オーバーツーリズムで悩む京都市は市バスの混雑を軽減するために「観光特急」の運行を含むダイヤ改正を今月1日に実施しました。今回はそのうちの「観光特急」に的を絞って考察したいと思います。


「観光特急 楽洛」の特徴。


あらたに導入された「観光特急」は2系統あって、ひとつは京都駅と五条坂(清水寺)をピストン運行するもの、もうひとつは京都駅から五条坂(清水寺)を経て祇園、平安神宮、銀閣寺へと至るルートとなっていて、土日祝のみ、ピーク時には両系統合わせて7〜8分間隔で運行されます。


(出典:毎日新聞)


特筆されるのは運賃で、1回乗車はおとな500円、こども250円と通常の市バス(おとな230円、こども120円)に較べて2倍以上の運賃。定期券や敬老乗車証などは使えない一方で、地下鉄・バス1日券や京都修学旅行1dayチケットといった観光目的のチケットは利用可能となります。


所要時間は五条坂(清水寺)まで10分(通常の市バス15分)、祇園まで13分(同21分)、銀閣寺前まで24分(同44分)となっていて、京都駅と各観光地を効率よく結ぶことに貢献しています。


制度的なお話として、通常の乗合バス旅客運賃は原則として認可申請が必要で、所管の運輸局に申請して3ヶ月ほどかかるものが、令和5年12月に道路運送法の施行規則が一部改正され、「観光施設に直行、急行する運送」について届出だけで変更できる(=軽微運賃としてあらたに設定)ことになりました。本件はその第一号案件としても非常に高く注目をされております。


ふたつの論点から考察する。

京都市交通局が出している「地下鉄・バスなび」。

京都市内のバス路線が複雑であることが分かる。


私が考える論点としてはふたつあります。

まずは観光客への利便性について。ここに関しては私も概ね評価をしております。私のようにこどもの頃から市バスに親しんできた人間からすればいざ知らず、京都に不慣れな観光客にとって市バスの複雑な路線図を理解して目的地にスムーズにアクセスするのは至難の業。そこで主要な観光系統を通常路線から切り離せば、どれに乗れば良いのか分かりやすくなると考えます。これが1点と、もう1点は所要時間の短縮にあります。主要観光施設の最寄りの停留所以外には止まらないため、京都駅から清水寺へも5分短縮、銀閣寺に至っては20分も早く着くことから、限られた時間で多くを巡りたい観光客のニーズにも合致します。このことからもバス利用者には好感を持たれているようです。


トップシーズンは積み残しなんでザラ。

(出典:LIVE JAPAN)


もうひとつの論点はオーバーツーリズム対策であります。本路線は観光客向け路線と市民向けの一般路線を棲み分けることで一般路線の混雑を緩和する目的で設定されましたが、そこについては不十分と見ます。ダイヤ改正2日目は1日中京都におりましたが、修学旅行は多い時期とはいえ京都観光においてはオフシーズンと言っても差し支えないでしょう。もちろん京都は年中いつでも魅力的な都市でありますけれども、一見の観光客にとっては桜や紅葉といった春秋、祇園祭や大文字五山送り火が催される夏、そして初詣で賑わうお正月などに魅力を感じるようでして、この時期がまさに京都観光のトップシーズンとなります。先の2日間の状況だけで今回の目的を達するものなのかを知るに足るようなデータが得られるはずもありません。


解決策の考察。

解決策を考える前に、インバウンド客を多く含む観光客が京都駅だけに集中しているという事実を押さえる必要があります。東海道新幹線に加えて関空特急「はるか」号なども発着する広域交通拠点であることに加えて、JR旅客6社が共同で外国人向けに発売する「JAPAN RAIL PASS」(ジャパンレールパス・7日間用50000円など)は期間中、新幹線も含むJRグループの全線が乗り放題となるチケットで、その割安感から多くのインバウンド客が使っているものとみられます。そのため大阪など関西各地からの移動についても、より観光地に近いところに駅を有する阪急京都線や京阪本線の利用客がそれほど伸びておらず、それらの駅からの主たる観光地へのバスは意外と空いているという実態が見受けられます。実際に日曜日の午前の段階で、今回新たに設定されている「楽洛 金閣寺・銀閣寺ライン」(102号系統:錦林車庫前、銀閣寺道、出町柳駅前、烏丸今出川、北野天満宮前、金閣寺道、大徳寺前を経て北大路BTへと至る。京阪線と地下鉄線から洛北の観光地にアクセスしやすい路線)はほぼ空気輸送状態。1日券をもっと値上げしても良いので、あらゆる交通期間に参加してもらって、鉄道も含めて観光客が利用しやすい体系に変えていくことも大切だと思います。


JR京都駅の在来線利用者数は36万人と前年17%増。

200億円を投じ新たな改札口整備などの実施が決定。


加えて、観光系統と一般系統を明確に棲み分けするためには観光系統の特急化と併せて、観光客が多い日にちと時間帯に限定して、一般系統が観光地至近の停留所(五条坂・博物館三十三間堂前など)を通過させる措置も有効でしょう。さらには「地下鉄・バス1日券」がここまで普及しているので、地下鉄利用を促すバス路線の再編によって、地下鉄駅と観光地をシャトルで結ぶという案もあります。たとえば清水寺に至る路線として五条通の地下鉄五条〜五条京阪前〜五条坂(清水寺)を繋ぐことによって京都駅前のバスのりばの混雑を分散させることができるでしょう。距離が短くなれば少ない台数で便数の確保も可能、現下の運転士不足にも対応しつつ、営業距離短縮で市街地の渋滞対策や公害対策にも有効打であります。


今回の「観光特急バス」は4月に新たに就任した松井孝治市長の市長選における公約のひとつで、早期に実現に漕ぎ着けた指導力にはおおいに感服するところです。松井市長は1日のダイヤ改正初日に京都駅前バスターミナルで「市民の生活を守りながら観光を楽しんでもらうことが大きな課題」とし、「今後もさまざまな対策を一丸となって進めていく」と挨拶されています。オーバーツーリズムはバスだけが課題を抱えているわけではありませんし、今後やってくる観光におけるトップシーズンに向けて、京都市には矢継ぎ早の対策が強く求められています。


※次回の記事は6/7(金)に公開します。


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