あれからもう泣くことはせずに過ごせたけど
たぶん周りはなにか、思っていたとおもう。


それまでさんざん飲んでではしゃいでいたオレが急に

立てなくなるほどに

息が出来なくなるほどに

泣き出したもんだから。

オーナーからも

「まぁ。生きてればいろんなことあるよね。」

って苦笑いされて、早めにあがらせてくれた。





ひとりの部屋

家に着く頃にはすでに夜は明けていて

薄暗いけど寝る準備をするだけなら十分。


「......あの部屋も、こんなふうに薄暗かったな...」



あのMVを思い出す。

ひとりで見る勇気はない。

でも、存分に脳裏に焼きついて、ずっと反芻してる。



「気持ちいい声だったなぁ...なんてひとなんだろ」



歌ってたあの男の子。


いまはあの子がカレのそばにいるんだろうか。
冷たい床で抱かれてるんだろうか。

だめだ。
思考が完全に闇堕ちしてる。



「...しょーちゃん。今日会えるかな......」



ベッドから起き上がることもせず、もぞもぞとLINEを送ると、すぐに既読になって『今日と明日はやすみだっけ』って。さすが、オレのシフト把握してる。


『うん、ウチ来れる?』
『了解。俺仕事終わるの夕方。終わったら連絡する』
『食べたいもんあったらLINEしといて』
『これからスタジオこもるから電波なくなる』


続けざまにポンポンと送られてくる


『わかった、がんばってね。今日もカッコイイよ』

『みてねーだろ(笑)早く寝ろおやすみ』
『おやすみ、あとでね』


ちょっと安心したら体が急に重くなった気がする。


泣いたせいか頭も痛い。

はぁ...


「なんか......つかれたな......」


独りごちて、そのままなんとなく目をつぶり
襲ってきた睡魔に身を任せた。