明るいうちから潤くんと2人で過ごしてわかったのは
彼がすごく繊細で真面目で探究心が強いってこと。
彼が立ち止まった街中のさまざまな場所に
潤くんなりの「好き」が散らばっていたんだろう。
オレも同じく興味があれば少し言葉を交わして
わからないものでも何となく一緒に見る。
潤くんはオレが楽しんでるかつまらなそうにしてるかは
ぜんぜん気にしてないって様子で。
たぶんものすごく気にしてくれてるのかもしれないけど
それでも、なんでもないように振舞って。
オレはそれが何故かすごく居心地がよかった。
実際につまらない時間なんか一瞬もなかったけど。
だって、あのMJの瞳に何がどんなふうに映っているのか
それに思いを馳せれば
心が浮き立ってずっとわくわくしていられた。
そうしてすこしのふたりきりの時間を過ごして
そのままオレは仕事に出る。
潤くんも一緒に。
オレはカウンターの中、潤くんはその前に自然に座る。
いつも防御力の高いメガネ姿だったから
店のメンバーや常連さんがざわつくのがおかしかった。
ふたりで見合わせながら笑い合うのも心地いい。
しょーちゃんから『これから行くよ』って連絡があったから返信してたら、潤くんからしょおくん?って聞かれた。そうだよって言ったら『甘い顔してる』って言う。
「…んー、わかんない、けど、顔が緩んでるのは、うん、なんとなく」
「ずっと、敢えて聞かなかったけど....つきあってんの?」
「ふふ、それね」
「誤魔化すなら、これ以上は聞かないよ」
イヤミな意味じゃなくて、配慮でね、と付け加えて。
だからオレは
「つきあってないよ」
って、キッパリと答えた。
「うん...そう、だよね。恋人って感じじゃないんだよ、2人とも。でも、お互いをすごく大切に想ってるのがわかる。」
『ホーム』なんだよ
って潤くんに言ったら、どんな反応をするんだろう。
いまは言わないけど。
そのうち
聞いてもらいたくなる日が来るかもしれないって思った。