コトの始まり。


それは、智くんのところへ、雅紀と休暇を合わせて遊びに来ていて。海に近いだけあってめずらしい魚貝類がたくさんある。一般には流通しない、とにかく新鮮さが命の海産物。

そんな中に、食べ過ぎたらダメだって注意されていた貝があった。



それは、べらぼうに美味いが、

ときに、『神経を冒す毒』を備えているって。




「貝って体調によっては、平気だったり中ったり、怖いよね」


雅紀と智くんと食事しながらそんな話をして。


ビビりの俺であり、体調には一層気を付けていたが、こういう時。

まぁ、何故か・・・そういうものなのだろう。

見事に貝に中ってしまった。




腹痛を覚悟していたが、それよりもこれは「神経を冒す」って。


怖ぇ・・・。


どうなるんだ、俺。




俺の意識がぼんやりとしているところへ、智くんは心配そうにしながらもどこか余裕そうに言う。



「翔くん、食いしん坊だからなぁ。まぁ、死にゃしないから大丈夫。ただ・・・」

「ただ!?ただ何!リーダー!しょーちゃんどうなっちゃうの!」

「相葉ちゃん、落ち着いて。大丈夫。これさ、現地の人が占いに使ったりする貝なんだよ」

「え、占い?」

「そう。『自分が一番恐ろしいと思っている事を夢に見る』って」

「一番、恐ろしいと思ってる、コト・・・?しょーちゃん、なんだと思う?」





そんなのは高いところか心霊スポットに決まってる。





「やだなぁ、スカイダイビングとかバンジージャンプだったらマジで漏らす自信あるわ・・・」

「翔くんはまぁ、高所か、オバケとか、そんなとこかもね」

「しょーちゃん!頑張って!!!オレ、応援してるから!!!!」

「・・・応援って、夢だからさぁ・・・ってか、占いってのも怪しいよなぁ」



そんな説明をされながらもいよいよ意識が保てなくなってきた。


後頭部の内側にブラックホールがあるかのように、どんどん意識が吸い込まれていく感覚。




そして俺を不安にさせまいと、智くんは明るく言ってくれた。



「オイラも実際に食って、何度か夢見てるから何てことねーぞ!釣った魚が大暴れして船が壊れたり、船の操舵輪が外れたり、こえぇけど気をつけようって思うようなことだ。悪さした子供に食わして懲らしめるって昔からの風習もあるくらいだし、楽しむくらいで大丈夫だから」




まぁ、それなら大丈夫なのかもな・・・って。

智くんが言うなら。



よし、夢なら楽しもう!


そう覚悟を決めて意識を手放した。










そうして、今に至る。