ある日、智へ作品の依頼とは別に、俺宛にメールが届いた。
◇◇◇◇◇
アトリエ FREESTYLE 管理人様
突然のご連絡で失礼します。
私立山風高校卒業生の相葉雅紀と申します。
先日の雑誌『main storm』に掲載された
大野智先生の作品がご紹介されているページで
販売アシスタントとして二宮様の
お名前とお写真を拝見いたしました。
もし、二宮様が山風高校ご卒業の
二宮和也さんでいらっしゃれば
どうか一度お会いしたく
ご連絡差し上げた所存でございます。
大変不躾で恐縮でございますが
なにとぞ、色良いお返事を頂けますこと
お願い申し上げます。
相葉雅紀
◇◇◇◇◇◇
「・・・あい、ば・・・さん、まー・・・くん・・・?」
まさか。
心臓が止まるかと思った。
なぜ・・・なぜ、いまさら。
俺は捨てられた。
相葉雅紀に。
いまさらだ。
いまさら会いたいなんて、一体なんなんだ。
あの時。
彼の不在を知った時。
あの時の絶望は忘れない。
忘れられやしない。
どれだけ泣いたか。
どれほど辛かったか。
この世の終わりだと・・・
本当に命がけの、何もかもを賭けて。
そして、最後には希望を失った恋だった。
忘れることなんかできない。
ただ、心の奥底の底の見えない場所に、沈めて、押し込めて。
やっと、やっと、智と穏やかに過ごせるようになったのに。
「和也ー?飯できたぞー」
智が呼んでる。
でも、返事なんかできない。
「・・・和也?・・・カズ!?・・・っおい、どうした!?なんかあったか?カズ!カズ!!」
喘ぐように、溺れるように息継ぎをするけど、全然酸素が入ってこなくて余計に焦る。焦るからまた息を吸う、吐く息を意識しようとしても身体がいうことを聞かない。
「・・・っハァッ、ハッ・・・アッ・・・さ、と・・・」
「いい、喋んな!落ち着け、な?ゆっくり呼吸しろ」
優しく背中を擦りながら俺を抱き寄せる智に抗って、イヤイヤをするように頭を振って自身の不自由に苛立ちを表せば、それは直ぐに涙に変わる。
「和也、おれを見ろ、目ぇ逸らすな」
「・・・ぁッ、ハァ・・・ッ・・・」
智を見る。
見てる、けど、もう・・・
ヒュッヒュッと喉が鳴るだけで酸素がはいらない。
呼吸が落ち着かない。
涙が溢れて智がぼやける。
泣きながら目の前が真っ白になって。
そして。
・・・俺は耐えきれず意識を手放した。