「あれ、ひとりで来てくれたの?」

「うん、明日オフだからゆっくり飲もうと思って」


そろそろ上着がなくても外を歩けるなぁって
思い始めた季節の変わり目を感じる夜。


カウンターから離れてテーブルで接客してたらいつの間にか潤くんが来てた。

「ごめん、まだカウンターに戻れなくて、しばらくいてくれる?」

「もちろん。連絡もせずに来たんだし気にしないで。」


『雅紀さんの笑い声を聞きながら飲むのは僕の癒しだからね』なんて、ものすごいキザなセリフをサラッと言いながらウイスキーでくちびるを濡らしてる。


うーん......かっこいいなぁ。
しょーちゃんとはまた違うカッコ良さ。


初めて飲んだあの時から、たまにしょーちゃんと一緒に来てくれて3人で飲むようになった。いつの間にか潤くんの口調もくだけてきて、距離が近くなってる。

とはいえ、ひとりで来ることはなかったから珍しい。
LINEでもくれたらちゃんとお迎え出来たのに。




いつものように終電過ぎて落ち着いた頃
やっとカウンターに入ることができた。

「潤くん、待っててくれてありがと」

「ううん、雅紀さんずいぶん飲まされてた?」

「あー、うん、ちょっとがんばった」

っていいながら、水を飲む。

「雅紀さんの喉仏、ハートの形なんだ...」

「へー」

「へーって(笑)まあ、そっか、自分の喉仏なんか見ないよね」

「うん、しょーちゃんはよくちゅ...っと」




っぶねー!!



『ちゅーしてくれるけど』

なんて、言えるわけねーぞ!

あぶねーあぶねー!




「...ちゅ?」

「ちゅ…..うもく、うん、注目!してるから、そっか!そういうことだったのかぁ!はははー!」

「そんなにしょおくん見てるのに、言われたことはなかったんだ?

「うん、はじめていわれたよ。へへ…なんか、嬉しいな」

「うれしい、の?」

「......潤くんにオレの『ハート』見つけてもらったって思うと、なんだかドキドキする」

「なにそれ、雅紀さんかわいい」

なんて言って、なんだかとっても慣れた感じ。

「潤くんはなにを言ってもサマになるねぇ...」

「カッコよく思われたい人の前では、めいっぱいカッコつけて『いい男アピール』しないとね、男前がもったいないでしょ?」

「慣れてるなぁ...(笑)」

「素直なだけだよ」

っていいながら、カラカラと涼やかにグラスの氷を指で揺らした。

そんな潤くんを見るともなしに

今日もオシャレだなぁって

Tシャツにデザインされたイラストをみた瞬間






「...ッ!?」

......心臓が跳ねた。



それ、その絵、なんで...?

まさか、こんなところでまた見ることになるなんて...