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「おーちゃーん!今日はひとり、予約あるよーっ!」


「あいばちゃーん!さーんきゅー!」



入場手続きをする事務所兼、レンタル用具のカウンターがあるバンガローから、管理人さんが大きな声で教えてくれた。


明るい笑顔と優しくて評判の管理人、相葉ちゃんから予約の確認。



俺は日課のゴミ拾い。

ここはわりとマナーが良いお客さんばかりだけど、

それでも片付けきれないゴミは日々、

少なからず無いとはいえない。



「ゆっくりでいいからねー!」



片手を上げて了解の合図。



ソロキャンプのインストラクターが思った以上に需要があってびっくりした。人と関わりたくなくて「ソロキャン」なのに、まずは教わろうっていう人がまぁまぁいる。でも、そういう選択をするだけあって、さすがに真面目な人が多く、先人の知恵やマナーを学ぼうとしてくれるから、キャンパーとして安全、且つ楽しく過ごせるようにレクチャーしてあげたい。




「もどりましたー」


「あ、おーちゃん、おかえりー!のむー?」


手入れされたグラスを目の高さに上げて、ドリンクを用意してくれたことを知らせてくれる。

バリスタの資格を持つ相葉ちゃんが入れてくれる挽きたてのコーヒーは、お客さんをおもてなしする最高なウエルカムドリンク。


「今日はちょっと暑くなるから、酸味強めのキリッとした味わいのアイスコーヒーにしまーす」


カラン、と涼やかな音と共に、タンブラーに用意されたアイスコーヒーを一気に喉へ流し込む。


「……っはぁ!相葉ちゃん、今日もうめーな!」


「やった!おーちゃんにそう言って貰えたら、自信もってお出しできます!」


「おぉ、そうだ。今日のお客さん、どんな人?」


「えっとねー……」


相葉ちゃんはお客様情報をPCに表示して


「40代、独身、男性、キャンプは初めて…キャンプネームは【しょう】さん」


「んふふ」


「なに?おーちゃん、急に笑って」


「『キャンプを始めるきっかけ』がさ、」


「ん?……あぁ(笑)最近多いよね、【リーダー】きっかけ」


「やっぱり人気なんだなぁ【リーダー】」


「だね!さすが、リーダー!」


「【しょう】さんね。歳もオイラに近いし、話しやすい人だといいなぁ」


「おーちゃんはマイナスイオン出てるから、みーんなやわやわ~ってなって、すぐに仲良くなれるよ!」


「やわやわって(笑)まぁ、自然の中で『生き物のいっこ』として、何者でもない自由で解放された時間を過ごせるようにね、オイラなりにおもてなしするよ」


「ふふ、がんばってね、リーダー!」


「相葉ちゃーん!それ、しーっ、だからな!」