「まーさきっ!」
「…んー?」
もうすぐで読み終わる小説。
キリのいい1行だけ目で追ってから
しょーちゃんの方へ視線を投げる。
「どした?しょーちゃん、ご機嫌じゃね?」
今日はめずらしく2人とも夕方には帰って来れて。
ずーっと、なにやらキッチンで
ガチャガチャごそごそやってたしょーちゃん。
番組でもらって帰ってきた食材だかを
気まぐれに弄んでるんだと思ってた。
いつもそれを食べられるように
調理し直すのはオレの役目。
「うん、俺いまちょーゴキゲン!」
「なんか上手にできたの?」
「うん!めーっちゃじょうずにできた!」
どれどれ、みしてよ
と、おもむろに立ち上がろうと
小説をテーブルに置いて
一瞬しょーちゃんから目を離したその隙に
「……あれ?しょーちゃん?」
しょーちゃん、かくれんぼ、ハジメマシタ??
「しょーちゃん、どこいったー?」
とりあえずはキッチンに向かったその時
「とりゃーっ!」
「ぉうわっ!!」
しょーちゃんが飛びかかってきたもんだから
思わず抱きとめて
そのまま尻もちをつく羽目になった。
「っぶねーっ!ちょっとちょっと!何してくれてんの!(笑)」
って笑いながら顔を見たら
……??
えっとー
うん
理解した。
「…こんにちは、鬼さん」
「もー、ノリ悪いぞー」
って、しょーちゃんが、
もっと怖がって!
と、また突拍子もないことを...。
「そんな可愛い鬼の『お面』つけてても、怖くないよ?」
「いやいや、そこはさ、ホラー映画主演俳優としてさ」
とかなんとか、
オレにマウントとった体勢で
可愛い鬼さんになったまま
可愛いお口を一生懸命動かして
「鬼からの要求」を突きつける。
なるほど
今日は節分。
そういう気分なのね。
じゃぁまぁ、それなら乗らないこともない。
「…っわぁ!お、おに!?」
と、スイッチ入れて応戦してみると
しょーちゃんはとっても楽しそうに
口元をむにむにして
そんな可愛いお口は全然怖くないのに
どうにか威厳を保とうとなんか色々言ってるけど
オレはいつその唇に食いついてやろうかと
そればっかり考えてる。
「…ってことらしいぞ!わかったかー!」
「……?」
なにやら演説をかまして
オレにわかったかって確認してくる。
「ってオイ、雅紀!俺の話聞いてた!?」
「あ、ごめん、きいてなかった」
「おいー!もー、じゃ、もっかい言うから聞いてね!」
と言ったしょーちゃんは
この世のものとも思えない
41歳の世間のモノサシでは
十分なオッサンからの発言とは
およそ思えないような
まさに、『鬼かわいい』ことをのたまった。
曰く
「今日は世間では『節分』だが、嵐ファンの子達は今日という日を『櫻葉の日』と称して楽しんでくれているようだ!であるならば、我ら本人たちも、その祝祭にあやかって盛り上がろうではないか!」
とのこと。
「なにをいってるの、しょーちゃん……」
「だから!櫻葉の日なの!盛り上がるの!」
「あー、そう、ね……。アナタってひとは...可愛いなぁ……」
心の声が
オレの心底の想いが
漏れてしまったよ。
「こら!鬼さんに向かって可愛いとは無礼者め!」
『鬼さん』って、自分で言っちゃってるよ。
そういうとこね。
「しょーちゃん鬼さん、そのキャラいつまで乗っけてるの?
オレはもうそろそろ形勢逆転するつもりだけど、覚悟はいい?」
って、覚悟なんかキメさせる前に
グイッと体を起こしてから
最近締まってちょっと軽くなったしょーちゃんを
ヒョイっと持ち上げてソファーへ降ろす。
「ちょーっ!雅紀!今日は俺が!」
って、小うるさく騒ぐしょーちゃん。
ソファーに座らせてから股の間に身体を入れ込んで、がっちり腰をホールドすれば立ち上がることはできない。
「オレが、なに?」
目を合わせたままお面をゆっくり外し
さっき置いたオレの小説の脇に。
そのままま有無を言わさず首筋に舌を這わせれば
「っん!」
って、可愛い反応を返してくれる。
そのまま耳たぶを食み
耳の裏から唇をおろし動脈に吸い付く。
遠慮なく白い肌を堪能していると
少しずつ息が上がって
体温も高まってくる可愛い人。
「…おい、んっ!ちょっ、と…ァっ、まてってぇ…」
かわいい声が溢れちゃって
全然抵抗になってないよ?
