省庁横断で出されたカスハラ撲滅ポスター。

接客業に従事するみなさんを守るしくみが重要。


最近「カスタマーハラスメント」、略してカスハラなんてことばが流布しています。このことばが生まれる前から客がスタッフに暴行を働いたり土下座させたりなどの問題が顕在化しています。接客業ってふだん接することのないみなさんとのかかわりを築ける意味でものすごく素敵な業種だと思うのですが、「接客業はやりたくない…」という風潮が拡がることに懸念を禁じ得ません。その風潮を生んだひとつに、本日のタイトルに掲げさせていただいた「申し訳ございません」の一語の使い方に問題発現の一端があると考えています。

と申すのも、わが国の接客において「申し訳ございません」ということばをあまりに多用しすぎて、ほんとうに申し訳なくないときにも慣用的に使用してしまっている……これはとても褒められる事象ではありません。

「申し訳ない」とは"申し開きするべくもない"、つまり言い訳すらできないほどの失態を犯しました、という意思の顕れであります。言い訳すらしようもないほどの状況って、ふだんの接客において決して多くはありません。むしろ、稀な事例です。なんでそんなものが「接客○大用語」とかで毎朝唱和させられている企業もあるわけで、とてもきびしい言い回しですが、はっきり申して馬鹿馬鹿しいにもほどがあります。

もちろん普段の接客において謝罪が不要だとは申しません。ただ、謝罪には以下のような段階があって、それぞれのシーンに適切なフレーズがあるのです。以下は弊社「55Labo」(ゴーゴーラボ)が店舗運営コンサルとして接客指導をするときに使っているものを書き起こしています。ぜひ謝罪フレーズのご参考になさってください。

①自分、自社のミスは認められないが当該客の心象を害したとみられる場合……「失礼(いた)しました」
②自分、自社のミスは認められないが当該客が金銭的、物質的あるいは時間的に損害を被っている場合…「ご迷惑をおかけ(いた)しております」
③自分、自社のミスで客に損害を与えた場合…「すみません(でした)」
④自分、自社のミスで当該客に損害を与え、かつ当該行動において当該客に一切の非が認められない場合…「申し訳ございません(でした)」

日本人であれば母国語でありますから、せめてこれくらいの使い分けくらいはやってもらいたいものです(笑)。

これはふだん利用する鉄道会社の遅延あるいは運休のアナウンスにおいても凄く気になるところがあります。
かつてJR東海は人身事故等で電車が止まったときに「ご迷惑をおかけしております」として謝罪はいっさいなかったそうです(これは先の謝罪フレーズ②に該当する事例のため正しい)。一方で京急では必ず「ご迷惑をおかけいたしておりますことお詫びいたします。申し訳ございませんとマニュアル化されているのです。たとえば大雨で電車が遅れました、人身事故で不通になりましたって、誰がどう考えても鉄道会社のせいではないのです。運転事故など完全な鉄道会社の過失による遅れや運休であれば謝罪フレーズ④に該当するため「申し訳ございません」でもわかるのですが、大雨や人身事故などの事例は鉄道会社にとっても被害者であるわけで、謝る必要なんてありません。
結局のところあらゆるサービス業がまったく必要としないところでペコペコ謝るから客の側も曲解しつけあがりクレーマー化する…ただそれだけのことと私は思います。電車なんて定時サービスをやることが凄いことで、遅れたから文句を言われる筋はない、それが嫌なら早く家を出ろ!というスタンスで全く問題ありません。

ただ、多くのお客様は本当に良い方ばかりだということも、スタッフサイドは肝に銘じておいてほしい。今、良い気分のお客様にはその気持ちに入り込んで一緒に喜んで差し上げ、今、疲れているお客様には癒しの時間にして差し上げること…それが出来るのはまさに接客の醍醐味です。変な人が多いなどと決めてかからず、優しく接すること。上長になる者は、現場が楽しく伸び伸びと接客を楽しめるように、つけあがるクレーマーに対して理詰めで押し通してスタッフを守ってあげること。この信頼関係こそ、接客業そのものを輝かせる要諦であります。

接客フレーズについてはまだまだ「不可解」な事項がありますので、別の機会に記事として起こしたいと考えております。

※次回の記事は6/10(月)に公開します。


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