4月27日(日)は私にとって関わりの深い各務原市と彦根市の両市にて市長選挙が執行された。各務原市長選挙では、現職の浅野健司氏が当選。一方の彦根市長選挙では、現職の和田ひろゆき氏が敗れ、田島一成氏が当選した。


 以下では「3,703票差の4選」、「845票差の大混戦」と題して両市の市長選挙を振り返りたいと思う。市長選挙を戦い抜かれた各陣営の皆様、お疲れ様でした。そして当選された浅野市長、田島新市長、おめでとうございます。


【図表1】2025年各務原市長選挙開票結果

(出典)https://www.city.kakamigahara.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/008/064/r704272250.pdf より引用。


【図表2】各務原市長選挙における投票率推移

(出典)https://www.city.kakamigahara.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/008/020/6-19-2.pdf を参照して筆者作成。


 各務原市長選挙の投票率は34.95%であり、前回2021年選挙(同35.27%)より0.32ptの微減であった。杉山元則氏との得票差は3,703票であり、浅野健司氏にとって最も追い詰められた選挙となった。


 各候補の得票数(得票率)は、浅野候補22,171票(54.56%)、杉山候補18,468票(45.44%)であった(【図表1】を参照)。また、2021年選挙は33,426票(同80.63%)、2017年選挙は30,860票(同71.42%)、2013年選挙は30,106票(同57.11%)であった。


 このように前回選挙まで浅野候補は得票数、得票率とも毎回上昇していたことが分かる。一方で、今回の選挙では、初めて30,000票を割り込み、かつ得票率を下げた。では、この要因には何があるのだろうか。以下で考察したいと思う。


 その要因を大きく4つ指摘したい。①PFAS問題の公表遅れ、②市役所喫煙問題、③多選による「飽き」。加えて、④杉山候補の根強い人気(特に高齢者層)があったことも要因でしょう。


 ①は、水道水の水源から目標値を超えるPFASが検出されたにも関わらず、認識してから2年半、公表が遅れた問題。先の市議会議員選挙では、PFAS対策を政策の柱に位置付けた小川麻美氏が当選するなど、その問題が争点化した。


 加えて、浅野候補の出陣式では、挨拶の中で武藤容治大臣、古田肇前知事、渡辺猛之参議院議員からもPFASの水問題について触れられていた。このPFAS問題自体は、各務原市だけでなく、他自治体でも発生しており、都道府県、日本政府との連携が必要不可欠な分野である。また、浄水器のCMでも「PFAS対応」などを打ち出している製品が散見されるようになった。



 ②については、令和7年4月23日更新の市役所ホームページ「市長への提案」にて、「市長外の特定屋外喫煙場所以外での喫煙に関し第三者調査委員会を設置する」提案(令和6年7月2日受付)がなされている。


 昨今の喫煙者に対する風当たりの強さも相まって、この問題はある種、炎上した。選挙期間中には、「杉山元則は、タバコ吸いません」と杉山陣営がSNSで発信するなど、一つの攻撃材料と化していた。



 ③は、渡辺猛之参議院議員も挨拶で指摘されていたことであるが、4選ということもあり、少なくない「飽き」が出てきている。余談だが、平野喜八郎市政は6期(1973年-1997年)と長期政権であった。


 最後には、杉山候補の根強い人気があったことをあげることができよう。私の父方の祖母は杉山候補をかねてより推している。65歳以上の高齢者世代からの人気が高いように思う。


 また、新総合体育館建設反対や給食費の無償化を掲げた杉山候補。しかし、支持する世代に偏りがあり、現役世代ほど、浅野候補に投票したと推測している。これは「将来世代に無駄を残さない」ということをよく訴えていた杉山候補にとっては、支持者と訴えていることとの間に乖離があるように思う。


 何はともあれ、3,703票差の4選となった今回の各務原市長選挙は、浅野市政に対して厳しい評価が下されたということだろう。毎回30,000票超えの牙城は崩され、その影響力にも翳りが見えてきた。心機一転、浅野氏の大好きな言葉である「我以外皆師である」を忘れず、「対話」を重ね、もう一踏ん張り、各務原市の発展のために尽力していただきたいと思う。


