神戸の連載の途中ですが、この課題解決策の私見をご披露申しあげる前に、ひとつ添えておきたいことがありますので、今回は独立した記事として展開したいと思います。


私は地域共創にあたってブランディングをもっとも重要視していることは、読者のみなさんには伝わっているかと思います。

一方でブランディング=「高いもの」と捉えられ、それこそ「高いもの」=良い、というような論説を繰り広げているように受け止められることがあります。


「高いもの」が良いという論点。

羽田未来総合研究所はジャパンラグジュアリーを

キーにしたブランドブティックを開業させた。


「高いもの」が良いという論点に立脚しますと、プライス=グレードの方程式に則ったときに、憧れ感の創出という意味できわめて重要な意味を成します。海外で日本酒の製法や味わいが評価されているのに何故か国内でインバウンド客に売れないのは、プライスが安すぎることに要因があると指摘されていて、たとえば高知市の蔵元・酔鯨酒造は醸造技術を引き上げたりパッケージに工夫を凝らしてプライスを引き上げるトライアルの最中であります。



また、「高いもの」は経済学的に価格弾力性が低いと言われていて、好不況や為替の高安などに左右されにくく、安定した収益を担保できるという利点も理解頂きたいところです。加えて生産者に適正な利益還元を果たすことができ、技術の伝承や進化に大きく貢献することができると考えます。


ブランド力を背景にした価格設定を。

さりとて、ただ「高いもの」が良いのか、と申せば、その答えは「否」です。ただ野放図的に高いプライスを付けさえすれば良いのではなく、しっかりとストーリーを訴え、そのクオリティ相当のプライスで提案すること。さらにはそこにターゲットを絞ってマーケティング政策を練ること。これはあくまで「仮説」であって、特定層を狙い撃ちしてそれ以外の層をソデにするという主旨の話ではありません。裾野は広ければ広いほうが新規顧客獲得には近道であることは言わずもがなです。


ただ、私に向けられた批判も意図はよく理解できるものでして、「高いもの」を礼賛して顧客層をフォーカスすることによって"こぼれる"人たちが現れる、その人たちはどうでも良いという思考なのかと。ひとことで言えば、アッパー志向に対するアンチテーゼであるわけです。


日本の港町のフロントランナー・神戸には

明治元年起業という日本初のテーラーが存在する。

(出典:柴田音吉洋服店)


私がブランディング政策におけるプライスへの思考としてふたつのキーを挙げるならば、まずひとつめ、「高いもの」をつくるというよりも、フェアなプライスにすることにあります。その地域が持つ、あるいは地域に眠る「本物」や「上質」に価値を見いだし、ストーリーを付けて世界に訴求すること。そうでなければ地域の「本物」や「上質」は伝承されなくなり、やがては消え失せてしまいます。

もうひとつは、私は常に「プライスにウィルを込めろ!」という表現を用いるのですが、しっかり良いもの、ブランド価値を持ったものを提案してるというプライスが肝要であるように思います。


ブランディングで全てを証明しきれない。

翻って、私への批判も批判で非常に鋭く、また見方を変えれば本当にカワイイものであります。ブランディングの中で"こぼれる"層に対する思いというのか、経済学的な全体最適を図る術はあるのではないかと探る姿勢は本当に素敵。加えて、ブランディングそのものがあらゆる学者をも…むろん私自身も証明しきれていないものがあることは、正直に告白すべきことでありましょう。


近年値上げが相次ぐマクドナルド。「マック=安い」という概念が崩れゆく中でも客数はしっかり維持してきている。マックを「過ごす場所」として捉える向きが定着しつつある証左だという論説も複数展開されています。日本マクドナルド創業者の藤田田(ふじた でん)さんが聞いたらビックリしそうなものですけど(念のため…平成16年(2004年)逝去)、セットで1000円足らずのファストフードチェーンにおいても一定のブランド価値創造ができているといわれるまでの取組もあるわけで、必ずしもグレードがブランド価値を創出すると言い切れないのも事実として認識する必要があります。


「高いもの」が良いのか?という本題への回答としては、ブランディングをベースにしたプライス政策の必要性は感じつつも、セカンドライン等を周到に準備しつつ、顧客層の裾野を拡げることがひとつと、あらゆるブランディングが証明しきれないなかで、グレードだけに振り回されないブランド政策の推進が求められていると考えております。


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