三越伊勢丹ホールディングスの細谷社長が新宿周辺再開発についてコメントした記事を見つけましたので、今回はこの話題にお付き合いいただきます。
別に新しいトピックでもありません!
このネタ、新しいようで実は古くて、バブル期に小菅国安社長の頃、伊勢丹のパーキングや本社などを建て替えるなどして売場化するという構想がありました。当時、タカシマヤの新宿出店が決まった時期だったため、「正面突破作戦」と名付けられていたものの、秀和による伊勢丹株買い占め問題に端を発する経営体制の不安定化やバブル崩壊に伴う一時的な経営不振が重なり、計画は頓挫しています。
単独での再開発となった新宿ピカデリービル。
赤い袖看板の伊勢丹会館は再開発から除かれた。
08年に竣工した新宿ピカデリービル建設に際しても隣接する伊勢丹会館なども含めて再開発される見通しでありましたが、ここから最終的に伊勢丹が抜けたのも、伊勢丹サイドとしては本館パーキングやパークウエストなどとの一体的再開発を志向したためといわれています。
建替再開発の推定地
Google Mapsより
ひとつの可能性として考えられるのは、新宿通り側の本館と靖国通り側のメンズ館・パークシティ3の自社物件に加えてテアトルビル(低層部には伊勢丹パークシティ5が入居)その他1棟を含めた一体化再開発。実現すれば新宿通りから靖国通りまで、南北の明治通りに沿った巨大ビルが誕生することになり、新宿三丁目にとっても伊勢丹にとっても大きなインパクトになるでしょう。建物を隔てる道路については、単に道路を廃止にする以外に、銀座店で取られたように道路を廃止扱いにして私道として整備し上空に建物を建てる方法のほか、シンプルに都市再生制度を活用して道路上空を活用する手法も考えられます。
加えて、本館西側区画にあたる老朽化が指摘されている本館パーキング・事務棟・伊勢丹会館や旧新宿三越本館(MI新宿ビル)などの建替も視野に入ります。
伊勢丹新宿本店についてはJR新宿駅から徒歩10分程度、新宿通りを東に進むロケーションにあって、新宿駅から伊勢丹までを風格あるストリートに変えていくことが必要。既存の〈新宿高野〉や〈新宿中村屋〉、〈紀伊国屋書店〉といった沿道に位置する新宿の老舗に加えて、伊勢丹本館との親和性の高いショップを路面店展開することで、本館エリアへの集客力は飛躍的に高まるでしょう。国の規制緩和策も使いつつ、歩道の拡幅、ないし将来のトランジット化や沿道へのオープンカフェの配置などによって感度の高いまちなみへの転換が待たれます。少なくとも現在の新宿通りは雑多すぎて高感度なまちづくりからは程遠いものです。
南西部の売場化・エントランス設置
まとめ…本館は維持継承せよ!
これは大阪の大丸心斎橋店ですが、1933年(昭和8年)に竣工した御堂筋側の荘厳なデザインはおもに関西における洋館建築の父ともいえるウィリアム・メレル・ヴォーリズによるもの。しかしながらこの建物は外壁だけを保存の上で建替となっていて、所謂「腰巻きビル」と化しています。不動産価値や収益性という観点からみれば都市部の建物は「上へ上へと伸びるべき」という考え方は理解できなくもありませんが、果たして「ぶっ壊しました、けど表だけ残しました!」というのが文化の継承という観点からどうなのか、そこについては別記事を起こしますが、伊勢丹新宿本店については二代目からの歴史と繁栄を今に伝える建物として大切に維持をしていただきたい、その上で周辺に賑わいを波及するような再開発の絵姿を描き切れるか…渋谷などの再開発が進み、今後、相対的に新宿のプレゼンスが下がっていく懸念のあるなかで、まさに現経営陣の真価が問われるプロジェクトであることは間違いありません。
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