スロットカー黎明期、’60年代の一時、電関モーターが流行った時期があった。

<60sスロットカー考察>電関モーター | VXのブログ (ameblo.jp)

 

国内では、葉巻型のフォーミュラとグループ5,6,7相当のGTカーしかキットがなかった頃、電関モーターは、重いがトルクが強かったので、1/25モノグラム、AMTやJOHANなど輸入モノのプラボディ用に使われ始めたのだった。

その大型の車体=アメリカンストックカーは、走らせる手応えや迫力あるドリフトコントロールがマニアにうけて流行り出した。

1966年は、多くのアメリカン実車が優美なコークボトルラインにモデルチェンジされる年でもあり、それが66年後半から67年に販売されるプラモの売上までも増やしただろうことは容易に想像できる。

その人気が、のちに国産プラモメーカーからこのジャンルが販売されるきっかけとなったのだが、最初にハセガワがビュイックをキット化し、次いで田宮がダイキャストSWシャーシのロングホイルベース版でプリマスを出したと記憶している。そんな誰でも作れるキットモデルが出る前、電関モーターの大型車は当時のスロット少年達にとっての憧れでもあった。

 

元が電関用モーターとは言え、HOゲージマンマでなくスロットカー用に回転が上がるようリファインされていて、型式通称、棒型モーター(タテ型)と、同軸モーター(左右両方出力軸あるもの)など複数のバリエーションが存在した。

*上の写真内記事うちDV-18-DとあるのはEの間違いと思える。実際KTMにはいくつかバリエーションがあり 18Cや18Dはコアが薄く、Cタイプを1/32に使う方もいたが1センチもないスリムな物でスロットカー向きでなく、マグネットとコアの最も厚い(従って重量もあるがトルクが強い)18E型がスロットカーに向いていた

 

さて、私が東京タワーのサーキットに次に良く通った白金レースウェイは、都内のサーキット場としては比較的後発の66年1月にOPENしただけあって、その後、約20年間は東洋一長いサーキットだった。

白金レースウェイ<スロットカーがモデルカーレーシングだった頃> | VXのブログ (ameblo.jp)

当時住んでいた麻布からは都電で行く事ができ、最寄り停留所は「清正公前」だった。

記事の写真右下の停留所名が読めるだろうか..白金レースウェイはこの道路では奥の方で右側マンションの地下にあった。

白金レースウェイに行く時は、いつも途中の魚籃坂で電気機関車モデルメーカー、カツミ(KTM)を横目で眺めていた。自身まだ幼き頃は工作技術が稚拙であったため、自身で電関モーター用シャーシを作ることはなく遠く憧れてただけだったのだ。

麻布方面から一ノ橋、二ノ橋、三ノ橋、古川橋と行き**、その先がKTMのある「魚籃坂下」なのだが、都電から降りることはなかったのだが、ある日いざ、モーターを買って作るゾ!と、都バスに乗り込み(都電は68年廃止された)カツミ模型店を訪ねた時には、もうスロットカー用はなくなっていた。

** まっすぐ行くと魚籃坂下なのだが、右に行く(=渋谷、広尾方面に行く)バスでは四ノ橋で前回の記事と同名で同じく大変美味の「花すし」があった。

 

下の写真は、左がKTM、右がケムトロン。 前回ブログの通り、同軸タイプ電関モーターは他にも、モデル、宮沢模型などほゞ同寸で存在した。

見ての通り、出力側のメタルサイズ、ブラシホルダーの形状もネジ込みサイズも違う(中身のカーボンブラシの違いは0.2㎜程度)。

しかしながらマグネットもローターも同寸であり、当時も性能的には変わりないだろうされていたが、似ているがゆえに疑問なのは製造メーカーは違ったのだろうか? 

お互い真似て作ったのか、或いは同じ製作所で販売元ごとに若干仕様を変えていたのか..もし当時の経緯をご存じの方が居られたら、是非お伺いしたいところだ。

 

さて、下はケムトロンのもの。左右両軸受共にマウント穴があり(KTMは片側だけ)、使い勝手が良い。新品ながら当時の長期保管品なので、乾電池で動作確認してみたところ結構バイブレーションが感じられた。

私事学生時代、学芸員の単位を取るべく国立博物館館長をされていた教授の紹介で秋葉原にあった交通博物館の実習兼ねたバイトで、車輪のサビ落としをしたことがあった。よく、メンテの基本は掃除と言われるが、もう一つ、回転するものにはオイリングも重要だ。

今回も動作確認前にオイルを差したが、ん~なんだ..この振動は?

数少ない貴重なデッドストック、アタリハズレだからと捨てる訳にはいかないし、振動はプラのボディに響いて迫力ある音となるかも知れないが、決して好ましいものでない..そこでリスクはあったが思いきって分解した。

ローターのマスバランス調整、マグネットクリアランス調整、クリーニング等行なったところ、嫌な音や振動は消えスムースに回るようになった。

まぁマブチなんかに比べたら半分も廻る訳ではないが、五極電機子ならではの低回転からの安定したトルク、そして半世紀以上前の製品がレストアできた事は(自己満足でも)博物館の動態保存同様に重畳なことなのだ。