メディアは怖い。

「朝日新聞に山下さんの憲法審査会での発言が載ってたよ」と教えていただいたので、「どうせロクな引用はされていないだろうな」と思いながら読んでみると、やっぱりロクな引用ではありませんでした。

記事の見出しは、「『押しつけ憲法』論争」。
民主党、公明党、共産党の現行憲法を評価する意見を紹介した後、

これに対し、自民党は、GHQが制定に関わったことを踏まえ、日本人の手で改正すべきだとした。
同党の山下貴司氏は、「GHQが草案を作成したという歴史的事実は憲法学の『いろは』だ」と反発。


などと引用されていました。

これだと、いかにも僕が「GHQが草案を作成した現行憲法は評価できないから改正すべき」とお決まりの単純な発言をしているように思えるよなぁ。
しかし、これは、発言の一部だけを記事の流れに都合よく引用したもの。
この種のメディアにはありがちな「発言のツマミ喰い」ですが、いざ喰らってみると嫌なものですね。

もともとこの発言は、安倍総理が憲法草案作成にGHQが関与したことを指摘したことについて、野党の議員から問題視する発言があったので、その発言に反論するため、

GHQが10日間で現憲法の草案を作成した歴史的事実は、著名な憲法学者の基本書にも記されている憲法学のイロハであり、この事実を指摘すること自体は不当なものではない。

と発言したものです。(下の写真は、そのことが書いてある超メジャーな憲法の教科書である芦部信喜東大名誉教授の本を示しているところです。)


僕の言いたかったことは、その続きの部分であり、

現行憲法が果たした意義については十分に認めるところであるが、現行憲法には、戦後70年間の国民の経験・英知が反映されていないので、現代を生きる国民の意思を反映させるべきだ。

というものだったのです。
この僕の発言は、発言部分の録画もあり、簡略版の議事録である「衆議院憲法審査会ニュース(H27.5.8 Vol.37)」6頁にもしっかり書いてあります。

「衆議院憲法審査会ニュース」
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/news-shinsa037.pdf/$File/news-shinsa037.pdf

僕の5分近い発言のほとんどは、この視点から述べています。
冒頭の発言に引き続く発言について、長くなりますが、「誤報」に近い「引用」による誤解を避けるために、議事録から引用します。

ただ、私は、さらに申し上げたいのは、今の日本国憲法は、これまで戦後70年を迎えようとする中で、(日本国憲法制定を審議した)帝国議会以外手を触れていないという事でございます。
戦後70年を迎えようとする日本国民の経験、英知が条項に反映されていないわけであります。
私は、戦後日本の自由主義や民主主義、そして平和主義の確立に果たした日本国憲法の意義は十分認めておりますし、高く評価しているものでありますけれども、やはり、今こそ現代に生きる日本国民の意思を憲法に反映させるべきではないかと考えております。


この発言に引き続いて、
・緊急事態条項の必要性
・被害者の権利や知的財産権の保護を新たに盛り込むべきこと
・自衛権の問題-憲法9条の解釈の限界を国民の前で徹底討論すべきこと
についてコメントした後、

私は、戦後日本の日本人の英知を信じておるものでございます。
その日本人が、やはり改正について、70年の英知を反映させるという趣旨から議論する。
そして必要があれば改正する。
このことをぜひ当審査会で審査会長のリードのもと実現していただきたいと思っております。


と結んだのでした。

僕は、GHQが10日間で憲法草案を作ったから、それだけで憲法改正すべきだとは思っていません、「押し付け憲法」と言ったこともありません。

憲法審査会でも述べたように、戦後日本の自由主義や民主主義、そして平和主義の確立に果たした日本国憲法の意義は高く評価すべきですし、「なぜGHQが10日間で憲法草案を作らなければならなかったか」については、歴史的な事情があるからです。

憲法審査会で取材していた記者は、僕の発言の趣旨は十分わかったはずですが、やっぱり記事の流れで「ツマミ喰い」をするのだなと改めて思い知りました。
メディアはこわいものですが、それに負けることなくしっかり発信していきたいと思います。

「発言部分インターネット録画」
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=44771&media_type=hb