JR西日本グループと大丸松坂屋百貨店はきのう10月8日付で大丸梅田店が入る大阪ステーションシティ・サウスゲートビルディングを開業以来初となる大規模リニューアルするというリリースを出しました。いろいろ迷った挙句、きょうのネタはこれです。

一気には書ききれませんので、まずは第1部(本稿)で建物および大丸梅田店の軌跡を中心に、次稿で未来を考察するという構成にいたします。



 建物の歴史。


増築前の「アクティ大阪」。

この姿が懐かしく思われる方も多いかと。



大阪ステーションシティ・サウスゲートビルの歴史を簡単に記します。

このビルはまだJRではなくて国鉄だった昭和58年(1983年)に4代目の大阪駅ビルとして「アクティ大阪」の愛称を引っ提げて開業しました。19階から26階には大阪ターミナルホテル(現:ホテルグランヴィア大阪)、17階には「総合クリニック」と名付けられたクリニックモール、15階には朝日放送(ABC)が公開スタジオ「ABCエキスタ」を設けていました。エキスタの愛称で親しまれたここの代表番組はやはり「わいわいサタデー」。毎週土曜2時から2時間の生放送で、「○○美人コンテスト」と銘打って、ほぼほぼ水着審査とかくし芸はマストだったように記憶しています。あと、深夜の生番組「ナイトinナイト」も実はここを使っていました。ただし23時過ぎという時間帯のため非公開でのオンエアでした。




大丸の母店にあたる心斎橋店。

梅田店と僅か3kmという距離にある。



このビルのキーテナントに選ばれたのが大丸。大丸は心斎橋筋にある大阪本店(現・心斎橋店)、四条高倉に京都店、そして元町・旧居留地に神戸店と京阪神にバランスよく店舗を配置していましたが、関西最大のターミナル・梅田には店舗を持っていなかったことで手を挙げたという説もあり、また、国鉄の東京駅八重洲口のビルに出店していたことから大阪駅も、となったとの説もあるのだそう。ただ同業他社としては、本店と3kmしか離れていない、商圏ダダ被りの場所によく出店したな、という目で見られていたのだそうです。結果、心斎橋との自社間競合を忌避して梅田店から外商機能を外したことで、同店の固定客誘致が遅れた遠因となります。



もうひとつ、この店の課題は縦に長い構造。縦とは高さでありまして、当時、百貨店を中心とする大型商業施設はおおよそ7階、8階建が多く、14階まである百貨店なんて全国のみならず世界的にも前例のない取組でした。そこまでお客様に入っていただけるのかという不安も大きかったのだそうです。



ビル上層階への誘導を図るべく取り組んだのがレストラン街の充実でした。14階には大丸レストラン街、16階には大阪ターミナルビルが運営するワールドレストラン街(現:イチロクグルメ)、19階には大阪ターミナルホテルによる「ホテルレストラン」、27階にはこちらも大阪ターミナルビルが運営する、眺望を売りにしたスカイレストラン(現・ホテルグランヴィア大阪の「グランヴィアフロア」)と4層まるごとレストラン街とします。加えて大丸店内は当時の百貨店の常識を排し、総花的なMDをやめて婦人雑貨や身廻品を強化、エイジもグッと下げてヤング〜ヤングアダルト向けブランドを多く誘致するなど新しい取組を採り入れます。もうひとつ、私がこども心に強く印象に残っているのがジグザグ動線の導入です。1フロアの面積で阪急・阪神両百貨店の後塵を拝する立場の大丸は、奥行きを広く見せる動線の工夫で乗り切ろうとしたのです。

これらの店舗計画を主導したのが当時の大阪新店舗計画室主任であった奥田務さん。奥田さんのチームが繰り出した若きアイデアは「梅田学派」と呼ばれ、のちの大丸、現在の大丸松坂屋百貨店の店舗運営に活かされているのです。奥田さん自身も平成9年(1997年)に大丸社長に、平成19年(2007年)には松坂屋との統合持株会社・J.フロントリテイリングの社長として辣腕を振るうことになります。



