2人でぐちゃぐちゃになったまま抱きあって微睡む。
この気だるさが好きでうとうとしていたいけど
さすがにごまかせない空腹に気づいて時間を見ると
とうに昼をすぎている。
深い呼吸をして意識を手放しているしょーちゃんを、彼が気に入っているやり方でギューッと抱きしめてから、ベッドから抜け出してシャワーを浴びた。
リビングにあるスマホがメッセージが来ていることを
仄かな光で静かに知らせてる。
「あ、ヤバ」
酔って寝落ちして起きたら夢中で抱き合って。
2人以外のことは全部置き去りにしてた。
オレは別に連絡が取れなくて困るのは店から急遽のヘルプ要請くらいだけど、しょーちゃんは大丈夫なのかな。
しょーちゃんの横に戻って
寝ている彼の柔らかな髪を弄びながら
スマホをぽつぽつと確認していると
しょーちゃんがふっと目を覚ました。
そのまま俺の膝枕にずりずりと移動して
「…腹減った…」
「…だろうね(笑)」
「ねぇ、潤くんから何通かLINEきてた」
「…あー、あいつもオフだからな」
「そっか、メシの誘いきてる。いく?」
まーた、ニヤニヤしてる…。
考えてる事はわかるよ。
「『翔くんも一緒にいるんでしょ?3人でどう?』だ、そうですが、どうですか?」
と、覚醒しきってないしょーちゃんに画面をみせて、再確認。
「本当は雅紀だけがいいんじゃねーの?」
「んー、たぶん、まだそれはないと思う」
「まだ?」
「そ。」
「なんか話したのか?」
って言いながら、しょーちゃんはのそのそとシャワーに行った。
潤くんが選んでくれたお店は
とても美味しくて過ごしていて気持ちがいいお店。
どんどんお酒がすすんで話題が深くなる。
「…でさ、僕も情けなかったり不甲斐なかったり、そういうの雅紀さんに知ってもらいたいって…思った。」
「なんでそうおもったの?」
「僕が雅紀さんのどんなところに惹かれてるんだろうって改めて考えてみた。」
「俺も聞きたいそれ」
「うん…たぶん、雅紀さんの、飾らないところだなって。」
オレが立てなくなるほど泣いたあの日。
大の大人の男があんなにも号泣する様を見た事がない。
そしてそれは、とても美しかった。
と、潤くんは言った。
「ふだんは隠されている弱さやキズ……他人には見せないものでしょ。…知らなかったよ、あんな気持ち。そこに触れてしまったら、とんでもなく愛おしく感じてしまって…」
「潤は、まだソレを出せないからな…」
「…うん、仕事でもよく言われる。綺麗なだけじゃダメだって。」
「オレは…MJの瞳、好きだよ?」
「ありがと…まだまだ、だけどね。」
「ふふ……潤、いいじゃん、その感じ」
「え?」
「そーやってさ、俺にいつも泣き言いってたり、上手くいかなくて拗ねてる顔をさ、雅紀にも見せろってこと。……そうしたいって思ったんだろ?」
「……ん、おもった。」
いつもカッコよくて
何かを見つめてキラキラしてるMJの瞳が
いま不安げに揺れているのをみて
オレは、抱きしめてあげたいって……おもった。