来月末のイベント計画<<レッドライン7000>>は10月29日於バンプロ

シャーシ制作は60年代当時の白金レースウェイ、デイトナクラブレースがイメージの源泉、半世紀前のシャーシがコーチワークのベース。

白金と言えばかって東洋一のハイスピード+バンクコースのイメージだが、熱気あふれるクリヤボディのレースに比べ、当時でもプラボディのストックカーは景色がゆっくり流れ、その分リラックスしてドリフトも楽しめたものだ。今回もガンガンリスキーに突っ走れるコースでない事に、逆にホッとしてしまうのは、我が身の老いの象徴だろうか。

だが、元々実車の3~4倍ものスケールスピードを誇るスロットカー、もはや目の回る絶対スピードの追求しなくても十分スリリング。よりホビーとしてのテイストや操作のフィードバックを求めるのもいいだろう。

 

操作のフィードバックと言えば実車では背中や尻に感じるGや車体姿勢の変化、スロットルコントロールに対するキックバックやスライド、車体の傾きやドリフト感覚だろう。

今回、絶対的スケールスピードよりテイストを..とは言え、誰しもニチモのスリッピーなホームコース等のドリフトだけでは物足りない。また、最近仕上り良くなったとは言え1/32では実感も感動も薄く、もっとゼイタクに楽しみたい。

そこで出番となるのが、大型車体の 1/24-25スケールのアメリカンストックカー

コイツは車体のロールやドリフトも実感的で楽しいが、高速大Rの”バンク”も良く似合う。

 

スロットカーも、最初の頃は営業コースでもヨーロピアンな加減速忙しいレイアウトばかり。

短い直線と連続するコーナーの組合せで本格的なバンクコースは見なかった。

(いくらかでも走りやすいように、わずかなカントや上り勾配程度のコースはあった)

1965年オープンした、東京タワーサーキットにはコントロールボックスのメインストレート先はバンク要素が取り入れられていた。

15度の角度は半端なようだが400Rと緩いカーブなので、バンクに入りさえすれば先のコーナー前まで全開でイケる。

東京タワーサーキット<スロットカーがモデルカーレーシングだった頃> 

対して、翌66年にオープンした白金レースウェイは倍以上ある17Mものメインストレートからのバンクだ。

大昔の話で理解頂けない方もおられるだろうが、白金のバンクは実車の富士スピードウェイより大きく立っていて(38度)タワーのバンクより回り込んでいる(320R)。

白金レースウェイ<スロットカーがモデルカーレーシングだった頃

もしバンク途中でノロノロ走ろうものなら(ゴムタイヤは現在のスポンジタイヤのようにはグリップしないので)蟻地獄のすり鉢のようにズルズルとバンクからズリ下がってしまいインコースエプロンのさらに下のシューター穴に入り込み、くぐり穴から自分のスロットカーを拾い上げる事となったものだ。

勿論、ストレートから全開のままでは’67年日本GP ブルーボンネットのゼッケン7=酒井選手のカレラ6のようにバンクを飛び出してしまい、大クラッシュ!

 

..興奮と恐怖、緊張とアドレナリン全開の快感がクセになる白金レースウェイは最早ないのだから、残念ながら心配はいらない。

白金の場合は、ロングストレートをぶっ飛ばして心臓バクバクさせながらバンクに入り、わずかなスピードコントロール(と言うよりガイドシュー先端が抜けないよう一瞬のパワーオフで前方荷重を増やすだけ)の後、すぐまた全開。

そんなバンクから抜けるとイヤが応でも更にスピードがのってしまう下りストレート

そしてその先は、とにかくフルブレーキング!のコースで一番キツいヘアピン

ここを曲がり損ねてコースアウトすると、1M通路をジャンプで飛越して半周先のループコースに着地?するか、ボディを割るようなクラッシュとなる..。

*(;^^)*

実際、ダウンフォース無しハイスピード時代はボディを真っ二つに割るようなクラッシュもあったが、平成ならぬ昭和JUMPや派手なアクシデントもレイワの時代には合わないだろうし(このトシになると)期待もしたくない。

賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶと言うが、当時の幼い自分が学んだのはチャレンジとその結果だ。経験、それも失敗は多くの教訓を与えてくれる。キレイに言えば、トライ&エラー、PDCA、KAIZEN..の繰返しだが、たとえ理解しているつもりでも、趣味的に考察するのも悪くないだろう。

 

先ずはフラットなコーナーへの進入。白金のヘアピンカーブを想定できれば良い。

下図の通り、突込みにおいては即ちガイドシューが角速度(単位時間毎の回転する角度)が与えられる初期なので、遠心力Cf1<慣性力If1であるのは言うまでもない。

上図でCf1とIf1の両方が”突込み”の時にシャーシにかかる力であり”F1”で表せられる。

つまり、もしもこの時ガイドが抜ければベクトルの和であるF1の力がかかる方向に車体は進もうとすることになる。

そのフォースのかかる位置は、有効ホイルベース(ガイド支点から重心センター)が長ければ実距離が増える。単純に言えばショートホイルベースがクイックに、ロングホイルベースはその分ワンテンポ遅れてフォースを受ける訳だが、その長短だけで向き変えがしやすくなるものではない。

