赤い波が、風にゆれてなびく。 風に遊ばれて毛先が、彼の顔にかかり、彼はそれを気怠そうに手櫛をかけながら押さえつける。 そんな彼の、本当に些細な動きですら、目の端で追ってしまう自分に、内心苦笑してしまう。
「風が強いな」
「ええ…しかし、いい風ですよ」
「お前にとっては、いい風かもしれないが、私には少し鬱陶しい」
そう言いながら、彼は押さえていた手を少し滑らせて、毛先をつまむと、自分の髪に目を落とした。
「最近暑くなってきた事だし…髪、切ろうかな。」
空いている片方の手でハサミを作り、動きを真似をしながら、独り言の様にぽつりと呟く彼の目は、自分の世界を見ているのか、何処かぼんやりとしている。
その目は、ただ毛先を見つめるだけで、横にいる自分の存在など気にも止めていないようだった。
まるで自分など存在しないかのように。
そう感じた途端に、胸でぱちんと音がしたのと同時に、彼が驚いたように顔を上げた。
音が彼にも聞こえたのかと思ったが、彼の目線が少し下がって毛先を遊んでいた手に移ると、彼が驚いた訳がわかったと同時に、自分をはっとさせた。
彼が驚いた理由は、私が彼の手首を掴んでいた…からだった。
自分の予期せぬ行動に言葉が出ないまま、ゆっくり無言の時間が流れていたが、彼が躊躇うような表情を見せながら、ゆっくり口を開いた。
「その…なんだ。良かったら手首、離してくれないか…少し痛い」
その言葉に、自分が思った以上に力を込めて手首を掴んでいた事に気がついた。
しかし、この手を離したら、彼はまた自分の世界に戻ってしまう気がして、彼の要望に応える気はわかなかった。
ただ、痛いのは嫌だろうと思い、とりあえず力を緩める。
それに眉をひそめながらも、どこかほっとした表情になった彼と再び目がぶつかる。
動こうとする唇に、彼から再び同じ要望が帰ってくると思ったので、それを制止するように空いている手の人差し指を彼の顔の中心に立てた。
「離せません」
「は?」
「聞こえませんでしたか?離せないと言ったんですよ。」
「なんで…」
そう言う、彼の髪に手を移動させると
彼の体がびくりと反応した。
私は気にせずに、彼の柔らかい神をゆるゆると撫でた。
彼が、自分の世界に戻ってしまうのも、嫌だったと思ったが
彼のこの美しい髪を切られるのも、酷く寂しく嫌だと感じたので、彼と取り引きをする事にした。
「髪を切らないと約束したら、手を離します。約束してくれるまでは、何が何でもはなしませんよ。」
訳がわからないと言った表情の彼は、しばらく私の目をみつめていたが
まぶたを伏せ、大きくため息をつくと、わかったと諦めたように小さく言った。
それを聞いて、とっぷりと安心感と満足感を感じた私は、髪に触れたまま、手首から手を少し離し、そのまま彼の指に自分の指を絡める。
「…お、おい!約束とちがう」
彼の、弱く焦ったように非難の言葉が耳に落ちる。
「何を言っているんですか…約束は守りましたよ?」
「この状態で、どう約束を守ったんだ!?」
「手首から…手は離しましたから」
風で彼の髪が、彼の顔を隠したが、その色は赤だった。
だ、騙したなと声が聞こえたが知らない振りをした。
***
文字にするの久々すぎて、なんか色々ひどい\(^O^)/
ついったの方で出だしうpしてましたが、あんまりチラ裏で、TL汚しなのでこちらにうp。
某司祭様のキャラが完全につかめていないのか、かなり似非臭いんだぜ!
教祖の髪を抑える仕草が書きたかったんだ・・・