ほんものの猫を駅長にした「たま駅長」で一世を風靡した和歌山電鐵貴志川線、通称「貴志川線」に乗って、西国・南海道随一のパワースポットめぐりに行ってきました。
まず本編「旅の栞編」では旅行記を、次稿「活性化編」では沿線活性化施策の良い部分に加えて私なりに見た課題を記してまいります。
本編ではなんと現地写真57枚を使った、当ブログ始まって以来、最多の現地画像を織り込み、貴志川線の魅力に加えて和歌山の凄まじきパワーをお届けしたいと思います。
貴志川線の旅のはじまり。
旅のはじまりは和歌山駅から。
和歌山駅はJRの阪和線・紀勢本線(きのくに線)・和歌山線が集まるターミナル駅。そこの9番線に今回乗る貴志川線のホームがあります。
貴志川線の路線図。和歌山駅から紀の川市に入り貴志駅までを結ぶ全長14.3kmの路線です。
たま電車ミュージアム号。
止まっているのは令和2年(2020年)に運行開始した「たま電車ミュージアム号」!!
ヘッドライトの上には可愛らしい「TAMA」のオブジェが!!!!!
期待感ハンパない!!!!!
見てください、このゴージャスさ!!!
デザイナーにはJR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」を手がけた水戸岡鋭治さん。
木目のところはちゃんと本物の木を用いています。これ、普通運賃だけで乗れるんですよ!!!
貫通扉はカーテンという拘りよう!
中にはキッズスペースとガチャも設けられています。
伊太祈曽駅で「チャギントン電車」との離合。
和歌山電鐵の親会社・岡山電気軌道で人気の「おかでんチャギントン電車」の貴志川線バージョンです!
伊太祁曽神社。
駅名は地名と同じく「伊太祈曽」と書いて「いだきそ」。
近傍の神社の名前は「伊太祁曽」と書いて「いたきそ」です。
西国・南海道随一のパワースポット………「西国三社参り」のスタートです!!
駅から南へ住宅街を歩いて2分ほどで伊太祁曽神社の大鳥居が見えてきます。
「紀伊国一之宮」の表記が誇らしいですね。
なお、紀伊国に「一之宮」は2社あって、もうひとつがのちほどご紹介する「日前宮」です。
進路を西へ。本殿は東向きに鎮座しています。
りっぱな太鼓橋を渡ると本殿は目の前。
本殿前。
御祭神は「五十猛命(イタケルノミコト)」。
古事記に記されている大屋毘古神(オホヤビコノカミ)と同一神とされ、彼が大国主命(オホクニヌシノミコト)の命を救ったことから「いのち神」として災難除けや病気平癒にご神徳があるとされます。また、日本中に植林したことから「木の国→紀伊国」(きのくに)の発祥ともいわれていて、林業関係者からも篤く信仰されているとのこと。
先に記した、大国主の命を救ったとされる「木俣くぐり」の実体験ができます。
まっすぐに伸びる杉の木が素敵ですね!!
御朱印。
「木国一之宮」の印に「紀伊国」の発祥たる矜持を感じます。
四季の郷公園FOOD HUNTER PARK。
つぎは伊太祈曽駅から徒歩20分ほどで「四季の郷公園」へ。
阪和道の和歌山南ICからも近く、車でアクセスしやすいロケーションです。
公園自体は25.5haもあり、その規模はなんとあの広い「バンテリンドーム ナゴヤ」の5個分に相当します。
その中でもA〜Eのエリア、"FOOD HUNTER PARK"の愛称が付けられているエリアをご紹介していきます。
まずこちらは「水の市場」と呼ばれている建物です。地元産のグローサリーを中心に地場野菜やくだものなども展開されます。
日差しも入り明るい店内。
和歌山県は西日本一の桃の生産量を誇ります。梅雨時期の桃はジューシーで甘さは控えめなんだとか。
和歌山県産の柑橘を用いたポン酢や、日本醤油発祥の地でつくられた醤油も揃っています。
和歌山産のみかんジュースや近くのブーランジェリーから届いたパンやコンフィも販売。
和歌山でも紀南地域の熊野ポークのソーセージもいいですねー!!
冷凍ケース内には海南市の山間に位置する〈黒沢牧場〉のアイスや、白浜のおみやげ「かげろう」のアイス版「アイスかげろう」なども。
そして右下には私も大好きな和歌山市民のソウルフード、〈玉林園〉のグリーンソフトもあります。
エコバッグや保冷バッグもあってブランディング化を志向されているようすも窺えました。
「火の食堂」にはテラスも設けられていて、天気の良い日は外で食べてもOKです!
ちなみに食べ物の持ち込みも自由ということで、火の食堂では飲み物だけ購入してテラスでいただきました!
日本酒「紀土」(きっど)で知られる〈平和酒造〉が日本酒のノウハウを活かしてつくったクラフトビールが販売されていました。
なんとサプライズで、連れて行って頂いた方に手料理のお弁当をご用意いただいていたので、大自然に抱かれながら美味しく頂戴しました!
建前じゃなくてほんまに美味しすぎました……販売してたら絶対お薦めするレベルですね👍
終点・貴志駅へ。
伊太祈曽駅に戻り貴志川線の旅に戻ります。
そしてやってきたのは……
貴志川線の終点・貴志駅。
そう、「たま駅長」のいる駅です!!
