「雅紀……なぁ...」
やわらかく低く甘い響きの大好きな声がオレを呼ぶ。
意識がゆらゆらと定まらないまま
心地よい少し冷たい手の感触が
オレの頬や首筋をなでているのを味わっていた。
「なにニヤニヤしてんだよ、ホントは起きてんの?」
起きてないよ
オレはいま、夢の中
こんなに気持ちがいい夢なら
ずっと起きたくないよ
オレの耳たぶを食みながらささやく
愛おしいたいせつなひと
オレの髪を優しく撫でて
彼のキレイな指が髪に絡む
「...っん」
耳元に感じる吐息
首筋の動脈を辿るくちびる
おもわず声が漏れると
くちびるを肌に添わせたまま
「……お前の顔みたくてめちゃくちゃ急いで帰ってきたのになぁ」
寝てるオレに向かって落とす不満の言葉も全部が「愛してる」に聞こえるのは、どうしようもなくこの人がオレに甘くて、そんな彼にオレ自身が抗えず溺れてるからだと自覚はある。
そんなふうに、とろとろと微睡んでいたら
「んッ...ッ、……はぁ...ンんっ」
しょーちゃんからの熱くて重いキスで
強引に意識を浮上させられる。
「ちょ...しょ、ちゃ」
荒れた息で彼の名前を呼んで
ささやかな抗議の意思表示。
抵抗が功を奏した...のに、離れた唇が寂しくて。
思わずしょーちゃんを探して目を開けた。
「......おきた?」
「……ん、強引。」
「だって、雅紀を前にお預けなんてムリ。」
そう言いながら、パジャマ代わりのTシャツの首元をはだけさせてなおも肌を辿る舌の熱さに、求められる幸福に、満たされる。
「ん...ハァ、あっ...、アッ」
シャツをすそからまくりあげられ
ヘソから脇腹へ優しい愛撫とキスをもらえば
寝ていたカラダに火をつけられて甘い息を漏れだす
「しょ...ちゃ...ッん、」
「まさき...いい?」
瞳の奥に欲望の熱を宿してそれを隠しもせずにオレを欲しがるしょーちゃんにダメなんて言えるわけない。
だって、オレ自身がこんなに求めてるんだから。
はだけたシャツを自分から脱ぐ。
しょーちゃんが気に入ってる左肩のアザ。
自分でそこを伏し目がちに流し見て
その視線をそのまましょーちゃんに向ける。
首に腕を回せば肯定の合図。
「アッ...、しょ、ちゃんッ...アッアッ...!」
さんざん鳴かされて揺らされて
カラダの中も外もグチャグチャになって
それでもおよそ終わりなんか見えない交わり
ナカの奥深くを攻め立てられ
前を握るしょーちゃんの手に強烈な快感で追い込まれると
「しょ、ちゃ...また、も...、でる、んっ!...イき、そ...ッ」
「俺も...っ、出して、い?」
そう言ってオレの腰を抱え直して
肌のぶつかる音が激しく聞こえると
煽られたオレ自身の昂りは限界を超える
「んっ!んぁっ!...ンッ!でる、しょ...ちゃッ!アッ、アッ、アッ!しょ...んッ!」
返事のかわりに喘ぐ声を喉から漏らして
ぎゅっとしょーちゃんの背中にしがみつく。
どれだけでも深く入ってもらいたくて
めいっぱい腰を振りあげて脚を広げるオレは
もう理性とか羞恥とかなんにもなくて
ただ愛するこの男のことだけしかない
純粋なオレになれる
どんな時よりも汚らわしくて
...いちばん綺麗なオレ。
快感にのみ込まれて
どれだけ肌を重ねても
いつまでも慣れることのない
どこまでも飽きることのない
お互いを欲する果ての無い欲望
いいんだよ、だって今日は。
おねだりしていい日。
欲しいものをもらえる日なんだから。
「雅紀」
「...ん?」
「まさき。」
「...ふふ、なーに、しょーちゃん」
何か言いたげな
でも彼の中の適切な言葉を探すように
唇を結ぶ愛おしいクセ
「あのさ......いつも、笑っててくれて...ありがとな」
「......どしたの」
「いや、なんか...。うん。なんかな。」
「ふふ......うん。じゃぁオレは.........そうだな。いつも、笑っていられるようにしてくれて、ありがと。だな。」
「俺は......雅紀を笑顔にしてやれてる?」
「うん。...あのね、オレたちはさ、お互いの側じゃなくても、オレたちのそれぞれの場所で、オレたちを支えてくれてるひとがたくさんいるから、笑っていられるし、笑っていたいじゃん?」
「うん」
「だけどね、逆に、オレが泣いたり落ち込んだり、時には怒ったりできるのって、しょーちゃんのそばにいる時だけ......なんだよ」
「...うん」
「オレが笑ってられるのは、しょーちゃんが、いるから。絶対に、どんなオレでも、ぜったいにぜったいに、愛してくれてるって、わかるから。だから、他人には見せられない汚い感情をぜんぶ手放すことを許してくれてるしょーちゃんが、オレを笑顔にしてくれてるんだよ」
「...俺は雅紀の全部をもらってんのか」
「なんか、コトバにすると...恥ずいわ」
「嘘だろ、いまさら?(笑)」
「オレの全部をしょーちゃんにあげるっ、とか。恥ずくね?」
「そんな言い方は俺はしてない」
「あっ、そういうこと言う?」
「言う」
「んだよー!否定しろよ、そこは(笑)」
ほら、こうやっていつの間にか、また。
「あーあーまんまと、笑顔にされちったー」
ふたりで顔を見合せて吹き出すように笑って
色気も気だるさもいつの間にかどこかにやって
ふざけてゴロゴロとベッドの上を転がって抱き合う
大の男が素っ裸でなにやってんだって。
こんな時間がたまらなく愛おしい。
「しょーちゃん」
「ん?」
「これからも、ずっと、オレを笑顔にしてくれんだよね?」
「もちの、ろんです。」
「ふふ、ありがと......やった、でっかいプレゼント、もらっちった」
「ん?でっかい??」
「そ!しょーちゃんの『これからずっと』!」
「ハハッ!そんなんでいいのかよ?お前は欲がないなぁ」
って、眉毛を八の字にして笑いながらオレを抱きしてめてくれるけど、オレはこんなオレみたいな強欲なヤツはいないって思うよ。
まだまだまだまだ。
ぜーんぶのしょーちゃん、欲しいもん。
欲しいものを欲しいって言わせてくれて
ありがと、しょーちゃん。
ほんとにだいすき。
しょーちゃん。
お誕生日、ありがとう。