 起死回生の増床。



大丸梅田店の話に戻します。

平成23年には40000㎡というフルライン型百貨店にはやや手狭な店舗を増築し、6割増床の64000㎡まで拡げます。その際に13階にあった催物場を廃止、「ポケモンセンターオーサカ」「ユニクロ」「ABCクッキングスタジオ」などのテナントを導入したほか、10階から12階の増築部分には「東急ハンズ」(現・ハンズ)を誘致します。これまでラグジュアリーの入居はなかったのですが、今般の増床を機に〈グッチ〉〈プラダ〉〈ミュウミュウ〉〈ボッテガ・ヴェネタ〉などのラグジュアリーも導入しました。

その際に、長らく親しまれたアクティ大阪の愛称が外され、同年竣工した大阪駅北側の駅ビル・ノースゲートビルディングなどと合わせて「大阪ステーションシティ」のひとつ、「サウスゲートビルディング」としてリスタートすることになります。



好立地なのに頭打ちの理由。


元スカイレストランであった27階は、

ホテルグランヴィアの特別フロアに変貌している。



JR大阪駅前というロケーションを受けて、大阪ターミナルホテル→ホテルグランヴィア大阪は高稼働率を維持し、競争著しい大阪市内で勝ち組のホテルのひとつになりました。

一方で画期的なオペレーションを生み出した大丸梅田店、数字的には大きく苦戦します。その要因は近傍の阪急百貨店と阪神百貨店の存在です。阪急は大丸進出の前年に単年度で100億円の巨費を投じ、やはりヤング〜ヤングアダルト世代に向けたフロアを新設するなど大丸進出への対策を打ったほか、世界のモード・ラグジュアリーを集積したゾーン構築で強みをさらに磨いて勝負に出ました。阪急・大丸とは大きな道で隔たれたことで一時は負けるとさえみられた阪神は地下の食品を強化することで集客を強化する策に打って出ました。「ファッションの阪急」「食料品の阪神」が確立されゆくなかで、百貨店における2代コンテンツが他社他店に取られていては頭打ちになるのはやむを得ません。関係者によると長らく赤字体質から抜け出せず、阪急・阪神両百貨店に水を開けられた状態がつづきました。



近年、JFRグループ全体でポップカルチャー路線に力を入れていて、大丸梅田店もご多分に漏れず〈ポケモンセンター〉をはじめとして〈ONE PIECE麦わらストア〉〈ニンテンドーオオサカ〉(以上13階)、さらに5階にも〈クレヨンしんちゃんシネマパレードツアー〉〈ゴジラ・ストアUmeda〉〈仮面ライダーストアOSAKA〉などが出店し、開店早々からインバウンド客を多く集めています。

しかしながら前期の業績は総額ベースで550億円とコロナ前にあたる20年2月期決算の643億円には程遠く、今期も発表予算からはやや上振れして推移しているものの600億円に届くか届かないかのレベル(今期中間決算時点での通期目標は590億円)となっていて、店舗面積やロケーションからするとたいへん厳しい数字であります。



 発表されたリニューアル内容とは?




そこで噴出したのがこのサウスゲートビルディングの大規模リニューアル。

その柱になるのが、10階から15階までの6フロアをノースゲートビルの「ルクア」「ルクアイーレ」と同じオペレーターであるJR西日本SC開発が手掛けたSCとして展開するということ。令和7年(2025年)秋から4年かけておこなわれるリニューアルの過程で大丸梅田店は11階から15階の5フロアの床をJRに返上することになり(※15階はABCエキスタ閉館後に大丸がミュージアム・イベントホールとして利用している)、売場面積で4割縮小するという計画です。

リリース資料を読み込んでも売上の話は出て来ませんが、数字が良ければ縮小はまずあり得ないので、そこが大きな要因になっていることは確か。加えてロケーションに対しての集客力が不足していると看做された可能性もあるでしょう。具体的にどういう施設構成が考えられるのか、また、どういうビジョンが相応しいのか、考察をしてみたいと思います。


↓↓後編も合わせてどうぞ↓↓



▶︎次回の記事は本稿の後編として、あす10/10(木)に公開します。
なお、奈良県・飛鳥の旅の続編は12日(金)に公開します。しばらくお待ちください。



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