「にのちゃん」


「・・・まー、くん」



低くかすれる声でお互いを呼びあった。

それは、ある意味、確認。



そこからはもう、止まらなかった。


彼は俺を抱えあげながら場所を移動する。

その間も唇を離すことは無い。

俺も応えて首に腕を回し彼の腰に足を絡める。


誰もいない体育館の、誰も来ない用具室。

埃っぽくて、ひんやりとしてて、電気を付けていないから暗い。


ボールカゴ、得点板、跳び箱、マット、ロイター板。


これからの学校生活、これらの用具を見る度に、この場所の今日のことを思い出すんだろう。



ガシャガシャと派手な音を立てながら用具室のものをどかして奥へと入り、マットへなだれ込む。その間もお互いにどちらが主導権を握るか、攻めてる自分の方がより大きな好意を伝えられるとでも言わんばかりに、競い合って舌を絡める。


唇を吸って、零れたお互いの唾液を舐めあって。




その先を初めに欲しがったのは俺。


彼のハーフパンツ越しに感じる熱い反応が嬉しくて、おもわず手を伸ばした。



「っん、にのちゃ・・・そんな、ダメ、だっ・・・て」


「だっ・・・て、ま、くん、おっきく、なってる・・・からぁ」



キスに夢中になり、熱に浮かされて恥ずかしげもなく口にする。


彼のバスパンのウエストから下着の中へグッと手を入れて、隔たり無く彼の固いそれに触れると、ビクッと身体を跳ねさせて、彼はガバッと身体を離した。



「ちょっ!ちょっとちょっと!にのちゃ、まって!!!」



肩で息をしながらも、サッと血の気が引いた。自分の行動に後悔をした。



「・・・っ、ご、ごめん・・・きもちわるかった・・・?」




嫌われたらヤダ・・・。



彼の視線が俺を素通りして、俺を見るまいと、何かをジッと見つめていた。どうしよう、ここでこんな風に終わりたくない。焦った俺はまたなにか言葉を重ねようと必死になった。



「あの、まーくん、ごめん、俺・・・あの、えっと、だから」



なんの意味もない言葉だけど、それでも彼が俺の言葉を全く聞いていないような、そんな様子がどうしても悲しくて、涙声になってきた。高校生男子として酷く情けないが、もう、この空気が耐えられなかった。


これ以上の醜態を晒したくないと、立ち上がろうとしたその時




「にのちゃんッ!まって!行かないで!!」




彼は焦ったように俺の手を引いて引き止めた。

そればかりか、馬鹿力を発揮してグンッと俺の身体ごと彼の懐に抱え込むように引き寄せ、ギュッと抱きしめてくれた。



「ま・・・まーくん?」


「ごめん、勘違いしないで?気持ち悪くなんかない。むしろ、ヤバい・・・」


「・・・え?えっと、ヤバいって・・・?」



「だからぁっ!すぐイッちゃいそうで!ヤバい、ってコト!!」



と、片手で俺を抱えながら、反対の手で彼自身の顔を隠して、さも『恥ずかしい』という仕草をするから、もう、可愛いのと安心したのと愛おしいのとで、感情はぐっちゃぐちゃ。