#S
あのキャンプ場ですごした日から
ほんのちょっとだけど
空を見上げたり街路樹や道端の草花を気にしたり
天気予報以外の自然の様子を気にするようになった。
でも、すぐに生活はそんなには変わらない。
俺は仕事があるし、彼も仕事がある。
『今日もみんな、よく生きました。良いことはスルメのように噛み締めて、ムカつくことはアルコール消毒で。はい、カンパイ。』
俺の日常は相変わらず仕事をして、家でひとり酒。
そして、ソロキャンちゃんねるを楽しみに晩酌をする日々。
とはいえ、変わったことも、ある。
ひとり飲み、ではあるけれど。
『翔くん、おかえり、おつかれー』
「智くん、ただいま、いま見始めたところだよ」
智くんとは、しょっちゅう会うことは出来ないけど、
こうしてリモートでほとんど毎日顔を合わせてる。
リーダーのソロキャンちゃんねるの配信時間に間に合うように帰ってきて、PCで再生しつつ、スマホでは智くんとリモートデート。こんな都会のマンションと、あの自然の中で流れる時間が繋がってるなんて、本当に不思議なものだ。
『翔くん、次はいつ来る?新しいランタン買ったんだろ?使いにおいでよ!』
「うん、今週のプレゼン終わったら、結果出るまで大きな仕事はないから、思い切って有給使って何日か休むつもり!」
『マジか!待ってるよ!日帰りじゃなくてお泊まりキャンプ!』
「お泊まり・・・」
『翔くーん!相変わらずかぁいいなぁ!』
「またそれ言うー」
『ちゅうしたい』
「ちょっと智くん!?」
『あー!早く翔くん抱きてぇなぁ!』
「ちょ、ちょっと!あからさますぎだろ、それ!」
『んはは!オイラ難しいこと言えねぇから』
「もー」
とかなんとか言いながら、実は期待してる
・・・なんてのは、まだ素直には言えないんだけど。
「あ、そうだ、ねぇ、智くん、今度さ、俺の友達も連れてっていい?」
『おー、いいぞ、連れて来い!またビールサーバーかりて、今度はビアガーデンごっこしようか!』
「なにそれ!めっちゃ楽しそう!!やりたい!」
無趣味で仕事が楽しいって思ってた毎日。
そりゃあ仕事も楽しくてやってるワケだけど、でも、これまで以上に楽しくて張合いがあるのは、智くんや相葉ちゃんのいるあのキャンプ場での時間がなによりの活力になってる。
ソロキャンの話を何気なくしたら、職場の後輩が思った以上に食いついて来たから、今度誘うよって約束もした。
そうやって、人間関係も思わぬところに広がって、人生が豊かになっていくことを実感する。
次に智くんに会ったら…また、新しい世界を一緒に体験できる…の、かな…なんて、恥ずッ////
ソロキャンちゃんねるはいつの間にか締めの挨拶になってた。
「あ!ほら、智くん、一緒にやって!」
『翔くん、それ好きだよなぁ(笑)』
「すきだよ!だから、ほら!やってやって!」
『わーったよ!では』
お手を拝借!
よーっ!
おしまい。