「……そうであろうとしてる?」
そう繰り返したあと
なんだか急に泣きそうな顔をして
潤くんがオレを見た
「…どした?やっぱ、ついてこれない?」
潤くんはふるふると首を振って
こんどはしょーちゃんに
「なんで?なんで、そんな曖昧なの?」
と、責めるような口調で言った。
「……曖昧?」
「そうだよ、生涯の伴侶、でしょ?一生そばにいる、死ぬまで一緒にいるってことなんでしょ?それなのに『そうであろうとしてる』って……なんかさ、なんかそれって無責任なんじゃないかな」
「無責任?」
「そうだよ、そんな曖昧にして、無責任でしょ、きっぱり約束しないんだから。」
……曖昧で無責任、か。
潤くんがそう思うのも無理は無い。
ただ、オレたちはそうやってお互いを想いあってきたし、これからも、生涯、そうしていこうと決めたんだ。
そしていつの間にかオレたちの間に潤くんがいた。
「なぁ、潤。もし、叶うなら、潤がこれから俺たちと過ごす中で、俺と雅紀の責任のとり方を感じて欲しいと思う。……それを潤が、望んでくれるなら。」
そう言ったしょーちゃんの体温が上がってるのを感じた。
感覚全開で向き合ってるしょーちゃん。
こんな時でさえ
いや、こんな時だからこそ
剥き出しのしょーちゃんに、やっぱりオレは欲情する。
オレがしょーちゃんの頬から汗ばむ首すじを撫ぜてあげると、力が入ってたことに気づいたのか、とうに氷が溶けてしまっているぬるいウイスキーをひとくち含んで息を吐いた。
やっぱりそんな風に視線を交わしたり触れ合うオレたちを優しく見つめている潤くんは、彼なりの答えを見つけようとしてくれてる。
「……うん…そうだよね。わかってるんだ。ただ、もう少し、なんかこう、ストンと来ないっていうか」
潤くんが一生懸命わかろうとしてくれてる。
全部受け入れようとしてもがいてる。
そんなカッコ悪くてグラグラしてて
純粋でめちゃくちゃ可愛い彼を
オレたちはいますごく大切に思えてる。
「しょーちゃん、オレが話してもいい?」
「……あぁ、そうだな、雅紀も。」
ふわっと笑顔を向けてくれたしょーちゃんの頬にキスをする。
いつの間にか潤くんがオレ達と一緒に過ごす時間が自然になって、いつものふたりのやりとりができるようになってた。
「……お互いに甘やかしあうのって、幸せなことだよね」
潤くんがオレたちの様子をみて、そんなふうに言った。
「そう。甘える方と、甘やかされる方、どっちかしか出来ないなんて、もったいない。どちらも幸せで、本当にきもちがいいことなんだから。」
「僕、雅紀さんを愛したいっておもってたけど、それって、きっと、しょおくんのことも大切にすることだし……もしかしたら僕も、2人から、大切にしてもらえるってこと…なのかな」
「フフ、そういうの、悪くないと思わない?」
「悪くないどころか、いま、それ想像したら、めちゃくちゃ幸せになっちゃってる……」
「ナニを想像してるのやら」
「えっ、いゃ、ちがっ!別に僕は!」
「オレなんにも言ってないよ?(笑)」
あははって3人で笑って過ごす今が
とても、幸せに感じた。
潤くんが新しい飲み物を作るってキッチンに立ったから手伝うためについて行った。その時、潤くんが泣くのを堪えてるのが伝わってきて、オレはどうしようもなくこの人を愛おしく感じた。
「……っ!ま、雅紀さん!?」
思いのままに潤くんを抱きしめる。
「ありがとね……」
ゆっくり背中を撫ぜて呼吸を合わせると、潤くんのからだも緩んでオレに委ねてくれて、心地いい重さを感じた。
「……うん、僕こそ……ありがとう」
そういった潤くんはオレの背中に腕をまわして
いつも手を握ってくれるくらいの優しさで
優しく抱き返してくれた。