先日、リニア中央新幹線の記事を上げたところ、たいへんな反響を頂きました。一部、乱暴な物言いのコメントは当ブログの品格維持の観点から公開を見合わせるなどの措置は取らせていただきましたが、非常に面白いお尋ねなどもありましたので、そういうところからも掻い摘んでQ&A形式でご紹介したいと思います。

↓↓過去記事はこちら↓↓

Q.航空機には保安検査を伴うため、リニアによる時短効果は絶大ではないのか?

このご質問が非常に多かったです。現状、耳に入った情報を含めて記せる範囲で申し述べてまいります。

実は世界的潮流として高速鉄道での保安検査は一般的と言われます。そのなかでリニア中央新幹線は大深度地下やトンネルなどを多く走行する性質上、どの程度になるかは不明ですが保安検査を実施するかどうかの検討も運営主体のJR東海によってなされているようです。実際、東海道新幹線車内によって刃物や灯油を持ち込んで乗客に危害を加えるような事件も発生していること、また、リニアの最大乗客数が東海道新幹線に較べて桁違いに少ないことからも、保安検査実施に現実味が増しているのです。


ANAでは保安検査の通過確認機の更新を進めている。

非接触・非対面でストレスなく通過できる。

(出典:ANA)


航空機に関しては、みなさん知ってか知らぬか、米軍によるいわゆる「横田空域」なるものが存在していて、この空域は米軍の管制下にあるため、羽田空港を離発着する旅客機はこの空域を避けて飛行します。大阪(伊丹)-東京(羽田)便においても、伊豆半島上空から一気に南旋回して房総半島の南端にあたる野島崎上空から半島西岸を北上、木更津市付近を左旋回して東京湾アクアライン上空から羽田空港に着陸するルートを取ります(羽田発便も同様)。横田空域の返還が実現すれば単純計算で羽田-伊丹のフライトは20分〜30分程度短縮する見通しであります。


横田空域が邪魔して西側から羽田には着陸できない。

都では早期返還を国に働きかけている。

(出典:東京都都市整備局)


横田空域返還の必要性は所要時間短縮にとどまりません。実は羽田空港はこれ以上に滑走路を増設しても増便はかなわず、羽田上空の混雑問題の解消、つまりは横田空域返還が不可欠。これに逆説を加えると、羽田-伊丹を含むドル箱路線の増便も可能になると考えられます。

空のトラフィック逼迫解消の目的だけではなく、ブログ内で政治的ネタに触れることはあまり好みませんけれども、首都上空の管制権が他国にあるという、まさに考えられない、ありえなき状態の是正、こんなものを先送りしてはなりません。国際情勢の悪化に伴って基地問題が先送りされがちですが、わが国にとって先ずもってやるべきは、この首都上空の管制権を取り戻すことであります。
こんなもの、いくら国防のためとて日本人として全く納得いかない!!

纏めますと、リニア中央新幹線は保安検査が加わった場合に所要時間が延びる可能性があること、加えて航空機はさらなる時短が期待できること。それならば航空機の時短に向けて解消すべき課題を論ずればより早いのではないかというのが私の考え方であります。


Q.東海道新幹線の「大阪駅」はJR東海にとってどのようなメリットがあるのか?

「大阪駅」関連のご質問も非常に多かったです。
これはズバリ、競争力の強化です。新大阪手前で分岐する私案で申せば、東京-新大阪と同等の所要時間で結ばれることになりますが、それにより大阪駅・梅田地区-都内の移動時間短縮、および新大阪駅での乗換がなくなることで、品川・東京駅周辺とはダイレクトで結ばれることになります。
あえてこれをリニア問題と並べて論じたのは、大阪にとって名古屋から140kmも新線をつくるよりも、東海道新幹線をわずか数キロ、大阪駅に延伸することによる時短効果、および乗換削減効果の方がより利用客目線であると考えているからです。
ただし、東海道新幹線を大阪駅に直結させることで大阪駅・梅田地区の不動産評価が高まり、同社における金城湯池たる名古屋駅のポテンシャルが相対的に大きく下がる懸念もあるため、同社としてやるべきかどうかと問われれば閉口せざるを得ません。既に同社グループは名古屋駅で地域一番店である百貨店とファッションビルを運営するほか、レストラン街・エキナカ施設・地下街などリテールの総売上(取扱高ベース)では既に2000億円を超え(※55Labo調べ)、さらにホテル・オフィスなどを加えた事業収益はグループで20%を占めるグループ事業(=関連事業)収益の屋台骨となっています。


JR東海グループは名古屋駅で商業・飲食施設を整備、

年間売上(取扱高ベース)推計2000億円を超える。

(私どもで持っている数字の合算値)



Q.東海道新幹線の車両運用が考慮されていない!

