#S


えっ!!!
おーちゃんが、リーダー!?

うっわ、マジか!


・・・ってか、え?・・・・・・は!?

「しょうくんは、オイラのもん」


って、言った?

言われた?


「・・・オレ、おーちゃんの、ものなの?」


バカみたいに聞き返してるけど、素直な疑問があるだけ。
少しの高揚感をともなって。


「そ。・・・って言うのは、まぁ、冗談だけど」


「・・・・・・じょーだん、なの」

肯定されなかったことに、はからずも声のトーンが落ちてしまった。

突き放されたような。
迷子になったような。

おーちゃんのもんになれたんじゃなかったのか、と、何故かショックを受けている・・・この感情は、なんだ。


「あ、いや、だから、えーっと、キャンプ終わってからも、いつかまた会えたらいいなぁ...みたいな気持ち?」


「いつか、また・・・」

おーちゃんのひと言ひと言が
オレの気持ちに影を落とす。


「おーちゃん、なんか、オレ、寂しい・・・と、思ってるみたい」

「・・・え?」

「ごめん、何言ってんだ、俺。・・・・・・あの、さ、酔っぱらいの戯言だと思って、聞いてくれる?」

「わかった・・・ゆっくりでいから。・・・どした?」

「オレ、すごい楽しかった。」

「ん」

「リーダーに憧れて、ひとりの時間を有意義にしたくて、ソロキャンはじめてさ。たまたま選んだココで、おーちゃんと相葉くん、楽しくて優しい人たちに出会えて、やりたかったキャンプができてさ。」

「うん」

「こんなに楽しい時間の過ごし方見つけられて、本当に幸せだなーって、思えたんだ」

「...そう思ってもらえる時間を一緒に過ごせて、オイラも幸せもんだな」

おーちゃんが肯定の気持ちを見せてくれて。

このまま、もっと、伝えてもいいのかな。

ここまでは、自分自身で理解出来てる、自分の気持ち。

この先の言葉は、気持ちは、未知。


「あのさ、おーちゃん。」

優しい眼差しで見つめてくれて
揺らめく焚き火の炎が
おーちゃんの顔に影をつくるけど
影の向こうにも不安は無い。
おーちゃんに対する絶対的信頼感。
今日一緒にキャンプをしただけで
お互いのことは本名すらも知らない・・・のに。


「オレ、おーちゃんと、これからも会えるとか、会いたいとか、そういうの、考えてなかった。それは、考える必要がないほど・・・・・・なんか、当たり前に、この先にもこういう時間があるんだって・・・思っちゃって、思えちゃって・・・。でも、冷静に考えたら、おーちゃんはここのキャンプ場のインストラクターで、オレはフツーのサラリーマンで初心者の客で・・・。なんの役にも立たなくて、そりゃあ、優しいのは当然なんだよね。なのに、この感じが『オレたちの関係性』って自然に思いこんじゃって・・・」


なんかよくわかんないけど
鼻の奥がツンとしてきた
こんなに落ち着かないのって
デカイ仕事のプレゼンでも感じない。

どうやって言葉を紡げばいいのかわかんなくなって
気持ちがいっぱいになってきた。


横に並んで聞いてくれてたおーちゃんが、椅子から降りて膝を着いてオレに向きあってくれる。
そして、しょうくん、と優しく呼んでくれた。