ふと

インターホンが鳴ってる気がして目が覚めた

どこか遠くでなっているようで

その音をぼんやり聞いてる


......あれ、いまなんじ?


時計を見ると昼をすぎたあたり。


腹減ったなぁ...
しょーちゃん来る夕方までになんか食べるかな

ぼんやりしたアタマで
ぺたぺたと床を歩く

相変わらず遠くにピンポンは聞こえてて

とおく...?

その違和感にふと、意識が覚醒した。



鳴ってるの、うちだ。




あわててドアを開けると





「きちゃった♡」






と、まだ来る時間ではないはずのしょーちゃんがいた。



「ごめん、寝てた……ってか、はやくね?」

「うん、なんか朝イチで撮ったやつをクライアントがやたら気に入ったらしくて、もうパターンいらないからって撮了した。」

さすが俺だよな、ってニヤッと笑う。

話しながらしょーちゃんはいつもの流れでソファーに座ってテレビをつける。『昼のニュースって久々に見たわ』とかいいながら。

「おつかれさまでした。ごめん、寝落ちして風呂入ってないんだ。サッとシャワーしてくんね。」

「おぅ、ごゆっくり~」








脱衣所の鏡の前で着ていたシャツを脱いで目に入った

左肩のアザ。



あの絵はオレだった。


あのひとは何にでも興味を持って
面白いものが好きだった。

オレのこのアザも面白いっていいながら
くちびるでなぞってくれたのに。





あ...ダメだ。
無理かも。



ずっとこらえてたカタマリみたいな熱い何かが喉の奥からせりあがってくる。潤くんが『ハートだ』って言ってくれた喉仏を焼きつける。吐き出したってなんにも変わらないってことはオレはもうわかってる。もうあの人のことで泣くのはイヤなんだ。


そんなふうに思っていたって
嗚咽が溢れて声が漏れる。
ずりずりと壁伝いにしゃがみこんで


「...ッ...っふぅ...はァ...」


膝に力が入らない。
立ち上がることができない。


どーしよ。

しょーちゃん待ってる。





「......雅紀」


名前を呼ばれてビクッと身体が震えた。

しょーちゃんにみつかっちゃった...



「シャワーの音、聞こえてこないからどうしたかと思って...。」


優しく頭を撫でてくれる。
あったかい手が頬を包んでくれる。
優しく背中をさすってくれる。
綺麗な手が俺の肩をなぞる。


「ほら...カラダ冷えてる。」


そうだ、シャツを脱いだままのカッコだった。


「やっぱりシャワーだけじゃなくて、風呂にしない?俺も入りたい。」

雅紀んちの風呂は広いんだよなぁ、なんていいながら
しょーちゃんが風呂を溜めてくれてる。


「......しょーちゃん、いっしょに、はいる?」

「一緒にはいろう」

「うん...」