 多選は、メリットもデメリットもある。長期間在職すればするほど、攻撃の道具ができる。問題も発生する。政治家の評価は「良い」ものよりも、「悪い」ものに目が行きがちであり、適正な評価も、その手法も模索が必要だ。浅野氏も、杉山氏も、それぞれの正義があり、「愛する各務原市をよりよいまちに」という点では両氏とも変わりない想いを持っているはずである。


【図表3】2025年彦根市長選挙の開票結果

(出典)https://www.city.hikone.lg.jp/material/files/group/79/kaihyou_2230.pdf より引用。


 さて、以下では845票差の彦根市長選挙を振り返りたいと思う。ただ、彦根市民では無いため、観察できる範囲が、広くは無いことに留意したい。今回の選挙は現職の和田候補と元衆議院議員の田島候補との戦いとなった。


 和田陣営には、国会からは衆議院議員の上野賢一郎氏(自民党)、市議会からは創風会(最大派閥・6名・地域政党彦根党・自民党系・親市長)、親政クラブ(4名・自民党系・親市長・公政会から分裂して成立)がついた。


 一方の田島陣営には、県議会から中沢啓子氏(民主党系・中心的人物・得票数1万票越え)、谷口のりたか氏(自民党系・元市議会議員・元公政会・反市長)、市議会からは公政会(4名・自民党系・反市長)、夢みらい(4名・民主党系・反市長)がついた。


【図表4】2022年参議院選挙彦根市

(出典)https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/sangiin/2022/25/ より引用。


 ここで興味深いデータを【図表4】に示したい。これは、2022年参議院選挙彦根市開票所における得票数と得票率を示したものである。ここから分かるように、現職の小鑓参議院議員よりも、彦根市においては、田島氏が約4,000票程度リードした。


 また、今回の市長選挙における得票数である19,514票と約3,000票の差であった。すなわち、彦根市において田島氏の盤石な支持基盤が形成されていたと予想される。投票率から鑑みれば、前回の参議院選挙と同等程度の支持がなされたと見える。


 今回の彦根市長選挙の投票率は43.24%であり、前回の38.64%から4.6pt増加した。これは、ひこにゃん効果か?それとも石丸効果か?実際のところは分からないが、小さく無い影響を与えたことが伺えよう。


 今回の彦根市長選挙では、石丸伸ニ氏が選挙期間中、4日間(半分以上)、彦根市内で選挙応援に駆けつけた。和田氏は先の東京都知事選挙において石丸氏と共闘している。今回の選挙ではインターネット配信にも出演していた。


 ある有権者の方は「今回の彦根市長選挙を冷静に

振り返った場合、4年前の選挙では大久保さん、獅山さんそして和田さんの三つ巴でした当然に票は割れます。大久保さんは、彦根市役所の建て替えで建設費が高騰した結果その責任を取った形、獅山さんは高齢ゆえ市民が避けた形でしよう。そうなれば、消去法で和田さんが選ばれたと思います。今回田島さんは、アナログ方式の選挙戦、対して和田さんはネットを駆使したデジタル戦ともいわれましたが結果アナログ式が勝ったということです。田島さんは平田町にもよく来られこ自身が「よろしくお願いします。」と訴えてこられました。和田さんの場合、ほとんど来られられることは無く、来られたと思うと「和田です。」と突然のマイクでひとことのみでした。彦根では、田島さんの知名度はやはり高く投票率が上がったのも田島さんが出馬したからでしよう。戦う相手を甘く見たのでしょう。それと女性票がかなり田島さんに行ったのでは?ちまたでは、相性が合わないと言う方が多く居られました。それと、元彦根市長の大久保さんとも田島さんは今も好意にされています。なお、田島さんの今後の市政を見ていきたいと思います。」と分析されている。


 以下に石丸氏と彦根市長選挙に関連した記事を掲載します。ご覧ください。



 個人的には「石丸現象」や「石丸旋風」なるものには懐疑的な立場であることを述べておきます。「政治屋の一掃」といいながら、彼自身が政治屋になっているのではないか。「分かりやすい『対立構造』」を作り出し、市民を扇動しているのではないか。これは、まさしくポピュリストの常套手段だろう。


 最後にご報告。かかみがはら若者選挙サポーター「めぐる」に入会しました。市内在学、在住の30歳以下で組織されている団体で、投票率向上などをはじめとした主権者意識向上のために活動しているそうです。以前の市議会で存在を知り、入会してみることにしました。まずは、「体験入会枠」で。さ、行動あるのみですよ。