1990年、スズキ70周年記念車として販売されたVX800。

ちょうど33才とはいえ機械モノ。身体中不具合と劣化が深刻な66才の乗り手よりは長持ちするだろうと思っていた。

しかし、先日ディスクローターを交換しブレーキキャリパーをOHした時は生き残れるかヒヤヒヤものだった。

既にキャリパーピストンもローターも廃版となっているが、キャリパーシールだけは統一品番となって未だ残っており、ローターは英国EBCから入手でき、何とかサバイバルできた。

スズキVX800 Continental+EBC |  (ameblo.jp)

 

今回は電気系の治療話。ご照覧あれ。

先月は騎西城まで足を延ばしたが、帰路、突然エンジンがボコつきはじめ 急に回転が上がらなくなった。 それに70㌔以上出すと異音が大きくなる。

関越自動車道を走行中の事なのだが、9年前 場所も同じ関越自動車道でエンジンが爆発した(曲がったコンロッドがシリンダー壁を突き破った)悪夢のような記憶が頭をよぎった。

その時は、勿論メーカーで廃版のクランクケースをドナーの中古廃車から入手し、訪ねたアチコチ修理工場に断られ続けながらも、恵比寿GOODSPEEDさんに救われ延命できたのだった。

 

一旦 路肩に止めてから、バッテリーのターミナルやプラグキャップの接触など点検しセルを掛けるとアイドリングは問題なさそう。

恐るおそる空部ぶかしで回転を上げると、上は苦しい感じだがマフラーから煙も出ていないので焼付きやオイル上がり等でもないだろう。

仕方なしに路肩を60㌔程度で流して次のICで降りた。その後、エンジンに負担を掛けないよう、だましだまし命からがら帰宅し翌日いろいろと点検。

前シリンダ側プラグが後シリンダ側に比べて変だ..前回のメンテで前より後ろがヤケていたのでキャブレーション調整して前は薄くしたハズ、タペットも正常範囲なのに? ..だとすると点火系。

スズキのトラブルシューティングマニュアルで①スパークプラグ、②イグニッションコイル③イグナイタ、以下スイッチやワイヤーハーネス..となるので、勿論プラグとプラグコードは交換した。コイルはテスター当てても(プロにはテスター位で分かるか?なんて言われそうだが)問題なさそう。

それにしても、VXのコードは前が約70cm(後35cm)もある。今まで低抵抗とうたい文句の内部がスパイラル上の巻線タイプのものを使っていたが、うたい文句はあくまでノイズ防止性能が十分ある上での低抵抗、実抵抗はメートル当り約1KΩも。

実際に計るとフロント用(長い方)が600Ω、

リヤ用(短い方)は200Ω。

もしかしたら、このプラグコードの長さが、前後シリンダーのプラグ焼け方が違う一因だったかも知れない。

以前アメリカ製のプラグキャップ付きコードをバラした時に分かった事だが、プラグコード自体に抵抗があるので、キャップ自体は0Ω、つまり抵抗が入っておらずにコードでノイズや逆起電力を防ぐからイイ、と言う考えだったのだろう。

国産の大メーカーで出しているキャップとコードが一緒になっているアフターマーケット製品は、律儀にもプラグに抵抗が入ってコード自体にも抵抗があるものだ。

(流石に我が日本人は建前をよく守る)

導体は、上の写真のように極細のステン系材質の巻線だが、これだけ抵抗があっては前後シリンダーでコードの長さが異なるVXには向いていない..事を(今更、恥ずかしながら)気付いた次第。

だから、メーカーオリジナル即ちスズキ純正は、普通の0Ω銅芯コードだったのか!

それならプラグキャップ ~ コイル間の抵抗は同じに揃うリクツだ。

 

また念のため、キルスイッチも分解清掃。大昔、レース中に回転不具合を感じた とあるロードレーサーが自分でキルスイッチコードを引きちぎり直結、再スタートして入賞した話を思い出したからだが、私のVXは問題ない位キレイだった。

しかし手間どってしまったのは、分解作業中に直径2㍉程度のポイントボールを落としてしまったからだ。

スイッチ内部には上下と左右方向2か所、即ち、ON/OFFの操作釦の位置固定と接点の圧着のため、それぞれスプリングが使われていてるのだが、片方に操作釦がスムースに動かし且つ操作後にピッチリ位置を固定するためスプリング先端にボール玉がついているのだ。

空中サーカスよろしくハンドルからコードがぶらぶらしてバラした状態ではチョットしたことで小さなタマなど落ちてしまう。

結果、オモチャ用パーツのなかから、ひとつ使えそうなベアリングを破壊してその玉を流用した。冷や汗モノだが、接点スイッチとはいってもマイクロSWみたいに圧しつけられてるだけあって接触抵抗”0”に敬意を表し、構造に文句は言うまい。

 

そういえば、一度も換えてないイグナイタは電解コンデンサが使われてる話を思い出した。

某メーカーで働いていた時、8~10年程度でのインバータユニット更新は高額なビジネスになっていたが、その時の理由がコンデンサ等の基盤素子の寿命だった。

私のVXに限ったハナシではないが旧車の電気部品は、勿論メーカーは対応しないのでユーザーの責任で色々ヤル事になる。

早速ネットで探すと近所に持込歓迎と云う ”スマートまっくす” なる会社があったので訪ねてみた。

残念なことに宣伝は宣伝、”はんだ付け作業もプロに..” ではなく、”はんだ付け作業の代行”だけ、だと言う。

つまり、「自分でケースを開けて部品を手配し、どこをどう交換するのか書いた指示書と一緒にお持ち下さい。」と云うものだ。

そんなコトなら自分でやるワイ!とマイナスドライバーでケースをこじ開け、秋葉のラヂオデパートに向かった。

以前、スロットカーのパーツを探していた時、確かここの2階で親切なオヤジさんにコンデンサの事を詳しく聞いたからだ。

ホットメルト?(ゴム系セメダインのような質感)をナイフで削るとコンデンサが頭を出した。

今回、その方はおらず対応してくれたのは、多分?女子大生やJKと言っても違和感ない若い女性だが、失礼乍ら知識もあって信頼できた。

曰く、16Vはもうメーカーで出してないから50V用を使って下さいとの事。今回は電解コンデンサのみ交換するつもりだが 耐熱温度は 85⇒105℃にUPして買い揃えた(費用約200円)。

古いコンデンサを外した後はピンバイスで0.12㍉の穴を皿ってから新しいのを挿入した。

コンデンサを交換後、念のため無溶剤シリコン系接着剤でカバー、プリント部はソルダーレジストで補修

忘備にイグナイタ修理日を書いておいたが、乗り手よりも長持するのかなぁ..

イグナイタの修理後の試走では中速以上に回転上げても問題起きなかった。

低速も何だか力強くなったような気がする。

まぁ、始動性の悪さはあまり変わらないが、以前、キャブを開けた時ニードルに摩耗が見られたから今後対策すべきかも。

あぁ、ビンテージバイクの悩みは尽きない..。