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『リーダーのソロキャンちゃんねる』をきっかけにキャンプをはじめたいって言う今日のお客さん、しょうくん。


YouTubeをみて始めちゃうくらいだから、簡単そうにできると思ってたとか、装備にやたら金かけてキャンパーのファッションを味わって満足しちゃうとか、そういう人が多い中、やたら真面目に取り組むしょうくんを、とても好ましく感じた。


前者の人たちも決して悪いとは思わないし、できる範囲で楽しめるライトなレジャーとして気負わないで始めてくれるのは嬉しい。だから、どんな人がきても、おもてなしと達成感のバランスを考えて過ごす。


ただ、しょうくんは、なんというか・・・


ひたすら真面目で、とにかく不器用。


これは、おもてなし度をかなり高めに設定だ。


とはいえ、礼儀正しくて人当たりがとてもいい。


そのうえ、食べものを口いっぱいに詰め込んで小刻みにモグモグする様子は、なんとも、小動的を眺めているような癒しを感じる。


おもてなし度高め、とかいってるけど、

つまり、

オイラがついつい世話を焼いてしまうという状態で。


私情はさむのはよくねぇぞ、これは仕事だぞ、と、自分に言い聞かせたところで、受付の時に『おーちゃん、やったね!』と、まるで恋愛に憧れてキャッキャする女子高生のようなテンションで相葉くんが耳打ちしてきたから、意識しない方が無理だ。


うーん・・・・・・正直、好みだぞ、コイツ。




ココロもカラダも解放するってのが、

醍醐味のソロキャンだ。


オイラ自身がそれを1番わかってる。

自然の中の出会いは一期一会。

景色や風の匂い、水の温度も、空の色も。

それはヒトとの出会いだって同じ。


この可愛らしいヤツを気に入った。

その気持ちを大事にして楽しんだって

バチは当たるめぇ。



「しょうくん、うめぇか?」



自分の船で釣ってきたボラ、シログチなんかを燻製したものを軽く炙ってアテにする。

テントを張って火を起こして水汲みをして、と、

なんだかんだ動いてからのビールは最高だ。



「めっちゃうめぇ!なにこれ!すげぇ味する!」


「すげぇ味するか!それはよかった」



かじってモグモグ

ビールをぐびぐび



幸せそうでよかったよ



「おーちゃん!マジでソロキャン最高だな!」


「うはは!ソロ、じゃねーけどなw」


「おっしゃる通り!」



昔からの仲間のような心地いいテンポで

弾む会話とすすむ酒。




「今日はもう入場予定はないから、管理人さんはおーわりっ!」



相葉ちゃんがでかいビールサーバーを『サービスね☆』と、できないウインクを添えて気前よく貸してくれた。



「相葉くん、ありがとうございます!すげー贅沢!」



しょうくんは、目をキラキラさせて喜んでる。



「ねぇねぇ、おーちゃんと仲良くなった?」


相葉ちゃんはオイラがしょうくんを気に入ったのは確信しているらしく、彼の様子に興味津々。



「はい、そりゃもう、大変お世話になっております!」



礼儀正しいなぁ

・・・なんて、にこにこしちまうなんて、

自覚したら最後。

もう、堕ちてるな…。



「まじめー!会社の人みたい!」


「相葉ちゃん、しょうくんは普段は会社の人だって」



すかさずフォローにはいるが

テンションの高い相葉ちゃんはなおもグイグイ。


「しょうさん!こじんじょーほーが漏れてます!」


「あははは!いいですいいです、そんくらいの事なんでもないので!」


「ねぇ、オレにも普通にしゃべってよ!敬語ナシナシー!」


「あ、はい・・・・・・じゃなくて、うん、そうしたい!」


「じゃあさ、しょーちゃんって呼んでいい?」


「もちろん、いいよ」



さすが相葉ちゃん

ハイスピードで距離詰めんのさすがだわ。


ちょーっと、面白くないぞ?

なんて思ってるあたり、もうこれは。



枝を削ることに集中力してるフリして

相葉ちゃんとしょうくんの会話に耳をそばだてる。



「ねぇねぇ!しょーちゃんは恋人いる?」


「相葉くん直球ほおってくるねー!」


「お泊まりには恋バナって相場が決まってんだよ~」


「っはは!お泊まりって!相葉くんおもれーなぁ!」


「俺はマジマジのマジで聞いてるよぉ」


「何回マジマジ言うんだよw」



おまえらマジマジはいいから!

しょうくん!

恋人いんのかいねーのか、はっきりしろや!



「何回でも言うよーマジが伝わるまでね!」


「わかったわかった!恋人いないよ、ザンネンナガラ」



・・・・・・ん?

あんま残念っぽくない、感じ。

いまはそういうの、いらないってことかな。

ソロキャンやるくらいだし、そらそーか。



「おーちゃん、なにつくってんの?」


しょうくんがデカい目を相変わらずキラキラさせてオイラの手元を覗き込む。好奇心のカタマリだな。うん、可愛い。


「これで魚焼いてやる」


「え!もしかして、串刺しして、焼くヤツ?」


「ふふ、ソレっぽいだろ?」


「わー!憧れてたヤツだー!こう、くねくねって魚を刺して、火の近くに立ててさ!」


「それそれ。やりてーかなって思って」


「やりたいやりたい!すげー!」



リーダーのソロキャンちゃんねるが好きなら、こういうのもやってみたいだろうと思ってたら、どんぴしゃハマったみたいでよかった。


完全なる餌付けになっちまってる・・・。


しかし、モノを食ってる顔が可愛いだなんて思ったことなんかない。


これまでも恋人はいたが、ココロの芯から疼くような感情を持ったのは、初めてだ。


こりゃぁどハマりしたら手放せなくなる・・・


っておい、オイラも気が早ぇなぁ(苦笑)