いわゆる従軍慰安婦問題について「最終的かつ不可逆的に解決する」ことで、日韓外相が合意しました。

この問題は、僕がアメリカに留学した90年代から外交問題化し、僕が在ワシントン日本大使館で法律顧問をしていた時には米裁判所で起された慰安婦訴訟を担当して米連邦最高裁まで争って勝訴するなど、自分でも深く関わってきた問題でした。

東アジア情勢のさらなる不安定化をもたらしかねない課題がようやく解決されたことに安堵するとともに、政治家になる前からこの問題に取り組んできた者としても、安倍総理や岸田外相はじめ外交当局のご努力に心から敬意を表します。

今回の合意の意義について僕なりの感想を一言。

日韓の請求権問題の法的責任については、50年前、朴槿恵大統領の父である朴正煕政権時に日韓基本条約とともに締結した日韓請求権・経済協力協定に明記されており、これらの条約・協定により両国間及び両国民の請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」ということは、国際法上は明らかです。

この協定に基づき、日本側は、朝鮮半島に残した数十億ドル分の資産に関する請求を放棄するとともに、当時の韓国の国家予算の2倍以上に当たる合計8億ドル(無償3億ドル、有償2億ドル、民間借款3億ドル)の供与や融資を行いました。

韓国政府はこの供与や融資を個々人に支給するよりも、むしろ韓国全体の経済基盤整備に使って韓国民全体に還元することを選び、「漢江の奇跡」と呼ばれる経済成長を成し遂げたのです。

このように条約上、つまり法的には「完全かつ最終的に」解決しているので、日本は法的責任は日韓基本条約・請求権協定などに基づいてすでに果たしているという枠組みは揺るぎありません。

今回の合意は、さらに心情的・道義的な対応として、元慰安婦事業に韓国が運営する基金に10億円を拠出する一方で、両国で、この問題が「最終的かつ不可逆的」な解決を確認することで、国際社会においても、この問題を再び蒸し返さないことを約束したものです。
法的責任とは別に、日本が国際社会においてさらに名誉ある地位を占めるために、なお拠出をすることは外交上の措置として十分ありうることであり、また、心からのおわびと反省という心情を伝えることも、和解に向けた努力として評価されて良いと思います。

外交に100対0の勝利はありませんが、今回の合意は、日韓基本条約締結50年の節目の年の最後に日韓関係改善のため、日本側がねばり強く未来志向の解決の道を開いたもので、僕は高く評価しています。

次の世代にこの問題を引き継がないようにするため、韓国の朴槿恵政権もしっかりと韓国国民に今回の合意の意義をしっかりと伝えることを期待しています。