こんにちは

ぼく、栞吏ちゃん




「どうしたものか

どうしたものか

ほんでもなー」




カーペットに寝転がりながら

スマホで何かを調べているのは

おーねいちゃん





悩ましいおーねいちゃんの腕の間に

するりと顔を押し込んで

画面を覗いてみると

“楽天市場”





すると

次の瞬間



「うわっ可愛い!」






なになに?

何を見ているのかと尋ねると




「え?

栞吏ちゃんが間に入って来たから

可愛い言うたのよ」








商品が可愛いのではなくて



ぼくが可愛いだけじゃった









ほんでも

何かを調べているのじゃろう?

と尋ね直すと





おーねいちゃんは

もごもごもごと説明を始める





詰まる所



ゴールデンウィークに大阪へ行った時

りくろーおじさんのチーズケーキと

551の豚まんを買って帰りたかったが

とんでもない行列で諦めたこと





並ぶのは大変だから

「ネットで買えばええやん」




おーにいちゃんに言われた通り

ネットで見ているらしいのだが






「やっぱり止ーめた!」






そう言うと

スマホと交代して

ぼくのお腹をこちょこちょこちょ




お腹を触られてもくすぐったくはない




けれども

あまり長いと

つい脚が出てしまう






おーねいちゃんは

嬉しそうに「すんまへん」と謝ると

続ける





「行った先で食べたいと思う時に買うから

美味しいのよね」





買う事を止める言い訳だ







本当は今だって食べたいのだけれど



買わない理由





それは







宅配が届く事は苦手なのだ









日時指定をすれば

きちんと予定通りに届けてもらえる




インターホン越しに対応すれば

玄関の前に置いてもらえる




とても便利で有り難いのだけれど





おーねいちゃんにとっては

難儀なのだ











宅配が来る日は

洗濯は出来ない




今、一番苦手な家事は洗濯






洗濯機の設定を間違えていないか

洗濯洗剤は溢さずに入れられたか




取り出す時に

どこかに洗濯物が触れてしまっていないか




洗濯が終わっても




洗濯機のフィルターから水が溢れていないか

洗濯洗剤のボトルが倒れて溢れてしまっていないか




あれやこれやと考えている内に






「そもそも本当に洗濯したっけね?」






とにかく

心配を拭うための確認が多くて



洗濯が無事に終わるのか

何時間掛かるのか




自分でも分からない








洗濯ひとつとっても、こんな調子だから

時間指定をしていても

調子良く応対できるか分からない




だから




宅配が届く日は“大変な家事”はお休み





予め

洗濯を休んでも大丈夫そうな日を決めてから

宅配を指定する




とは言っても




玄関に出るのも

段ボールを片付けるのも

その後の手洗いも


一から十まで大事でしんどい





最近では専ら

ぼくのご飯を届けてもらうだけになった










ところで


今日

6月6日は

ぼくたちの家族になった記念日





そして

“家族だんらんの日”





大阪読売テレビの人気番組

“大阪ほんわかテレビ”が制定した記念日



社会的場面でのストレスが多い現代に

家庭はホッと出来る、充電出来る場所として

家族の姿を見つめ直そうという日のようだ



おーねいちゃんは

調べた内容をそのままに

言って聞かせてくれる








7年前の今日

育てのお母さんに連れられて来た
 





ぼくには

おーねいちゃんとおーにいちゃんが出来





そして

弟になった








3歳だったぼくは

今年、10歳になった







毎日大体同じ

特別な事はないけれど




代わり映えのない生活は

嫌いではない




 


ぼくは野良猫として

脚が一本失われた状態で保護された






「一生分以上の怖いも

痛いも経験してきたのやね


これからは全部守ってあげるよ

後の人生はいっこも怖い事ないよ」





おーねいちゃんは

前に約束した通り




ぼくの歩む道が

平坦であるように




歩きやすいように




幸せであるように





その“責務”を全うするのだと

鬼滅の刃、煉獄杏寿郎ばりに

大きく笑っている










記念日に合わせて

ぼくのパネルと新しい爪とぎを

新調してくれる




業者さんによっては

日時指定は出来なくて

とても困るのだけれど




こういう時は

おーにいちゃんに協力してもらっている







営業所止にしてもらい

ふたりで受け取りに行く









気持ちは何時だって杏寿郎




だけれど




実際には

おーにいちゃんに手伝ってもらいながら

何とかかんとか







ぼくたちは

3人でやっとこ家族なのだ










「栞吏ちゃん大好きもん

ずっと一緒にいようよ」










返事をしないぼくの顔を

おーねいちゃんは覗き込む




そして




6月にホットカーペットをつけている人なんて

誰もいないのだと断ってから








「おーにいちゃんには内緒よ

内緒じゃよ」









おーねいちゃんは

今日も今日とて







やはり













猫可愛がり




次もその次の卯年も一緒にいようよ、栞吏ちゃん大好きもん!