 

次のまた、概してタテマエの好きな日本人は、幾何学的に図に書くとそれで満足してしまいがちだが、”ツッコミ”と一定のRをキレイにこなす”コーナーリング”は、当り前だが別の事象。

”ツッコミ”あとのコーナーリング中にかかる力を描き分けると次のようになる。Cf2とIf2が前図と違うバランスになる。

重心点からかかる力、即ち実質ガイドと後輪が受けているその反力がグリップの限界からほゞF1≒F2である時、If1 > If2、Cf1<Cf2であるのは言うまでもないが、感覚的にもご理解頂ければ幸いだ。

厳密には、コレクターガイド支点と前輪軸間の問題もあるが、物事先ずは単純化からとし、前輪はシステムの一部としての作用を後述することとし*、ガイド支点は有効ホイルベースの位置設定として考えれば良いと思う。

一見、ヘッドヘビーの方がスロットへの追従性が良いように思えるが、そのマスの分だけ遠心力も前方に掛かるので”ツッコミ”の一瞬はテールヘビー車に分がある。

逆に一定速のコーナーリング中はテールヘビー車の方がガイド側より後輪にかかるフォースが大きくなるのでシリを振りやすくなる。

ではガイド周辺に重心を持っていけばテールスライドしにくくなると思えてしまうが、遠心力Cfがかかるので、そのフォースに耐えられなくなるとガイドから外側に外れることになる。

 

話は逸れるが、私の時代の二輪車コントロール、ライテクでは良く”リヤステア”が感覚的に言われていた。実際、路面のグリップもアベレージスピードも段違いのサーキットを走り込むと、フロントより太くガッシリした後輪が傾くことでグイグイ旋廻していく感じがシリの下から伝わってくる。

しかしまた、同時に車種によるハンドリングの違いでインプレされるものが”回頭性”。

そう、”回頭性”と言えば、軽いフロントと重いフロント、どっちが素早く向きを変えやすいか分かりやすい。スロットカーのガイドシューもしかりだ。

勿論、テールヘビー車がツッコミで一瞬のアドバンテージがあったとしても、後方のイナーシャはヘッドヘビー車より大きくテールを振らせてしまうし、限度を越せばアタマ(ガイド)はミゾに残ってたのにスリップしたリヤから”引っぱられるように”コースアウトしてしまうことになる。

ここで、レバーを廻して推進力を与えればドリフトが止まり前に進む..なんてライテク本ならぬ昔のスロットマニア本は宣うが、実際はそうはいかない。

テールスライド中、即ちリヤタイヤをブレークさせている程の遠心力を上回る推進力などレバー全開にしたって与えられるものではない、と言うよりも、ゴムタイヤがグリップを発生させる原理を無視しているから、空想的な理屈がでてくるのだろう。

勿論、テールスライド中にコントローラーのレバー操作で、一定のドリフトを維持するのはスロットカーの醍醐味でもある。唯、円周方向の角速度Afを上回る推進力Pfが与えられると蛇行の原因**やイン側へのコースアウト***を引き起こすこともある。

何でも実際に手で触れると実感できるが、例えば自転車の前輪を取り外して左右シャフト先っぽをつかんで車輪を回すとジャイロ効果が大変良く理解できる。

少しリーンさせただけでタイヤが横に回り込もうとし回転が速いと手で押さえているのも大変力がいるし、無理に抑え込むと暴れ出す程。<特に勢いがついてると危険なので、もし実験される時はご注意されたし

四輪の実車で失敗してスリップアウトしても直ぐにケガするとは限らない、だけでなく身にも付かないからバイクでやると(或いは、ケガしたくなければ想像すると)良い。

例えばダート路面のブレーキングでロック寸前まで締め上げたまま曲がろうとすると、タイヤは全く横方向へのグリップを忘れスリップダウンしてしまう。 これはゴムのグリップ力をブレーキング=タテ方向の減速側に使っているからで、スリップした状態からブレーキを開放すると前後方向への抵抗もグリップも必要なくなり横方向へのグリップを途端に回復する(が、後述のハイサイドを引き起こす事もあるので要注意)

もし逆説的な回りくどい話と感じられたら申し訳ないが、例えば、コーナーリング中に”急加/減速”をすると横滑りをする、と言った方が分かり易いだろうか。

遠心力に負けまいと頑張っていた横方向のタイヤのグリップが縦方向の負荷により滑ってしまうのだ**** それゆえ特に二輪ではコーナーリング中のギヤ変速は厳禁がセオリーだが、逆に言うとバンク角にも余裕ある時で大きなショックさえ与えなければギヤチェンジもOK。

