いつもなら
きゅっと握った手はすぐに離れて
オレはなんとなく名残惜しい気持ちになってたのに
今日は
今は...そのまんまで潤くんの温もりを感じてる。
ただ、ここはオレの働く店で、プライベートを持ち込むことに問題がないワケではなく、しょーちゃんがこれでもかというくらいニヤニヤしていて、オレはこういう時のリアクションの引き出しを持っていない。
いろんなアンバランスに耐えられなくなって、そうだ、潤くんにはもう素直に向き合わないとどうにもならないんだってことを思い出して、余計なこと考えず。
「...ねぇ、潤くん...その、さ。展開、早くない?」
「ん?」
「抱くとか、なんかそういうことの前に、お互いに...なんというか...」
上手く話そうとしたって無駄なんだから
ぜんぶ素直にいえばいいんだ。
握られていた手を解いて
小さく深呼吸をして
「あのさ。潤くんが真面目に言ってるのはわかってるし、しょーちゃんがただ面白がってるだけじゃないってコトも、オレにはわかる。」
しょーちゃんがオレと目を合わせずに小さく頷いて
満足気にウイスキーをゆっくり舐めてる。
「潤くん、さっき潤くんはオレに『対象外か』って聞いたよね?」
「うん」
「正直に言えば...とっても素敵で、魅力的。なによりオレを救ってくれたMJなんだ。気にならないわけがないよ。」
「...うん」
「でもさ、潤くんはオレに『興味がある』ってくらいの状態で、それで、オレを抱きたいって、それ、オレが受け入れるの、フツーに考えて無理くない?」
しばらく黙って飲んでたしょーちゃんがふふって笑って
それからオレらに向き直って
「たしかにな、雅紀のいうとおりだわ」
「しょーちゃん」
「潤、雅紀が自分からお前に近づくの、待てねぇ?」
「あー...うん、そうだね......」
「オレと雅紀が一緒にいるワケ、そのうち雅紀が話そうって思った時に...聞いてやってよ」
「しょおくんと、雅紀さんが、一緒にいるワケ...」
あんなに攻め攻めだった潤くんが
しょーちゃんの一言でしゅんとしてる......かわいい。
「しょーちゃん、ありがと...潤くん、今日はたくさん一緒に過ごせて楽しかったよ。これから、ゆっくり、なかよしになっていこう?」
そう伝えて
今度はオレから潤くんの手を
ゆっくり握った。