駅舎もネコの形をしてるんですね、可愛い!
「たま駅長」は亡くなってしまってまして、今では「にたま駅長」と「よんたま駅長」が輪番で駅長をしているのだそう。
私が行った時は「にたま」が非番で、「よんたま」が駅長室に寝ていました!
つづいて貴志駅にある「たまカフェ」へ。
先にご紹介した「ミュージアム電車」に意匠がそっくりなんですが、ここも水戸岡鋭治さんのデザイン。
猫好きにはたまらない!??
うめ星電車。
さあ、次は「うめ星電車」に乗車!!
和歌山名産の「紀州南高梅」(なんこううめ)と、JR九州のクルーズトレイン「ななつ星in九州」のパロディ版というのを掛け合わせたネーミング。
やはり水戸岡デザインであります。
梅干しを模した真紅の車体。
色も上品で素敵ですね。
これも電車の中とは思えないグレード感です。シェードが簾というのも和を思わせる雰囲気です。
貫通扉の部分にはミニテーブルつきのソファがありました。
「たま駅長」グッズのほか、和歌山県の名産品がずらっと展示されています。
竈山神社
竈山駅です。
ここから向かうのは「竈山神社」。
ここも駅から2分ほどで欄干に擬宝珠が付いた格調高い橋と鳥居が見えますが……ここはここから境内まで歩いて10分以上かかります。
竈山神社の正面です。
鳥居の基礎石が八角形なんですが、なにか意味があるのでしょうか。
厳かな本殿です。
ここは初代・神武天皇の兄にあたる「彦五瀬命(ひこいつせのみこと)」を祀っています。ちょうど拝殿の後方に陵墓もあります。
御朱印。
女性の方でしたが恐ろしいほどの達筆!
この地域名産のいちご柄の栞までつけてくださいます。
夕方の貴志川線。
やってきたのは「たま電車ミュージカル号」でした。
朝は外国人観光客が目立った車内ですが、午後ともなると地元の学生たちで賑わいます。やはり地域の大切な足なんですね。
日前宮(日前神宮・国懸神宮)。
和歌山駅からわずか2駅の距離にある「日前宮」駅で下車します。
日前宮駅から歩いて3分ほどで鳥居前に到着。
「日前神宮」(ひのくまじんぐう)と「国懸神宮」(くにかかすじんぐう)の二社一体で「日前宮」、もしくは当地の郡名から「名草宮」と呼称しています。
創建は神武天皇2年、その後、垂仁天皇16年に現在地に遷座したと伝わる、日本でもっとも歴史のある神社のひとつです。
なお、日前宮が移転する以前にはここに「伊太祁曽神社」があったとの記述もみられます。とかくここはかねてからのパワースポットってことになります!
和歌山駅近くとは思えない、歴史と社格を感じさせる静かな境内。
境内を進むと左が「日前神宮」、右が「国懸神宮」。どちらからお参りするのが良いとかはないようですので、気のむくままにご参拝を。あ、ただ片まいりにならないようにだけは気をつけられた方が良いと思います。
こちらが「日前神宮」。御神体は「日像鏡」。皇室の三種の神器である八咫鏡に先立ってつくられた2枚の鏡のうちのひとつであるとされています。
こちらが「国懸神宮」で御神体は「日矛鏡」。こちらも八咫鏡に先立ってつくられた2枚の鏡のうちのひとつです。
御朱印。
ここだけは紙で渡されます。
やさしく「お詣りは済まされましたか?」と聞いてくださったのが心地よかったです。
ま、御朱印はお詣りのしるしですから、私は絶対にお詣りのあとに御朱印はいただくようにしています。
締めくくり。
今回使ったのは「和歌山電鐵貴志川線1日乗車券」。おとな800円こども400円で販売されていて、和歌山駅から貴志駅まで片道410円ですからこの区間を往復するだけでも元が取れます。
そう、この金額であの水戸岡デザインの電車も乗れて、「たま駅長」にも会えて、霊験あらたかな西国三社の神秘的なパワーも授かれるのです!!!
このプランをご教示いただけて本当に感謝です!!
なお、乗車券購入の際に合わせて頂いた台紙はスタンプ用で、和歌山・伊太祈曽・貴志の3駅と電車内のスタンプを押印すると、ある絵ができあがるしくみです。
たま駅長たちと「うめ星電車」ができあがりました!
実は電車に乗って、貴志駅のたま駅長を観に行って、スタンプを押印するために外国人観光客が殺到していて、往路の電車は7割以上が外国人でした。
和歌山駅には利用者の目標数値と実数、達成率が記載されたボードが。未来に向けて貴志川線を残すための取組がみられます。
***
全国各所に存在するローカル線。その活性化に向けたケーススタディになりうるのでは……そういうふうに、今回、貴志川線に乗車して感じました。電車に乗ることを目的化するということは沿線活性化の第一歩だと思っているからです。
しかしながら「電車に乗ること」だけが目的となってしまうと、周辺地区への経済的波及が期待できず、加えて過度な混雑だけがクローズアップされてしまうと、鉄道利用者の観光化への理解が薄れてしまうという懸念も考えられます。
次稿においては、貴志川線活性化策の良い部分と、現状を見据えた沿線共創の道を考察してまいりたいと思います。
▶︎次回の記事は6/28(金)に公開します。
■□■GO-chin無料相談所■□■