大昔の小排気量レーサーのギヤが十数段あったのは、そんな昔のスター達の老練テクニックを見越してのものだったろう。

 

話が逸れてしまったが、実車でもスリップしたらブレーキ操作でも加速でもなく、アクセルを戻し軽いエンブレ程度で収まる..と教習所でも教えたられたはずだ。

スロットカーも同じでテールが流れ出した時に弱いパワーオンによる推進力はある程度期待できる。

勿論、実車で急操作はアウトだが、スロットカーは素早い操作が求められる。冒頭記した通り、スケールスピードは実車の数倍ゆえ、集中力が必要だ。

その動きは頭で分析するより、低速で滑りやすい、例えばゴムタイヤを履いてのニチモホームコースのドリフトコントロールが分かりやすい。要はグリップを探りながらのパワーオンなのだが、上手くいけばコーナー前半で向き変えして、コーナー後半でヨコに逃げずに前に推進力が与えられるとキレイで効率的なコーナーリングとなる。

 

大昔、限界を超えたところを少しづつカウンターを当てて高いコーナーリングスピードを維持する高橋国光選手が田中健次郎(元日産コーチ)に絶賛されていたが、それとは対照的な、前半でクルッとスライドさせ向きを変えて直線的に立ち上がろうとする北野元選手の理想に、ガイドシューの存在あるスロットカーの場合は近いのかも知れない。

25年位前だろうか、北野元選手の経営される二輪タイヤショップ”ウルフ”でのスナップ、

左端は2代目のスズキVX800。JapanJack92でアタマを取り十万キロオーバーを走った相棒だった

 

n.B. >>

*(;^^)*  

  ブレーキングはマイクロスイッチによる回路ショートでも直前の回転数が半端ないため、それなりに回生抵抗が効く。それでも足らず、さらに今では禁止されている逆電ブレーキが必須だった。 

  現在のガングリップ型コントローラーが指を離せば回路ショートによる回生抵抗ブレーキが効くと分かっているが、私には半テンポ遅れる。

そんなコトやっていたら手根管症候群になりかねない。

  いまでもAYKGOSENのマイクロSW付アナログコントローラーが手放せないのはそのためだ。

 

* 勿論、前輪にも遠心力はかかるし内輪が浮くこともある。だが初期においては両輪接地しているため左右連結の場合はテールスライドを抑制する。逆に前輪独立は即ちフリーなのでクルッと回り込むような動きを見せる。

  つまりツッコミの一瞬は独立タイプ、その後の安定性は連結タイプに分がある、と言うのが私の結論。

  これらの違いはコーナーだけでなくストレートでも見られ、連結タイプより独立タイプの方が低抵抗な分、僅かだがスピードのノリも早い。

** コーナー立上りの場合、例えば白金の最終右コーナーでテールを(左外側に)振り過ぎて直線に入ると、1~2m後その反動でテールを逆(右)に振ってしまう。

  レバーをやや戻せば収まるが、もしそのまま全開を続けると、その直後また反動で左に、つまり左右に蛇行し、結果としてスピードが乗らなくなってしまう。

*** ソフトでハイグリップなスポンジタイヤの場合、急加速+急グリップがガイドをイン側に押上げてウィリー状態でイン側にコースアウト。現在の小径ローターのモーター+ブラックマジックタイヤやビンテージカー+シリコンタイヤでは、先ずない事だが..。

****バイクはステアリングでなく車体をリーンさせることで曲がっているので、”ハイサイド”状態になりかねない。

  例えば、コーナーリング中にアクセルを開けすぎ(たりブレーキングが強すぎ)後輪が滑る →あわててスロットルを戻す→グリップ回復 →車体が起き上がろうとする力が急に働く →車体がリーンさせている方向と反対側に振られてしまう →その反力でまた元の方向へ車体が戻ろうとする →を繰り返し、まるでロデオみたいに左右に激しく振られてしまう状態。

  正直、こうなってしまうと(振り落とされないようハンドルにしがみついた状態)、例えば左右に振られているハンドルをまっ直ぐにしようとするとフレが車体側にくるし、力を抜くともっとフレがヒドクなるので、人間ダンパーに徹するしかない。(両足で車体を挟み、ハンドルのフレを徐々に小さくしてやる..)といっても、よほどトレーニングしたプロでない限り天任せの運になってしまう。

何もサーキット上のロードレーサーでなくてもハイサイドは起こる!

市販車で一般公道でも、滑りやすい新品タイヤの時は要注意!

上記、北野さんのアドバイス。

 

さて、次回はセッティングによる操作と車体の動きの違いについて。

オール関東レースに臨んだ懐かしきフィードバックなど述べてみたい。