会社から出て、そろそろ花見もできるかなぁと
ブラブラと歩き始めた矢先。
『櫻井さん、お疲れ様です。今日は早退させてもらって助かりました。もしお時間いただけたら、これから一緒に飲みたいです。』
相葉くんからのメッセージ。
これは・・・いいのか、いいよな。うん、いいよ。
なんて逡巡するのは一瞬。
誘われたなら断る理由はない。
『お疲れ様です。もちろん、喜んで。いまどこ?』
『自宅に帰る途中なので、そろそろ都内入ります。どこでも行きます。』
『車?』
『いえ、電車です。櫻井さん、最寄り駅どちらですか?』
『私鉄の山の台。相葉くんは?』
『ぼくは風の森公園です。近くてびっくりです。』
『だね(笑)そっち行こうか?』
『櫻井さんが大丈夫であれば、その方が早く会えるので、そうしていただけると。』
『了解。向かうね。また後で。』
『はい、のちほど。』
おいおいおい。
早く会えるので、なんて言われちゃって。
まるでデートの約束なのでは?
まさかの相葉くんの自宅の駅まで知るところになり、
しかも、呼んでくれてるってことは、
テリトリーに入ることを許されたわけで。
俺の自宅とはまさかの同じ沿線。
しかも終電逃したところで、タクシーでも痛手のない距離だ。
・・・いやいや、俺は何をシュミレーションしてんだ!
そんなに引き止めちゃダメだぞ。
「櫻井さん、お待たせしました」
「・・・っ、あ、お、ぉ、ぉおつかれ・・・さ、ま」
タタッと軽やかに駆け寄ってくる相葉くん。
シンプルな白いTシャツに緩く羽織った肌触りの良さそうなグレーの薄手のニット。少し緩めのココア色のトラウザーがめちゃくちゃかっこいい。華奢な首元にシルバーのチョーカーが嫌味なく華を添えている。
細身のスーツ姿が良く似合う彼だけど、
こんなにカジュアルが映えるとは、思わず見蕩れてしまった。
「あの・・・櫻井さん・・・?おつかれでしたか?すみません、呼び出してしまって・・・・・・えっと、櫻井、さん?」
相葉くんから声をかけられて我に返る。
「あぁ、ごめん!相葉くんかっこよくてビックリした」
「・・・あ、ョ、ヨカッタ、デス」
素直に褒めたら、謎のカタコト。
そして、はにかむ笑顔でなんだか嬉しそう。
俺も嬉しい。
『ヨカッタデスっておかしいか、おかしいな、』
なんて小声でブツブツつぶやいて、えへへって、にこにこしてる。
・・・可愛いなぁ。
って、俺、カッコイイだの可愛いだの、
職場のヤツに抱く感情じゃないよな、コレ。
んー・・・。
出会った時から予感はあった、けど。
うん。
もうちょい、この気持ちは見ないフリ、しとこう。