ゆっくりキスを解いて目を合わせると
潤くんが泣いていた。
「……ごめん、いや、だった?」
小さく首をふって
「ちがう……なんか……なんていうか」
しゃくりあげるのではなく静かに
ただ、涙が溢れるままに。
「こんなに……あったかい気持ちになれるんだね」
「フフ…そう感じてもらえたなら、よかった」
「雅紀さんとしょおくんは
こんなふうに気持ちを交わしてるんだってわかって
……すごく、羨ましい。」
「うん」
綺麗な瞳に改めて魅入ってしまう。
街でもらったポケットティッシュに入ってた
今でもオレのお守りにしてるあのMJとおなじ瞳
キラキラと星が浮かんだような澄んだ湖のような
ゆるくたゆたうとろりとした水面のような
そしてその美しさ以上に
強い意志と熱い情熱を感じる
あの瞳で潤くんは
「……僕も、2人を、幸せにしたい」
って、言ってくれた。
その言葉を聞いて、こんどはオレが。
男ふたりでめそめそしてるテーブルは異様な雰囲気だったのだろう。もしくは、なにか、全く違う意味を察して、そっとしておいてくれたか。潤くんと『勘違いされてるかもね』なんてやっと笑い合えるようになったのは、けっこうな時間がたってから。
しょーちゃんから『そろそろ着くよ』ってお迎えの連絡が来て、仕事が終わる時間になってることに気づいた。
オレとしょーちゃんが電話で話してる様子を見てる潤くんは、これまでに見た事ないほど優しくて幸せそうな顔をしてる。
「しょおくんとしゃべってるときの雅紀さん
本当に甘くて……いい顔してるんだよ。」
「もぉ…恥ずいなぁ…でも……
うん、しかたない!
しょーちゃんのこと想ってると
緩まっちゃうんだから、仕方ないな!」
「うん、しょおくんもまさにそんな感じだよ。
かっこいい2人のそんなゆるゆるの顔みられるなんて
ホント役得だな」
「おい、言い方な(笑)」
「ホラホラ、しょおくん、迎えにくるんでしょ?
僕、もうちょい飲んでくから、仕事あがっちゃいな?」
すっかり常連の潤くんはこのままラストまでいるのかな。
「どうしよ、しょーちゃん呼んで、一緒に飲む?」
「んー、めちゃいい提案。…だけど、遠慮しとく」
「遠慮なんか」
って言うオレにナイショ話みたいな手招きをするから
素直にカラダを寄せるとグイっと引き寄せられて
「雅紀さんとのはじめてのキスの余韻、たのしみたいから」
ってささやいた。