今回は大阪・ミナミと呼ばれる難波駅前に誕生した「なんば広場」を取り上げます。


目の前は南海なんば駅・大阪タカシマヤです。同建物は堺出身の建築家・久野節の設計。旧制堺中学校(現:三国丘高校)から東京帝大に進み、その後は鉄道省の技師を経て建築家に。ここ以外にも東武浅草駅(東京・台東区)や近鉄宇治山田駅(三重・伊勢市)などの鉄道駅舎や蒲郡クラシックホテル(愛知・蒲郡市)などの作品でも知られています。


実はここには以前、タクシーと一般車が乗り入れるロータリーと片側1車線の道路が通っていました。車も多く滞留気味である一方で歩行者も多い場所で、狭い歩道に溢れんばかりの人が行き交っていた日常。それを大きく変えたのが大阪市のなんば広場整備事業でした。




大阪市は整備前の平成28年(2016年)と令和3年(2021年)に社会実験を実施、広場開放による賑わい創出、および自動車交通への影響を見極めたうえで工事着工、やや遅れること昨年の11月23日に完成しました。



実は各地の都市部での広場整備後の大きな問題として、若者が多くタムロしてしまって治安の悪化や反社会的行為の横行、またはスケボーなどによるとみられる騒音やベンチやモニュメントなど公共物の損傷といった事象がみられています。なんば広場についても繁華街に面し、お世辞にも土地柄の良い場所とはとてもいえず、多分に漏れないだろうと考えておりましたが、私の予想は良いように外れ、現在のところは来街者の寛ぎの場として非常に健全なかたちで運用されています。


賑わいづくりの意味での課題として2点挙げさせていただきます。


まず、タカシマヤの入る南海ビル、なんばマルイが入る東宝南街ビル双方とも、広場に向けたアプローチに欠けていること。地下街への階段がそもそも広場設置を前提としておらず、広場と建物のトラフィックを寸断してしまっているのは残念なことです。



2点目は、西側へのトラフィックが弱くて広場の機能を限定的なものにとどめてしまっていること。御堂筋の横断歩道を付け替えるなどして「座裏」と呼ばれる飲食店群に直結できれば、広場の拠点性は一気に増すとみております。


「広場」のみの効果とは申しませんが、大阪タカシマヤの前期売上は前年対比120%の1591億円。広場に面した大型店であるなんばマルイ、エディオンなんば本店も増収基調にあるといいます。リニア中央新幹線開業に伴う駅前整備が進む名古屋駅前においてもモニュメント「飛翔」を撤去して駅前歩行者空間の大幅拡張が計画されています。広場周囲に賑わいを波及させていく取組に期待したいところです。


※次回の記事は4/22(月)に公開します。


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