男:ごめんください!

主婦:えっと…どなたで…?

男:すみません!玄関からお声かけさせていただくべきところ、お庭の方からお声かけしてしまって!

婦:えっと…ご用件は…?

男:線香をあげさせていただきたいんですが!

婦:何か勘違いされてるようですけど…

男:やだなぁ!たまたま通りかかって不審に思うのはわかりますけど、ちゃんと見えたからお声かけしたんですよ!

婦:線香をあげるようなことは特にないんですけど…

男:いやいや、今上げてるじゃないですか!それですよ、それ!

婦:え?あっこれ?これは蚊取り線香で線香をあげてるわけじゃないですよ?

男:僕マイ線香持ち歩いてるんですよ!ほら!

婦:それ歌も有名なまっすぐなやつ…

男:君が見た光、僕が見た希望です!

婦:この蚊取り線香は去年の残りでね、最近あったかくなってきて蚊が飛んでるなぁって思ってつけてるのよ。

男:線香あげさせてください!

婦:人の話聞けよ!

男:お願いします!一本でいいので!あげたらすぐ帰りますから!

婦:お仕事は何されてる方?お住まいは?御結婚はなさってるの?普段どういう生活を…

男:あのぉ〜プライベートなことはちょっと…

婦:そちらはこちらのプライベートエリアに入ってこようとしてるじゃない!

男:一本でいいんです!お願いします!

婦:もう…どういうことなの?どういう日なのよ今日は。なんなの?

男:お願いします!

婦:じゃあ…この缶の中に差してもらって…

男:かたじけないです!ふれあいの心です!あっマイライターあります!

婦:はぁ…

男:………………………。

婦:手を合わせるのは何で?何に手を合わせてるの?蚊取り線香の缶よ?

男:ありがとうございました!お庭からすみませんでした!良かったら一本差し上げます!いやぁ良い1日になりました!それでは失礼します!

婦:ちょっと!一本もらっても使わないわよ!折れちゃうわよー!