いよいよ、あす3月16日に北陸新幹線が金沢〜敦賀間延伸となりますが、その前に金沢に駆け込みで行ってきました。
北陸特急専用ホームとして知られるJR大阪駅11番線。
3月22日をもって殆どの列車は「敦賀行き」となる。
現在(R6.3.15まで)は「特急サンダーバード」によって大阪駅から京都駅を経て福井・加賀温泉郷・金沢、そして先日の地震で痛ましい被害となった能登半島へといざなってくれていましたが、すべての特急は敦賀駅止まりとなり、北陸新幹線への乗り換えが発生します。
ただ、それも暫くの話で、北陸新幹線は敦賀駅から小浜市を通って地下トンネルで一気に京都駅、そして松井山手駅、新大阪駅へと至るルートが決定しており、環境アセス、そして着工を待っている段階、のはずですが………
「期待感」…小浜市、大阪府市。
(出典:小浜市新幹線・交通まちづくり課)
在来線でも支線クラスである小浜線しか乗り入れていないまちに新幹線がやってくることに強い期待を示している小浜市。北陸新幹線によって東京・大阪とダイレクトに繋がるほか、「京都駅まで25分」の地の利を活かして京都のベッドタウンとして人口増を目指す算段です。
富山・石川・福井から成る北陸三県も関西都市圏との歴史的な繋がりから敦賀〜新大阪延伸(便宜上、新大阪延伸と称する)の早期着工を求めている立場でありますが、それ以上に期待感を持っているのが関西の政財界…いうなれば大阪。北陸は大阪経済にとって後背地に等しく、北陸-大阪間において乗り換えが発生することによって北陸のマーケットを首都圏に取られる可能性が高いとして、新大阪延伸を強く推進しています。
「懸念意識」…京都府内の自治体。
(出典:南丹市美山観光まちづくり協会)
逆に反対の熱を帯びているのが、新大阪延伸区間の大半を通過する京都府内。南丹市では駅もできないのに建設残土の問題や地下水枯渇の懸念材料だけが押し付けられています。加えて、延伸区間の大半を占める京都府において想定される多額な費用負担も足枷となっています。京都駅に北陸新幹線の新駅が出来るため延伸の受益者とみられている京都市内でも反対の声が根強く、地域のオピニオンリーダーたる京都新聞の社説でも「『見切り発車』の着工は許されない」(R5.2.5)と強い書き出しで建設に反意を示しています。
「再考論議加速か?」…北陸三県
北陸3県の知事は早期の新大阪延伸を望んでいますが、いっこうに進まない小浜京都ルートを見限る動きも地域内からは出ています。それと同時に出ているのが、一旦はルート案から外れている「米原ルート」の再考論議です。現在の北陸本線のルートとほぼ同じく、敦賀から琵琶湖東端を経由、米原駅に至るルートであります。終端を米原駅とすることで京都・大阪に繋がる東海道新幹線に接続することのみならず、北陸〜名古屋都市圏の需要も拾うことになるため、営業面でのプラス効果が期待できます。
この名古屋・京都大阪の各都市圏の両睨みにもなりうる米原ルートに関しては、事業主体のJR西日本がかなり強く難色を示していると聞きます。東海道新幹線はJR東海(名古屋市)の所有で、JR西日本の本社所在地に近い新大阪・京都〜米原間はJR東海の収益となります。現在は大阪〜北陸圏の全区間においてJR西日本の収益となっているため、北陸観光における収益性の低下を懸念しているともいわれます。
また、東海道新幹線の米原駅から新大阪駅まで乗り入れる計画に関してはJR東海も首を傾げているようです。JR東海の経営理念は「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」としているなかで、「当社は東京〜名古屋〜大阪の高速大量輸送を担うことを使命としています」と経営理念の説明文にはっきり明記しています。そもそも、北陸新幹線(COSMOS)と東海道新幹線(COMTRAC)では運行システム自体が異なる中で必要額を投資し、北陸エリアと京都・大阪を繋ぐトラフィックの貢献に経営資源を注ぐことは、JR東海自身の経営理念をみずから破棄するようなものです。
関係各者の思惑まとめ。
それを踏まえれば、関係各者の考えうる思惑としては、次のようになるでしょう。
JR西日本の立場
■北陸〜京都・大阪は自社の独占テリトリーとして維持すべく、全区間を自社完結路線として建設を望んでいる。
■湖西ルート(比良山地地下を縦走するルート)では京都駅から、米原ルートでは米原駅から、それぞれJR東海の東海道新幹線に乗り入れる計画のため、容認できない立場。
■新大阪駅から同じくJR西日本の山陽新幹線と直通する構想も存在する。
■JR西日本の営業面を顧慮すると、在来線特急「サンダーバード」号で敦賀接続がベストとの見方も。
(仮に米原ルートで開業させたとしても「サンダーバード」は残す可能性も)