「ま、さき!まて……ッん!待ってって、ね…」
今日は諦めが悪いしょーちゃん。
いつもはもうすんなり降参して溶けてくれるのになぁ。
「ん…待たないけど、なに?」
って、ゆるゆるとしょーちゃんの中心がカタチを変え始めてるのを手で感じながら、しゃべらせる為に口へのキスはお預けに、おでこやまぶた、鼻先にキスを降らせながら聞いてみる。
「...ッん、だから、きょ、は、節分で…櫻葉の日、だから…ッ」
小さく喘ぎながらも一生懸命答えてくれる。
「うん、だから?」
「2人、とも、健康で…ずっと一緒にいられるようにって、そういうの…したかった」
あぁ
降参だ。
「……うん、そうだね。ずっと、一緒に、いよう」
全部聞いたからもう我慢は終わり。
「健康でいるためには、心身ともに幸せを感じるのがいちばんだよ」
だから
きょうも
これからも
ずーっと
大切に抱いてあげるね。
そのまま部屋着のスウェットと下着を一度におろして
勃ちあがってるしょーちゃんのソレを口に含んで。
「…アッ!」
って、この刺激を予想してなかったしょーちゃんは
いつもより高い声を出して
どうしても動いてしまう自分の腰を
オレの頭を引き寄せる手を
認められないというように唇を噛み締めていたから
右手をしょーちゃんの頬に添わせて
親指を口に入れた
「あっ、あっ…ハァッ!…アッ!」
口を閉じられなくて
オレの指を噛むわけにも行かなくて
開きっぱなしの口の端から
しょーちゃんの唾液が溢れてる。
「まさ、き…も、ダメ、だ、出る…から」
そんな言われたらなおのこと離せないよ。
しょーちゃんから溢れた唾液をぬぐって
潤滑油代わりに中心を扱けば
気持ちいい幸せを、もうすぐあげられる。
口淫しつつ右手を早めて
今度は左手の親指をしょーちゃんの口に突っ込む。
舌を優しく押し下げると
声を止める手だてを失った彼は
ほとんど喘ぎっぱなしで
「アッ…アァッ…ッハァッ!」
ほどなく
ひときわ高く鳴いて
オレの喉の奥に白濁を溢れさせた。
▂▂▂▂▂▂▂▂▂▂
「おーにーさん?」
「………」
「…ごめん、しょーちゃん」
「……」
あのあと、しょーちゃんに
信じられねー
俺がどうしたいかって言っただろ
ってか言わせたなら叶えろよ
首の後ろまでヨダレでつめてー
ベトベトで気持ちわりぃ
って散々怒られて。
そのまま拗ねて
寝室に駆け込み
丸くなってベッドに潜ってる。
オレはオレで
もちろん昂ったモノはあったから
もうちょいご機嫌とりをしたら
布団剥ぎ取って襲う算段をしている。
「ねぇ、しょーちゃん、そんなに鬼ごっこ、したかったの?」
「…だって。」
くぐもった声でポツポツと話してくれたのは
「……厄年で。そういうの別に気にしたりしないけど、なんかでも、今日って日を一緒に過ごせたタイミングだから、ふたりでしっかりやっていこうなって、そういうの、しようかなって。」
「ありがと。そんなふうに考えててくれてたんだね。」
丸く盛り上がった布団をぽんぽんと撫でると
「…大事な雅紀には、今年も元気で過ごして欲しいから…」
って、まだ顔は見せてくれないけど
それでも手を出してくれたから
しっかり握ってあげるんだ。
ふふ。
照れてる。
でも、ちゃんと伝えようって決めたことは、どんな風に予定外の状況になっても、絶対に余さず伝えてくれる。
仕事ですれ違っても、
…オレが我慢できなくて
しょーちゃんを襲っちゃっても。
「うん、十分気をつけるし、しょーちゃんがオレのそばに居てくれたら、それだけで満たされて元気いっぱいになれるから!」
「俺も。雅紀がいてくれたら、がんばれる。」
オレたちはいい大人で。
分別もあって。
色んな物事を背負ってる自覚があって。
でも、
どうしても手離したくない物には
どうしようもなく
大人げなく
執着してしまって。
だから、オレたちは離れられない。
これからもずっとね。
「うん、がんばれるね!しょーちゃんの恵方巻きと精力、もらっちゃったから、しばらく風邪も引かないね!」
って、
調子に乗ったのが間違いで。
「……っおまえ!言い方な!ふざけんな!」
って、蹴っ飛ばされたのは
いつものオレららしいじゃれ合いってことで。
結局しあわせなんだ、オレ。
おわり。