■18:36
近い・・・。
相葉さん、距離感バカなの?
昼間は耳たぶお触りされて、今度は膝が触れちゃう距離で隣同士のカウンター席ってナニゴトなの?ここは仕事の接待とかじゃなく完璧プライベートで使う店でしょ?俺いま、相葉さんと一緒にいる相手であってる!?
軽くパニクってる俺をよそに、ご機嫌でメニューを見ている彼。
連れてきてくれた店は、藍に染め抜いた暖簾のかかるような小料理屋で。
「相葉ちゃんから席の予約受けるなんて珍しいですから。おもてなしさせて頂きますね。」
とは、大将の大野さん・・・おーちゃん、の言。
ちょっと、嬉しいかも。
相葉さんのテリトリーに入れて貰えたってこと、かな。
熱いおしぼりとビールでカンパイ。
・・・なんだけど。
やっぱり肩越しにほんのり体温の伝わる距離感なんだわ、コレ。
否応なく体温があがる。
左肩が熱い。
とりあえずビール、から、突き出しはニンニクの効いた小エビとブロッコリーのアーリオオーリオ。
強めの塩味がビールにめちゃくちゃ合う。
「ぅんめ!」
「ふふ、よかった。メニュー、なんにします?」
腹ぺこの俺はメニューを見て、これまたびっくり。
「ねぇ櫻井さん、何が好きですか?嫌いなものは?」
「えっと、パクチーが苦手ですが、それ以外ならなんでも食います」
「オレのオススメで選んでもいいですか?」
「もちろん!あ、でも、この赤貝の刺身、これは俺、食いたいです」
「櫻井さん、貝好きなんですか?」
「好きですね、ものすごく」
「・・・おーちゃん、聞いたね、貝だよ。」
「んふふ、はいはい、しっかり仕入れておくよ」
「ってことで、櫻井さん、今度来る時は貝の会、しましょう」
「貝の会・・・最高に魅力的なお誘いですが、まだ今日のメニューも頼んでないのに、次のお話ですか?(笑)」
「いいでしょ?」
これだよ・・・。
やってくれますね、相葉さん!
男前にエスコートしてくれて、食事に連れてこられ、物理的な距離を詰められ、次の約束を第三者を巻き込んだ形で早くも確定され、トドメに、上目遣いの『いいでしょ?』ですって!?
堕ちる気しかしない。
すみません、もう、ギリギリです。
・・・いや、まて。
俺は、いいよ、相葉さんのこと、好きだし。
でも、これ、彼も『そう』だと思って、果たしていいものか。