鉄道のプロでもないしマニア的な技術もお答えできず、人流だけを見て申し上げていることは当該記事の冒頭にて触れている通りです。
車両運用の問題だけでなく、大阪方の駅を分けることにもなるため、JR東海に相当柔軟な発想がないかぎり、実現するとは思っておりません。また、JR東海は沿線地域ではない大阪駅・梅田地区発展への社会的使命は負っておりませんので、やる必要がないのではとなれば、ひとことも反論はございません。
ただし、リニア中央新幹線によって航空機から完全にシェアを奪おうと試みるJR東海にとって、リニア開業前に東海道新幹線の「大阪駅」進出が実現せられればエポックとなりうることだけは間違いないでしょうね。


阪急グループは大阪梅田駅付近の再開発を計画中。

もし東海道新幹線をここに引き込めれば大化けの予感。



Q.伊丹空港アクセス改善はどう考えているのか。

阪急宝塚線の伊丹空港への新線建設に期待いたしたいです。実現の暁には阪急梅田-伊丹空港間は12分〜15分程度、乗換なしで結ばれることになります。
しかしながらこの新線は近畿運輸局が調査結果を公表していて、社会的な整備効果はイーブンの1を超えた1.4。しかし国が鉄道新線への補助金拠出基準の「40年内黒字化」は難しいとされていて、現状、建設できない状況です。伊丹空港にCIQを再度整備して国際線就航をはじめれば状況は変わると思いますが、関空偏重の関西財界・自治体の意思を変えれるとも思えず、難題です。


私鉄最大のターミナル・阪急大阪梅田駅。

ここから伊丹空港にアクセスできる日は来るのか?



Q.「新大阪駅」の整備はどのような経緯で?

これはセンシティブな問題を孕むため詳述できませんが、事業フローだけ少し噛み砕くと、基本的にわが国は土地の私有化が認められているなか、「国土の形成且つ合理的な利用に寄与」するために土地収用法という法律があります。先の「 」内は同法の1条を引用していますが、これは公益性にもとづくインフラ整備を前提にしたもので、その場合は土地の私有権に勝る、という法の建前を存分に活かして建設された最たるものが成田国際空港であるといわれます。
一方で、行政が「どかしたい」ものがあるときに、同法を逆手に取って、あえて当該地にインフラを誘致・整備して土地収用法適用のもとで私有地の明け渡しを求める事例が全国各地でみられます。公式文書には記されませんが、実は新大阪駅周辺もこれに当てはまるため、大阪市はあえて新幹線駅設置を推進したのではないか、というふうに考えております。


新大阪駅の旅客の大半が首都圏往来とのデータも。

一方で周辺街区には賑わいは波及していない。



Q.リニア中央新幹線は名古屋-新大阪間を先に着工すべきだ!

一般的に考察すれば、まったくありえない提案だと思います。
首都圏の旅客流動を無視して末端から建設するのは採算面で大きな不安を抱えます。
あるいは名阪間を早期に着工することで品川-新大阪間を同時開業させるというアイデアもありますが、これは整備新幹線事業ではなくJR東海の単独事業であるという性質上、事業費調達面で懸念が拭いされません。

静岡県知事辞職報道から各地での工事遅れが顕に。

果たして開業はいつになるのか?

(出典:東洋経済)


ただし、こういうパターンを考慮すればどうでしょうか?

中日ドラゴンズを愛してやまない大阪在住のファン。ホームのナゴヤドームに大好きな柳裕也投手、細川成也選手、そしてみんなの勇姿を目に焼き付けに行く。地元にある敵地・甲子園や京セラでは味わえない興奮、そして感動。
試合が長引き21時30分を過ぎ、細川選手の打席が近づく……けれどもドーム最寄駅22時1分発に乗らないと家に帰り着けないため、泣く泣く途中で帰らざるを得ず………。。

終電を考えてしまってここ数年名古屋でナイトゲームを観戦できない私には最高にありがたいリニア名阪間開業(笑)、ですけれどもまったく現実的ではなく、品川-名古屋開業以外に道はありません。

***

最後は冗談で締めましたが、他にもさまざまなご質問やご提案を頂いた中で、特にみなさんの関心事に近いお話を中心に纏めて記しました。
前の記事も含めて、これらは私見を披瀝したものであって、実現可能性という観点から対抗されてもお答えしづらいですので、あくまでひとつの考え方としてご理解賜りつつ、みなさんのお考えを深める機会として捉えてくだされば幸いです。

※次回の記事は4/19(金)に公開します。


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