夢を見た。
「翔くーん、大丈夫?」
「・・・え、あ、にーさん・・・」
「大丈夫?気分悪くない?」
「だいじょうぶ、なんか、気分ってか、精神的にヤバい」
夢の中でベッドに寝かされている。
寝ながらの会話。
足元の方から声をかけられて、顔は見えないが、声の主を「にーさん」と自然に呼びかける俺自身に驚く。
・・・にーさん?
って、誰だ。
そして、もうひとり。
逆光でやはり表情の見えない人に見下ろされている。
「しょーちゃん・・・まだ、つらい?」
「ん・・・ちょっとはマシになったかも」
「無理しないで、ね・・・」
柔らかな声にひどく安心する。
でも、声の主がわからない。
額にかかった髪を梳かれながら深呼吸をすれば気持ちが落ち着く。
甘く優しい香りに満たされて不安が消えていく。
とはいえ・・・誰だ。
ものすごくナチュラルに会話してるけど・・・。
一体誰なんだろう。
意識は別のところにあるが、目の前で親しげに話しかけてくれている彼との関係性は決して悪いものではないことがわかる。どうやら寝ている俺のそばにずっといてくれていた、ということらしい。
目の前の彼の肩越しに覗く、もうひとり。
「お香も炊いてるし、もうちょっとだと思うけど、無理せずゆっくりしててな。」
「うん、ありがとね。思ったより、俺、こういうのダメなのかも(笑)」
「あはは、翔くんの中で相葉ちゃんがどれだけ大事かってことだよ」
「・・・もちろんにーさんも、だよ。・・・マジで・・・キツい、かも」
一体、誰と、何の話をしてるんだ。
俺、この人達にかなり気を許しているんだな。
こんな風に弱音がはける相手なんて、俺には。
・・・?
俺には・・・?
そうだ。
俺には・・・いたはずだ。
どんなときも寄り添ってくれる、優しく頼もしいヒト。
お互いに大切で、守りたい存在が・・・。
俺がこんなにも誰かの存在に、そして不在に、不在の不安に、コンディションが左右されるタイプだとは思っていなかった。
当たり前にそばにいた、だれか。
にーさん、あいばちゃん
目の前の熱い手で安心させてくれた人。
ダメだ。
思考がまとまらない。
そう、これは夢。
夢だとわかっているのだから、起きればいい。
アタマの後ろがざわざわする。