◾️現行の特急列車の利用客推移を見るに、北陸地方〜京都駅の旅客トラフィックは無視できず、建設にあたって京都駅にコネクトすることは必須条件かと推測される。(実際、小浜京都ルートはJR西日本から出されたルート案)
沿線自治体の立場
■北陸三県およびそれらの多くの基礎自治体は北陸新幹線の大阪都市圏までの早期開業を求めているうえ、インバウンド客の観光ルートとして定着しつつある「京都駅」への接続を強く望んでいる。
■大阪府市・経済界は現状ならば北陸〜大阪都市圏のトラフィックが脆弱になるとして新大阪駅までの早期開業を求める立場。
■小浜市においては北陸観光ルートの一員となること、また大阪都市圏との直結(とりわけ京都駅まで25分というロケーション)を期待する声が強い。
■地下トンネルで貫く計画である美山町を擁する京都府および南丹市にはトンネル建設、および残土による環境破壊等を懸念する声が強い。
■(沿線自治体ではないが)滋賀県は小浜京都ルートによって湖西線が「並行在来線」となりJR西日本の経営から切り離される懸念があり、三日月知事は「経営分離は認めない」と強く主張する一幕も。
■地下を縦断し京都駅(地下新駅)が設置される予定の京都市は豊富な地下水の枯渇の懸念、および京都駅直結のメリットが見出せないことから特に賛否を明らかにしていない。(R6.2.26松井市長就任記者会見より)
国の立場
■石川県・福井県〜首都圏のルート確立、および原発立地自治体である小浜市への新幹線駅設置に強い目的性を感じる。
◾️あえての日本海側ルートへの拘りには、その後の「山陰新幹線」構想の前進を企図したもの。
◾️北陸新幹線与党PT座長の西田昌司参院議員(京都府選挙区選出)は「もう一度国家が責任を持って国土をつくっていく時」(R1.6.14決起大会)として整理新幹線の全額国費での建設も視野に入れるべきとしている。その場合、京都府下を含む地方自治体における建設是非のハードルはかなり下がるとみられるが、これまで整備新幹線で一定の費用負担に応じてきた自治体からの反発も予想される。
名古屋には千載一遇な「米原ルート」。
久屋大通公園の景観は多くの外国人をも魅了する。
北陸〜名古屋〜伊勢の観光ルート確立は中部の夢。
小浜京都ルートが進まない状況下で、おそらく「北陸中京新幹線」構想をなぞった米原ルートの再燃が起こりうることは確実で、既に議論としては立ち上がりつつあるのが現状。工費・工期などを踏まえれば、これがもっともリアリティの高いプランであると思います。
加えて、中部運輸局などが提唱している、北陸から伊勢・熊野の観光地を繋ぎ、中心に名古屋を据える観光戦略「昇竜道プロジェクト」のトラフィック強化に資するものといえ、大名古屋経済圏(Greater Nagoya Initiative=GNI)の観光産業強化において千載一遇のチャンス到来といえます。米原ルートに関しては米原止まりにするのではなく、少なくとも名古屋駅乗り入れを目指した動きにしていくべきだと考えます。先に米原-新大阪間の北陸新幹線乗り入れの話題で触れた通り、JR東海は運行システムが異なる北陸新幹線と自社の東海道新幹線の乗り入れには消極的と伝えられますが、同社の都市圏輸送における中心駅たる名古屋駅への直結に関しては経営理念上、日本の大動脈と並ぶ「社会基盤としての使命」に繋がりうるものとして可能性は排除できないとの解釈であります。
(出典:「昇竜道」プロジェクト)
半世紀前の決定を丸呑みで良いのか?
そもそも「北陸新幹線」は日本海側に新幹線を通したい地元の思いに加えて、東海道新幹線がクローズド化した時のための高速鉄道による東阪二重系統の確立のために企図されたものです。しかしながら時の政治権力によって東北新幹線(東京都-青森市)・上越新幹線(東京都-新潟市)・成田新幹線(東京都-成田市・未成)が先行することとなり(昭和46年(1971年)1月18日運輸省告示第17号)、北陸新幹線構想は事実上後回しに。翌昭和47年(1972年)に基本計画に盛り込まれたものの事実上計画は凍結、その間にJR東海のリニア中央新幹線が立ち上がり、東阪二重系統化だけで申せばこれが担うことと考えるのが一般的になっています。東京-大阪両都市圏を結ぶ北陸新幹線建設の大義名分が既に失われているなかで、半世紀以上前の政治決定をただなぞるのではなくて、現下の国家観において何をなすべきかを考えていくべきではないでしょうか。
※おことわり
整理新幹線PTにおける正式名称は「小浜・京都ルート」「北陸・中京新幹線」であるが、当記事においては本文中の体裁を考慮して中黒を外して記載している。
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