東京カレッジ主催「グローバリゼーションの未来:歴史の視点から」という講演会にオンラインで参加。講演者は英国のジャーナリストでビル・エモット氏。『日はまた沈む』は日本のバブル崩壊を予測してベストセラーとなった。


 公演の内容で印象的だった点は、「グローバリゼーションの反対は脱グローバリゼーションではない。」「台湾は米中戦争の引き金となる。」「(質問への回答として)グローバリゼーションは悪しき社会規範を壊した。ゆえに、多様性が生まれ公平に繋がった。」というもの。さらに島津教授の言葉として「ローカルなものへの価値をグローバルの中で高めていく時代になった。」「脱グローバリゼーションは不可能で、昔に(SNSがないような時代)戻ることは考えられない。」と言う点が印象的だ。


 上記に関連させて以下言及する。2023年7月16日「イギリスの環太平洋パートナーシップ協定(以下:TPP)加入正式決定」と報道各社が速報で報じた。参加国のGDP合計は約11兆8,000億ドルから約15兆ドルに拡大し、人口は約5億8,000万人となる(NHK2023)。ここで話題になるのが台湾と中国であろう。両者は2021年9月にTPPへの加入申請を行っている。また、両者は2012年8月に、2010年に発効した台湾と中国の自由貿易協定である「海峡両岸経済協力枠組協定(以下:ECFA)」の協議項目である中台投資保護協定を締結している。これは、馬英九元総統時代に行った政策だ。


 まず、投資保護協定について説明しよう。これは締約国の国民が他の締約国に行う投資を保護するもので、対象は海外投資である。具体的な条文は少なく曖昧な点も多い。公正衡平待遇、内国民待遇、最恵国待遇、保護と保障、収用などの条項が一般的である。投資協定は、投資に関する投資家対国家の紛争を仲裁に付託することを認めるものが多い。利用理由は①スピード、②秘密にできる、③自由にできることにある。


 中台投資保護協定では、双方の当局が設けた協議の場を通じて解決したり、当事者同士で合意のうえで中台のいずれかの仲裁機関に依頼したりできるよう定めた。自身の安全については当局が駐在員などを逮捕した場合、24時間以内に家族に通知するルールも決めた。従来はこうした共通ルールがなく、特に台湾企業にとっては大きなリスクとなっていた(日経2010)。2020年6月で10年を迎えるECFA。2020年1月11日に再選を決めた蔡英文総統率いる、民進党政権が2016年に誕生して以来、中国とのECFA交渉が中断している中、ECFAがまもなく期限を迎える、終了する、などと台湾メディアが昨今報じるケースがあり、注目を集めている(JETRO2020)。ECFA終了が取り沙汰されたが2023年も継続されている。


 世界第2位の経済大国中国。そして、中国の影響を他よりも受けやすい台湾。熊本にTSMCが工場を建設するなど日本とも大きな関係がある。今後も政治的、経済的視点から情報をキャッチする必要がある。米中戦争という第三次世界大戦を回避する側面からも台湾は重要な鍵となる。そこに日本がどのような立場で、自己の意見を述べるか。何よりも、一つの主権国家としての意地を見せて欲しい。


https://www.essex.ac.uk


 最後に報告である。8/18-9/7の日程で、英国のUniversity of Essexにて研修に参加する。研究型国立大学であるエセックス大学で3週間過ごせるのは、そして政治を学ぶ場として最適と思われる英国で時を過ごせるのは言葉にできない喜びである。🇬🇧