「夏の甲子園」と呼ばれる全国高等学校野球選手権大会。1915年(大正4年)、のちの阪急電鉄にあたる箕面有馬電気軌道が乗客誘致のために豊中グラウンドで開催した大会を第1回に数えて105回目となります。豊中で開催されたのは第3回までで、そののち、当時、阪急に較べて資金力に勝る阪神電気鉄道が大会の人気に目を付けて誘致したことで阪神の鳴尾球場→甲子園球場へと開催地が推移し現在に至ります。箕面有馬電気軌道は法人格の上で現在の阪急阪神ホールディングスとなっていて、高校野球は100年の時を経て先祖返りを果たしているというわけです。


https://www.hankyu-hanshin.co.jp/release/docs/fe717068efae78c3327181c79b6e819f8931f849.pdf

(阪急阪神ホールディングス プレスリリースより)


その阪急阪神ホールディングス傘下の阪神電鉄が先週、甲子園球場の「銀傘」と呼ばれるスタンド屋根を内野全体に覆う構想があることを発表しました。工費も工期も示さない単なる「構想」をわざわざリリースした不自然さは、主催者・会場の両サイドにおける夏の甲子園大会に対するアンチテーゼを鎮める目的があったとされますが、もしこれが事実ならば、夏大会の実施そのものが強い世論に押されて相当厳しいものになっている証左といえましょう。ただし観客席に屋根を付けたとて、一部観客の観戦環境が向上するのみで、グラウンドでプレーする選手たちには何ら効果は期待できないことは付加します。


年々深刻さを増す猛暑


これは西宮市の各年の気温の最高値を示したチャートですが、年々上昇傾向にあることが窺えます。他方、35度を超える猛暑日の数そのものも増加、その原因として温室効果ガスとヒートアイランド現象が挙げられることは近年の研究ではっきりしていて、この傾向は今後も加速度的に進行するものとみられています。


そんな中で、さきほど触れたように夏の甲子園大会の開催に疑問を提起する声が日増しに強まっています。かつての高校野球ファンによる「高校生は夏場の炎天下でプレーするのが逞しい」などという主張はもはや過去のものとなり、日中回避や秋などに日程変更、または京セラドーム大阪や札幌ドームといったドーム球場や甲子園球場のある大阪周辺の都市部より気候の良いエスコンフィールド北海道などへの会場変更などが代替策としておもに挙げられています。私もそれらの声には概ね賛成です。ノスタルジーや精神論だけで現状変更せずというのはあまりに無責任、かつ「『甲子園』を目指す生徒の思い…」云々と宣うのも本質から目を逸らしているだけ。現状の危機に対してどう変更できるのか、主催者たる「高野連」こと日本高等学校野球連盟と朝日新聞社は第三者を交えた論議をスタートすべき時に来ていることは明白であります。


「1150年の伝統」に学べ


祇園祭の縁起物として門口に飾る習慣のある「粽」。

昔は巡行中の山鉾からばら撒かれていたのだそう。


現状変更をしたところで伝統が損なわれるという思考もありますが、現実、まったくそんな事はありません。高校野球のスタートの約1000年前から続く京都の祇園祭。2019年には創始1150年を迎えた煌びやかな祭典は、実は幾度もの変更を繰り返しながら今に至っています。たとえば宵山期間に各会所前で販売される縁起物の「粽」は、かつては巡行の際に各山鉾からバラ撒いていたそう。奪い合う際に怪我人が発生することが危惧されたため、現在のような秩序だった販売に切り替えた歴史を持ちます。「長刀鉾」以外の鉾のお稚児様は人形稚児ですが、これももとは生稚児(いきちご)だったものを置き換えたもの。稚児舞の伝統継承の難しさに加えて鉾からの転落を防ぐために人形に変えたはじめての鉾は四条烏丸西入ルの「函谷鉾」(かんこほこ)で、もはや江戸後期・天保年間から150年以上の歴史を持つまでに至っています。神事だから元からやってきた形そのままに継承することだけを念頭に置くのではなく、時代に即した安心安全を第一義に据えて常に見直しを繰り返したからこそ、祇園祭は崇高で尊い祭典かつ神事として未来に繋いでいく素地が築かれたのだと私は考えています。


広がる「見直し」の声

5月上旬に甲子園で行われた阪神-中日2軍戦観戦。

屋根のある観客席とはいえ暑すぎた………


夏の炎天下におけるスポーツは甲子園の高校野球だけではありません。インターハイなどの多くの競技大会が真夏の日中におこなわれていますし、さすがに近年に入って見直しの動きは加速度的に進んでいるとはいえ、未だにさまざまなスポーツで日中の屋外練習なども実施されていると聞いています。選手のみならず一般の観客やブラスバンド演奏やチアリーディングなどに参加する学生の健康も案じられます。



石川県の馳浩知事は高校野球の石川県大会決勝について、「この暑い中、おかしい」と発言。多くの同調の声が寄せられたほか、青山学院大学駅伝部の原晋監督など多くの著名人もこれらに賛同しています。



母の「心の声」を傾聴せよ!!


先日、高校生と同年代の子を持つ親御さんにお話をお聞きしまして、甲子園大会を含む真夏のスポーツ大会開催に自身の子が出場することの是非について質問しました。


「それはもちろん怖い。これまでの暑さとは違う。いつ倒れてもおかしくない。」


端的に問題点を指摘した心の声。こういう声こそ、まさにみんなで耳をかっぽじって聞かなければなるまい。


繰り返します。ノスタルジーや精神論は絶対に捨て去るべき。さもなければ、それは人命軽視の誹りを免れることはないでしょう。殊に学生スポーツ、未来あるこどもたちを守るために、早急な検討、議論、そして改善策が待たれます。


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