「しょーちゃんの『始まり』は1995年10月22日…でしょ?その日にしょーちゃんが『オレと出逢うしょーちゃん』を始めてくれて」
「相葉くんと出逢う、俺…?」
「うん。だから出逢えてこうして触れ合うことができるようになったんだなって思うとさ、この状況がわからなくても、それこそ、はじめから、のずーっとが、全部ココに繋がってるって思えば、全部わかるような気がしない?」
わかるようなわからないような。
俺の『はじめから』をそんなふうに捉える彼。
でも、これが相葉くん。
相葉くんのアタマん中と気持ちは、そうなんだね。
いつのまにか握られていた手の甲にキス。
雰囲気に流されて受け入れちゃってるけど
そりゃ、俺も相葉くんが…だけど。
だけども。
「今日は、俺に『ありがとう』を言いに来たの?伝えたいことってそれ?」
こっちだって言われっぱなしじゃない。
つまり用事はなんなのかと、問うてみる。
「さっきだってスマホ見て『お許しが出た』とかも。意味わかんないんだけど、説明して?」
そう求めればニコニコと機嫌よく
「ん?お許しはね、メンバーに、ちょっとね。しょーちゃんを独り占めしてもいい?って聞いてた。」
「独り占め…とは」
「あのさー、しょーちゃんさー、やっぱりわかってて、結論見てないフリしてるよねぇ?」
「いや、だって、そんな、そんなド直球なの、いま急に、ハイソウデスカって、受け入れられるワケなくね?」
「それって、オレからしょーちゃんに向かってド直球を放ってるってことはわかってくれてんだ」
…墓穴った。
そんなの受け止めるって、受け止めてるって
白状したようなもんじゃねーか。
「通じてるならいいや。もうまんま言うね。しょーちゃん、好き。だから、オレのもんになって。今日から、オレとの一生、始めてくださいませんか?」
「は?いっしょ…え、はぁ?一生!?いや、だってそんなの…」
「そんなの?そんなの…なに?」
だめだ。
混乱、そして、現実ならどれほど嬉しいことか。
急に差し出された突然の幸福に動悸がヤバい。
しかし出てくる言葉はとまどい。
なにか言おうと思ったところで
何を言っても逃げ腰のいい訳になってしまう。
それよりなにより
言い訳をしたいわけじゃない。
相葉くんに応えたい。
だって、気持ちは、俺も。
だから。
でも。
だけど。
…どうしたって未知。
「なんつーか、…想像もしてないっていうか、ありえないって言うか」
「じゃ、想像してみて?もう、『ここ』に、気持ちは『ある』。有り得るんだから」
『ある』と、相葉くんは手を握り直して、俺を胸元に引き寄せた。
必然、顔が近い。
相葉くんの体温を感じる。
『しょーちゃん』
と呟くように言われて息がかかる。
…キス、するのかな。
「ほら、もう、想像できてる、でしょ?」
掠れるくらい小さい声で相葉くんは言う。
…そうだ。
たしかに。
想像がはじまってる。
どうなるかなんて、わからないけど。
でもきっと
この先には、俺たちふたりの希望があるに違いない。
腹が決まるとはこういうことか、と、妙に高揚した気分になった。
相葉くんに『YES』を言える自分であることも
それを絶対に裏切らない彼がこの先の一生にいてくれることも
すべては自分が選んで、結果、ここまで来たのだ。
俺が事務所のオーディションを受けたあの日。
想像もしていなかった今と繋がるために始めた、
始まった、あの日。
「だから、ね?今から始めてみればいいじゃない?」
「はは!なんだそれ、ラップかよ!」
「ほら、デビューには、ぴったりの歌詞じゃん?」
「なにデビューだよ(笑)」
「そりゃぁ、恋人デビューでしょ!」
あはは、と二人でいつもの空気で笑い合う。
こんな始まりも俺たちらしい、かな。
こうしてこれからも笑っていよう。
「ありがと、相葉くん。これからもずっと、よろしくね」