「クリーンなカジノ」。日本でのカジノ解禁に熱心な安倍晋三首相が口にし、話題になっている。
逆の意味を持つ言葉、矛盾した言葉をくっつける表現を対義結合や撞着(どうちゃく)語法という。
強い印象を与えることを狙う広告の世界でよく見かける。
コーヒー飲料のCMで流れる「このろくでもない、すばらしき世界」は代表例だろう。うならせる文句だ。
「クリーンなカジノ」はどうか? ひねりはなく、シャレもきいていない。
両立しない概念、あり得ない世界を国策として語る苦しさ、後ろめたさがうかがえる。
やはり日本にカジノは不要だという思いを強くする。
「クリーンなカジノ」はわかりやすくて見抜けるものの、「自由で柔軟な働き方であるフリーランスの推進」はくせものだ。
フリーランスとは、企業が発注した業務を請け負う個人事業主である。
経済産業省が大臣を筆頭に昨年から唱え始めた。
情報技術の発達などで時間や場所にとらわれない働き方が増えてきたことが背景だという。
「自分のやりたい仕事が選べる」「職場のわずらわしい人間関係から解放される」といった利点はある。
だが、雇用関係にある社員に比べ、その立場は格段に厳しい。
期日までにいくらで仕事を終わらせるという契約なので、定時や時間外の考え方が存在せず、土日もない。
労働基準法の対象外である。 「一人下請け」と言った方がいい。
病気やケガでも有給休暇はとれない。
健康保険や年金の保険料は全額を自己負担する。 福利厚生とも無縁だ。
裏返せば、会社はさまざまな労務管理の手間、そこに必要な人員や機能、多くの費用を省ける。
効率的な経営を進められるのだ。
米国でフリーランスが労働力人口の3割を超える5500万人に達しているのは、会社側の都合優先の結果なのだろう。
「そろそろフリーランスでやってみないか」。
エンジニアなどの専門職社員が、ある程度の年齢になると打診されることがあるらしい。
甘いささやきの先に待つのは、非正規の社員よりも劣悪で不安定な将来ではないか。
何年か後には契約を打ち切られ、使い捨てにされるかもしれない。
なぜ、そんな世界を世の中に広めたがるのか。
対義結合にこんな例を見つけた。 「誠実な政治家」。 笑えない話である。