「どうしたの?翔やん、急におっきい声出して」
「どうしたのじゃねーって!コレ!この曲!この声!」
「なぁに、これがどうしたの。しょおくん、この曲好きでしょ?」
「ああ!好きだよ、だってこれ・・・」
「これ?」
ふたりが不思議そうに俺を見る。
・・・なんで気づかないんだ。
この歌声、俺ら3人の誰でもないだろ?
「これ!智くんと雅紀だろ!?」
「え?しょおくん、なに言ってるの?こわいけど」
「翔やーん、やっぱり変なもの食ったぁ?」
なんで、なんでわかんないんだ!
これは
この歌声は
智くんと雅紀で
俺たちは
俺たちは
「俺たちは『5人で嵐』だろ!?」
言った、叫んだ、瞬間。
目の前の景色が、スクリーンに映されているかのようで
それが停止したみたいに、時間が・・・止まった。
じわじわと・・・風景がスクリーンの真ん中に吸い込まれるかのようにだんだん世界が小さくなっていく。
気づけばあたりは真っ暗で・・・
俺は、自分の姿も見えない暗闇にたたずんでいた。
でも不思議と恐怖感はなかった。
俺はひとりじゃない。
5人でいる。
みんなが、いる。
それは
信頼で
それは
ともに過ごした時間の確かさ。
暗闇の中で手を彷徨わせればすぐに。
熱くて、大きな手。
あの手だ。
夢で俺を安心させてくれた、あの。
力強く握られれば、ひどく安心した。
そして柔らかく俺を呼ぶ、愛おしい声。
「・・・しょーちゃん、起きた?」
うっすらを目を開ければさほど眩しくはなく、あたりは薄暗い。
人影に覗き込まれていることはわかるが、相変わらず逆光で顔までは見えない。
うん。
でも、わかる。感じる。
「雅紀・・・」
「しょーちゃん、おかえり」
「雅紀・・・、智くんも、いる?」
「ふふ、いるよ。リーダー、しょーちゃん、起きたよー!」
「おー、ちょっとまってろ、いま、飲むもん持ってく」
「・・・だって。もう少し、横になってて?」
そのあと、何かの植物から抽出したとかいう恐ろしく酸っぱい奇妙な液体を飲まされて、俺はやっとのことで完全に覚醒した。