「オレ・・・こんな風に、好きな人と・・・にのちゃんと、抱き合えるなんて思ってなかった」

「俺はずっとこうしたいって思ってた。どうしたらまーくんに触れるか、触ってもらえるか、考えちゃってた・・・」

「にのちゃん・・・」

「でも、まーくんは全然そんな素振りなかったから、気持ちはあってもカラダは別かなって思ってたんだ」

「・・・オレ、にのちゃんが好きだよ・・・すき」

「うん。」



寸分の隙間もなく抱き合う。
抱き締め合う。


「あったかいね、まーくんのカラダ」


「にのちゃんも、あったかい・・・こうして抱き合ってると、どきどきが聞こえる。・・・生きてるって感じ」


「・・・大げさだなぁ」


「そう?」


「ふふ、まーくんとくっついてるの・・・うれしい」


「うん、嬉しいね。あったかくて幸せで、生きてるって感じで・・・うれしいね」


嬉しい、と言ったまーくんの呼吸の荒さを感じた。

顔を見れば、感極まったのか、ぼろぼろと涙を流して泣いていた。



「・・・嬉し泣き?」

「ぅぅう゛・・・にのちゃぁん・・・」

「あっははは!なにもー!まーくん、そんな?」

「だってぇええええぇぇぇ」

「なによ、どーしたの?ほら、かおひどいよ?」

「にのぢゃの、ガラダがッ、あっだがぐでぇッ・・・」

「うんうん、あったかかったね」

「ん、んでぇ、いぎでるぅっで、エッ、お、おぼえでぇ」

「生きてるって思えて?」

「うれじがっだぁああ!・・・にのぢゃ~んっ!」

「嬉しかったねぇ、まーくん」

「ぎょぅのごどぉ、わずれなぃ~よぉ」


「ふふ、そーだね、俺も忘れない!」


さっきまであんなにオスの匂いをさせていた彼が、堰を切ったように泣き出して、俺は俺でそんな彼が、とてもとても、本当に愛おしかった。

俺ももらい泣きして、ふたりでぐずぐずと過ごしていたら、見回りの先生が『まだ練習してんのかー』って体育館に入ってきたから、まーくんはバスパンをノーパンで履いて用具倉庫から大慌てで出ていって、俺は下半身丸出しで跳び箱の中に隠れたりして。

先生をやり過ごしてから、そろそろと跳び箱から出る俺を見てまーくんは大笑い。またふたりで抱き合ってじゃれあって、からだベトベトだねーって笑いながらキスをした。



うん。

俺も今日のこと、ずっとずっと、忘れないよ。