、涙が出るほど笑った。


そして来年までの指輪の代わりに、と、お互いの左手の薬指に噛み傷をつけて血が滲む薬指を見ながら『なんだかおとぎ話みたい』と笑いあって誓いにした。



消えたら何度でもつけようね、と約束をして。


そして。


彼は、俺の前から・・・消えた。



「にのちゃん、本当に本当に、すき。・・・だいすき。」


別れのギリギリの、最後の最後まで、俺に言い続けて。