トンネル内通過します・・・

子:うわぁぁ真っ暗だ!!

男:静かにしてなさい!!

女:元気な子ですねぇ

男:いやいや、もうやんちゃ坊主で。このトンネル長いんですよね。

女:長いですね。10分くらいかかりますからね。

男:どこへ行かれるんですか?

女:ちょうど次の駅が私の実家の最寄りなんです。久しぶりに里帰りしようと思って。

男:トンネルを抜けたらすぐですね。

子:まだ先が見えないね!!まるで誰かさんのお腹みたいに真っ黒だ!!

男:誰かさんて誰だよ!?

女:ウフフフフ

男:すいません、騒がしくて。

女:いいじゃないですか。誰のお腹が真っ黒なの?

子:ママといつも一緒にいる男の人だよ!!

男:そういうことをでかい声で言うんじゃない!!

女:親子ではないんですか?

男:えぇなんでも家出したらしくて。うちで面倒みてるんです。

女:勇敢なのね。

子:もともと戦士の家系だからね。

男:変なこと言うんじゃないよ。

女:面白い子ですね。今日はどちらへ?

男:私の実家も次の駅が最寄りでして、海にでも行こうかと。

子:今時海なんて古くさいよ。

女:そうねぇ。塩くさいものね。

子:しょっぱいものは嫌いだよ。

男:なんでも甘いのがいいって言うんですよ。

女:まあ!甘いもの食べたってあなたはもう世のためにならないのよ。

男:怖いこと言いますね!!

子:甘くないと美味しく感じないんだ。

男:困った奴です。

女:ウフフ、そろそろ出口が見えてきましたね。

男:長いですね。いつ来ても怖いと思いますが、今日は話をしていたので楽しかったです。

子:どんな人の頭だったらあの出口くらい輝くかなぁ。

男:コラッ!

女:つや出しワックスをかけても無理ねぇ。

男:無理に話合わせなくていいですよ。

子:出口だ!!眩し~~い!!やっひょい!!アイツの頭みたいだ。

女:アイツって?

子:いつもママと一緒にいる人!!

男:そういうことでかい声で・・・あれ?














トンネルの向こう側で目を眩ませた男の両隣には誰もいなかった。

いたはずの・・・

子もいなかった・・・

果たして女性はいつから隣に座っていたのだろう。